今年初めての本番

昨日は、杉並公会堂という都内のホールでコンサートの本番があった。
そこは、ステージの中でオーケストラ全体がコンパクトにまとまるような会場だった。客席も、遥か彼方まで続いているというイメージは受けず、オーケストラの音が一塊になって届きやすそうな会場だった。実際に弾いてみても、自分の音しか聞こえないわけではなく、隣の奏者や、管楽器の音も聞こえるため、とても弾きやすかった。楽屋は、オーケストラの全員が使うには小さすぎるが、舞台の裏の廊下に棚があり、荷物をそこで広げられるので、実質的に楽屋を使う必要はない。慣れれば使いやすいホールだった。
そんな中で弾いたメイン曲はシェヘラザード。
この曲を前回演奏したのは2016年の7月末であるから、実に5, 6年ぶり。その時は、その月の初めに一大事があったためか、中曲のロミジュリと合わせて、情緒の揺れ動きが激しかった練習期間だったという記憶がある (これについてはいつかどこかで記したい)。それから時間が経ち、自分のいる環境も変わったことで、この曲から受ける印象もかなり変わった。例えば一楽章の後半の波について、荒々しいものを目指すかどうかである。確かに荒々しくはなるのだけれども、今回は、滑らかさが保たれていなければならないように思われた。延々と続く連続性の中で強度が変わるのである。そこでのぎこちなさを無くすために、周りの奏者との呼吸が合っていることが大事なのだろう。
また、三楽章の主題は綺麗だけれども、それほど感傷的では無いのだろう。前回の演奏時は、主題を聞いて気持ちを持っていき、聞いて酔うことこそに、音楽をやっているという感覚があった。それゆえに、ビオラを弾きつつもバイオリンの主題にハマっていたのだろう。しかし今回は、冷静さを保った状態で、音の移り変わりを意識していった。その観点で好んだのは、バイオリンの主題ではなく、半音ずつ上がったり下がったりするビオラの美しさである。これこそが、気持ちを込めて酔う対象になりうるのだ。音楽をやっている感覚があった。せっかく右隣に大学オケの尊敬する先輩が座っていたのだから、練習番号Iからのdiv.をもっと綺麗に弾けていたらなあ!
この曲は、総じて木管楽器のソロが目立つために、弦楽器は裏方に回るという認識があった。しかし弾き終わってみると、異常に疲れていた。まだステージ上で、隣の先輩に「疲れてそう」と言われたために、思わず、「疲れましたよね?」と聞いてしまった。「うん、疲れた疲れた(笑)」と返ってきたが、まさかあの方はまだ体力が有り余っていたのだろうか。それにしても、隣で弾けて良かった。前のプルトには、このオーケストラに誘ってくれた、これまた大学オケの先輩と、何年もの付き合いになる大学オケの同期が座っていた。このオーケストラには初めて参加したために、知り合いはほとんどいなかった。にもかかわらず、シェヘラザードは知り合いに囲まれた席で弾けて、結果として疲労感や充実感と共に終えることができた。

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