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大丸で夕食を

 先日、ワクチン接種の2回目に行ってきた。

私が予約したのは東京の大規模接種で、会場は大手町だった。

大手町の大規模接種といえば、綿密に計画された人流管理体制だと私は思っている。実際、案内係のおばちゃんも「大手町名物、ワクチンお散歩コースでーす!」と言っていたし。

来場者は何人かずつで色分けをされ、その色のグループごとで広い会場を移動し接種に向かうことになっている。一回目の時も思ったが、こういうシステムはいったいどんな人が考えているのだろうか。

自己判断が全く必要ないというか、頭からっぽにしても聞こえてくる指示に従っていれば、道を外れることはないように綿密にシステム化されている、というか。

成程、頭の良い人間の作ったシステムに身を任せ思考を停止して進むとは、こんなにも気楽で心地よいものなのか、とすら思った。

 そんなこんなで無事、臥床で接種を済ませ、東京の街に繰り出した。

ちなみに「臥床」というのは、前回の接種の時に覚えた言葉で、これを問診で唱えると、ベッドに寝た状態で注射してもらえるという魔法の呪文なので、注射が苦手でクラクラしがちな人は、この呪文を覚えておくといいと思う。

 本当はあまり好ましくないとは思うのだけど、こちとら田園地帯に暮らす田舎モノなので、せっかくこんな大都会に来たのだからと、大丸のデパ地下で高級弁当を買って帰ることにした。

接種会場から大丸までは徒歩で約20分。

少し距離があるように思うかもしれないが、我々田舎モノにとって徒歩20分など、日生劇場からシアタークリエくらいの感覚なので、なんてことはない。

 道中に紀伊国屋書店を見つけたので、帰りの電車内で読む本を買うことにした。

入ってすぐに聳え立つのは、ハウツー本や自己啓発本の山脈。友人が、「こういう本は一年に2冊が適量」と言っていたのを思い出した。激しく同意する。

さすがにビジネスマンやビジネスウーマンが闊歩する街の本屋さんなだけあって、私のような低生産性ウーマンが摂取したい本を見つけるのは至難の業だった。

それでも新書の品揃えだけは見事なもので、最近関心を持っている日本語論の本を一冊購入した。さて、高級弁当を買うという本日のアジェンダをリマインドしたので大丸にオンスケで向かう。

 危うくオフィス街に染まりそうになりながら、無事大丸デパ地下に辿りついた。

まずい、どれも宝石に見える。いろんな海鮮物が酢めしの間に挟まったミルフィーユ弁当など、本当に食べ物なのかと疑うほどに輝いていた。

肉厚な牛タンに後ろ髪を引かれながら、結局は本妻であるサーモンといくらの他人丼に落ち着いてしまった。初婚が血の繋がらない子連れととは、なかなかハードである。

 さて、任意の予防接種を受けるというだけのイベントに、無理やりお散歩クエストと報酬の高級弁当をねじ込んだのが功を奏したのか、副反応で高熱が出ることは無く、今も元気もりもりご飯パワー元年を迎えている。

名作ほど忌避しがちな我が家の体質ゆえに、未だに『ティファニーで朝食を』は観たことがない。が、おそらくこんな感じのご機嫌な映画に違いない。

胸躍ることに餓えている人は是非、大丸で夕食を。





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