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EC開設のお知らせと、今言ったところでどうしようもないこと


KONTRACT オンラインストアを開設しました。

http://kontract.stores.jp


今日は2020年5月29日です。予定していたAW展示会の前日、4月8日に発令された緊急事態宣言が一昨日ようやく解除された東京で、この文章を書いています。
新型コロナウィルス禍を経て、今後コレクションやアパレルの世界も大きく変わっていきそうです。オンライン展示会やプレゼンテーションへの取り組みが、実際にその場へ行かず、直接人と会わなくても見られて売買できるファッションの形が、世界中で相次いで検討され始めています。

以下は、私の個人的な思いです。

以前こちらで書いたように、私は洋服とコーディネートが好きで、セレクトショップが好きで、百貨店が好きです。
今後世界的にDtoCへの流れが更に加速することが予測される現在、少なくともKONTRACTについて私は、ショップへの卸と対面販売に一定のこだわりを持っています。

ですので、オンラインでの受注や直販へは、今後どの程度注力するか全く未定です。今回の予約販売は、移動や対面での接客を控える必要がある現状で、できる限りの努力をしたいと思って始めることです。

私は、全ての服が店頭で売られるべきとは思いません。
また、HATRA(ハトラ)のヴァーチャルサンプルやChroma(クロマ)の仮想空間と現実を行き来するプレゼンテーションの試みなど、面白いと思うオンラインでのアプローチは多々あって、他にもそれぞれのブランドがこの状況下で新たに打ち出す展示やセールスの形を楽しむ気持ちもあります。3Dソフトを使ったサンプル制作やアバター試着など、日々革新しているAI分野の活用にも興味があります。

ただその上で、「私がこだわりたい事はこれだった」「時代遅れと言われてもそれを捨てることはできない」という、これは現状ではどうにもならない泣き言のようなものです。

服は、人が直接着用するものです。

充実したオンラインショップ、着用やディテールの写真、動画を駆使した商品説明、ビデオチャットでの接客など、購入時の利便性のためにアップデートが必要なことはもちろんありますが、洋服の販売の全てをオンラインや遠隔で賄うことは、身体感覚において限界があります。
そしてそれは販売だけでなく、生産段階でも同じことです。服は着てみなければ、素材は触ってみなければ、50%くらいのことしかわかりません。

オンラインでの販売においては、普遍的な素材、クラシックな形の服であればある程度想像もしやすく、着用写真や動画、素材見本などで十分にフォロー可能かもしれません。
けれども私がKONTRACTで提供したい一番の狙いは、着用者によって違いの生まれるパターンやシルエットの新しい形であり、お客様ご本人が鏡の前で初めて試着した時の、ご自身の新たな魅力の発見と充足感の体験です。
それはモデルの着用画像や動画などでいくら説明を尽くしても伝わりきらない、個人的なものです。

私も、ごくたまにですがオンラインで服を買うことがあります。
そしてその主観的な経験から、今のところネットでは「この値段なら失敗してもいいかな」と思った値段のものしか買えないです。
たとえば私自身の経済感覚では、シャツなら店頭で購入を検討する金額は3万円代(余程気に入れば後半まで)なのに対し、ネットなら6000円から1万円弱くらいまで。写真では実際の素材感を超えて見栄え良く演出されていることも多いので、自宅で試着した時にはネットショップで見たような着用イメージにはならず、素材にもデザインにも「思ったのと違う」「ちょっと残念」があり、あるいはメルカリなどのリセールで買ったブランドの服も、とにかく試着せずに買った服は「自分には似合わなかった」ことが多い。

「店舗で試着していたら買わなかったと思うけど、そんなに悪くはないし、このお値段だから、まあいいか」

こんな妥協のもとに、そのまま購入はするけれども、私自身の中で、「自分らしさを表現するための服」ではなく「人に会わない外出時にとりあえず着る服」カテゴリの引出しに入れてしまう。

それと比べると、店頭で触ってその場にある他の服たちと比較検討し、店員さんとあれこれ話しながら試着して、素材感や色も含めて自分のワードローブと合わせることを考えながら選んだ服は、年月を経てもコーディネートを変えながら、自身の一部として長く着用することになるものが多いです。

人によって、この感覚は違うのだと思います。

たとえば、身長や体型によって店頭では合うサイズやデザインを見つけづらく、ネットの方が似合う服に出会いやすい方も多くいらっしゃると思います。
でも私は自身のこういった感覚がある以上、なかなかこの価格の服をネットで買おう、売ろうという発想を持ちづらいのです。

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以上のような思いの中で、それでも自分で予約するなら欲しい情報は何か一生懸命考えながら、商品ページは現状で可能な限り写真のバリエーションを掲載し作成し、今後の発信を考えています。
お届けまでにお時間をいただき、手に取って試着できない状態での予約となりますので、価格は定価の20%-30%OFFです。(オフ率はアイテムによって違い、それぞれギリギリまで頑張った結果です(笑)

私がここで付けている「定価」とは、ショップの店頭で、その分の人の手を経た意味と価値をプラスし、納得して購入していただきたいと思う価格です。私の方でも、発売から時間が経ってもリセール市場で価値が暴落しない、トレンドに偏らず耐久性の高い製品作りを常に心がけます。(オンラインでも9月〜の実売期には定価になるので割高感があるかもしれませんが、その際には無料で返品やサイズ変更が可能であったり、何らかのオプションを付ける予定です。)

あとは、Twitterと連動して可能な限り、追ってそれぞれの服の特徴やポイント、大量生産の洋服と何がどう違うのか、つまり常々展示会や商談ではバイヤーさんにお伝えしているようなことを、その先にいるお客様一人一人へ向けるつもりで頑張って書いてみようと思います。
ご質問やご指摘、誤字脱字リンク間違い、サイズ違い、何かおかしなところなど、何かございましたら全て、下記のアドレスまでご連絡ください。
konc.studio@gmail.com

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