ヨーロッパ旅行その2

ロンドンからパリに向かうユーロスターの中。ドーバー海峡(英仏海峡)を超えたあたりで、列車内のカフェに立ち寄った。朝食にはパンを5つとマフィンを2つ食べており、お腹はいっぱいだったため、そこではシャンパンを頼んだだけだった。

トンネルを抜けて視界が開けると、周りの景色が明らかに以前と変わっていたため、店主に聞いてみた。「もうここはフランスなのか」と。すると「そうだよ」と返ってきた。

しばらくすると彼から、アジアから来たのかと聞かれた。中国か韓国かと。
いや、日本だと答え、それで話が終わるかと思ったら終わらなかった。

彼曰く、アジア系の顔を区別するのは難しいと。
私からしても、ヨーロッパの人たちの顔を区別するのは難しい。

すると彼は言った。
文字を書く向きが、みんなバラバラなのは不思議だね。フランスやイギリスの人は左から右、自分は右から左、日本から来た君は上から下だろう。あまりにもバラバラだ。
店主の出身を聞くと、モロッコだった。ヨーロッパには近いが、歴としたアフリカの国である。文章を書く方向が違うのも頷けた。

そこで彼は聞いてきた。「何のために?」

私の頭の中にはクエスチョンマークが浮かんだ。文字を書く方向が違う理由?そんなことは気にしたことがない。
何事も、結果として起こる物事には原因が存在すると店主は言った。そして続けた。

私たちはなぜ生きてる?
とてつもなく大きなテーマに移った。

私たちは何のために生きているんだ?こうして旅をするのも何のためだい?

頭を回転させて考える。店主は続けた。
「君も僕もなんで生きているんだ?僕たちはみんな、お互いに依存しあって生きているけど。」

これはヒントか?
一旦、「今答えなきゃいけない?」と言った後、僕は答えを出した。
「幸せを共有するため?」

「そうかもしれないね。」店主は言った。
「誰にも分からないけど」

店主にも分からないのね。ほっと一息ついたところで、彼にも聞いてみた。
「あなたはどう思う?何で生きているの?」
すると店主は返してきた。
「何で生きているんだろうね。旅も、何でするんだろうね。誰にも分からないけど、考えると面白いだろ?」
明確な答えは得られなかった。しかし、しばらく話した後には、ただ楽しかったという感覚が残った。

こんなことは、その場限りの会話で、だからその後どうというわけではない。
だが、これが旅の面白い所だ。
イギリスはロンドン、St Pancras駅からフランスのパリ、北駅に向かう列車の中で、モロッコ出身のカフェ店主と日本人の客の自分が、多様性と生きる意味を英語で語り合う。世界の車窓から、をそのまま体験したように思われた。実に面白いひと時だった。

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