心の整理。

私は日々思考しているし、寝る前に考えることをやめて寝ようと思うのに考えることをやめられず結局不眠になることがある程度には思考癖がある。

なぜ夫は妻である私に何も話してくれなかったのか。

寝る前に少しでも考え始めると絶対に眠れなくなる疑問だ。


一昨年11月、夫に突然「会社で莫大な借金を作ってしまったので生活レベルを下げます」と通告され、私はそれまでのルーティンを強引に変えた。

通っていたテニススクールを突如辞めるしかなかった。
使っていたクレカの家族カードを封印。
楽しんでいたサブスクを解約、好きなアーティストのライブも行けなくなった。
子どもの物欲を満たす回数を極端に減らし、子どもが夫の財布から金を抜いた。
読み終えても気に入っていた本をダンボール10箱分売り、その値段に本気で泣いた。
姑にもらった黒真珠や装飾品と、婚約指輪を売り飛ばしたら夫に愕然とされ、罪悪感しか残らなかった。
習っていた三味線を辞めざるをえなかった。もう弾き方を忘れた。

ひとりの時に情けなくて笑っては泣き、後悔した。

夫はブランド家具をいくつも買い、そこそこ良い服を買って身につけていた。そんな夫を見て、私は夫の仕事は順調だと思っていたし、それまでの生活レベルは妥当だと思っていた。

そんな中、夫は生活を圧迫するほど借金が膨れあがっていることを一言も私に言わなかった。
どうしようもなくなってから告げられ、私も子どもたちもどうしようもなかった。
何故どうにかできる範囲の間に言ってくれなかったのか。
いまだにそのことを考えるが答えは出ない。

記憶を遡る。
今から約20年前の新婚当初、
「なんでも自分の親に話すな」と夫に言われたことがあった。
私は親と仲が悪いわけではなかったので、日常生活のいろんなことを時々話していた。それがダメだと言われ、驚いたことを覚えている。
親には話せないことも夫婦なら話していい、そういう意図だった。
実際に結婚して数年間は夫婦でよく話したし、こんな感じならいつまでも仲良くやっていけるという確信も持っていた。

けれど、私たちの会話はいつからか噛み合わなくなっていた。
私が思い描いていた仲良し夫婦のイメージからは徐々に乖離していった。
妻として見られていなかったのかもしれない。
どんなに私の言い分を無視されても、夫だと思って、家族だと思って大事にしてきたけれど、彼から見た私は、そうではなかったのだろう。
いや、彼の中の妻というイメージが、私が思う妻と違っていたように思う。

家事をする人、育児をする人、会社の面倒な仕事をやらせておけばいい人。

何度も「私は女中じゃない、お手伝いさんじゃない」と言ったけれど、一度も聞く耳持ってくれなかった。それどころか、陰で「鬼嫁」と呼ばれていた。いつも私を見下した物言いだったのに、私が鬼嫁?
だったら私も「稼いでくれる人」と思おう。何度か情を振り切ってそう決めた。

どんな人だったかな。と時々思い出すことはある。
いつ頃までだったか、彼はいつも私が欲しい言葉をくれた。
頼れる人で、安心感を与えてくれる人だった。

けれどいつ頃からか、大事な決め事はいつも事後報告されるようになった。
私に報告する前にいつも自分の親に報告。
結果、私が意見を述べても聞いてるふりだけで完全スルー。
そのたびに私の存在意義はぐらついた。
欲しい言葉ではなく、的外れな言葉ばかりが返ってくるようになった。
子どもがいなかったら私はとっくにメンタルがやられていたと思う。
私じゃなくてもいいのでは?
そう悩みながらの結婚生活になった。
大好きだった頃があるがゆえに、またあの頃に戻れるのではないかという期待とともに。

私は先日、彼と離婚した。

半年前から別居していたが、少しずつ頭の中を整理して、私はついに気付いてしまった。
とっくの昔に私は失恋していて、結婚しているという事実だけで繋がっているだけだったんだと。

離婚の話をし始めてから、引き止められることもなく淡々と話が進むことに、
結婚して20年という月日を考えるとかなり私は動揺していた。
別居中、「帰ってくるか?」ではなく「帰ってきてほしい」と言ってほしかった。
彼が将来について勝手に決めたことを、仕方なく諦めるように促したとき「これを諦めたら俺には何も残らない」と言われて絶望した。
私は?子どもたちは?家族ってなんだっけ?
別居してから子どもたちとは連絡を取り合っているのに、私にはなんの連絡もなかった。

本当に、私じゃなくてもよかったのだ。
私は必要ではない。
本当はもっと早く別れたかったんじゃない?

離婚届は私が出した。
「長いことお世話になりました」とメールしたら「了解」とだけ返ってきて、
終わったなと思った。

少しの執着もなく、あっけなく終わった。

別居し始めてから私はフルタイムで働き始めた。
今はやりたかった仕事に就けてる。
実は離婚して日が経つにつれ、スッと眠りにつけるようになってきた。
日にち薬なところも失恋とそっくりだ。
早く立ち直って好きなことに没頭しよう。
やりたいことを止める人はもういない。
ありがたいことに宝物みたいな子ども2人もいるし、楽しいことばかりの生活にしよう。
そう決めた私の心のはなし。