見出し画像

[日記]2024年3月20日 晴れ時々雨

10年ぶりに姿を現した友人Aは、中学の頃の面影をほとんど残していなかった。金髪と金の眉毛と金縁メガネに、古着のような黒の格好いい服を着ていた。それが大層似合って様になっていた。大体古い友人と再会すると「変わってないねぇ」なんて言ってきゃっきゃっ言い合うのだけど、今回ばかりは「全然変わらないねぇ!」と一方的に言われただけで私はまじまじと彼女の姿を観察しているだけだった。お昼時、新宿御苑の近くのカフェで珍しいメンバーで集まる。中学の同級生のA、大学時代のインターンの同期のB、春から一緒に畑をするC。友人A、B、Cは同じ高校出身だ。出身校の名前を聞いてAを知っているか尋ねたら仲良かったとのことで、私が招集をかけ、今日の会となった。友人BもCもAと会うのは久々のことらしく、Aは三方から質問攻めにあっていた。根掘り葉掘り聞くわりに「休日は何してるの?」とか「推しはいる?」とか浅い質問が並んだ。結論から言うと彼女の内面は中学の頃とほとんど変わっていなかった。もちろん10年分歳を重ね大人になったし、彼女のいいところやこだわりはさらに洗練されていた。それらは魅力として今の彼女の形作るものの一つになっていた。昔から忖度せず鋭く物を言うタイプの子で、芯を持っていて、どこかニヒルなところがあった。彼女は自分を浮浪者と言っていたが、たしかにどこかのグループに深く属さず、広くうまく交友関係を築いていたように思う。私は中2の初めに彼女のいる学校に転校して、経緯は忘れたが彼女に懐いた。今まで会わなかったのが不思議なくらい、仲は良かった。彼女は終始楽しそうにしている。よく喋って、箸が全然進んでいない。胸がいっぱいになっているように見えた。会えて嬉しいと言う。最近は気持ちを言葉にすることを心掛けるようになったと言っていた。食事の後カフェに入ってさらに話し込む。彼女の最近の関心ごとが興味深かった。テーマを投げかけられたような気分になり、みんなでうんうんと考えていた。一朝一夕で結論が出るような話ではなかったので、頃合いを見て店を出た。私は、彼女の関心ごとについて私も学びたいから、本をおすすめしてほしいと彼女に言った。帰りに二人で紀伊國屋に寄る。私の関心分野の本の棚と、彼女の関心分野の本の棚は、近いところに設置されていた。話すと交わるところがある予感があった。彼女は私が勧めた本を、私は彼女が面白かったと言った本を買った。帰りの電車で、新しいLINEグループができていることに気がついた。Aは中学時代の友人に私と会ったことを伝えたらしい。その友人と、Aと私の3人のグループ。グループ名は「のみいこ」。Aはお酒は飲まないと言い張っていた。至極残念そうに、Aと飲みに行きたいけどあなた飲まないんだよね〜と言ってしまったのだけど、どうやら私の意向を聞き入れてくれたようだった。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?