![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141179903/rectangle_large_type_2_190e702709e616ea60f81f274230f1de.jpeg?width=800)
「ナースの卯月に視えるもの」を読んで【読書感想文】
私はお仕事小説が好きです。
でも、大きな病気や怪我の物語はちょっと苦手。
とくに人が亡くなるシーンがあると、しばらく気持ちを引きずってしまうから。
今回、拝読した秋谷りんこさんの「ナースの卯月に視えるもの」は、好きと苦手がどちらも詰まった作品……だと思っていた。
おそるおそる手にとってみて、拝読後に感じたのはじんわりとした温かさ。
切なさや悲しさを感じるシーンもあるけれど、優しい気持ちに包まれます。
以下、念のため、ネタバレ注意です。
この作品の魅力は、謎がらみの先が気になる展開や、看護師のリアルが伝わる描写、全6つの心温まるストーリーなどたくさんあります。
登場する人物たちの性格やセリフも好き。
とくに、透子さん。
登場シーンが多いわけではないけれど、興味深い人物だと思いました。(スピンオフでたら読みたいくらい!)
物語のなかで、一番印象に残ったのは、主人公である卯月の心境の変化です。
冒頭と終盤での大きな違いにぐっと心を惹かれました。
そして、この変化とそれまでの過程にこそ、物語のメインテーマが詰まっているのではないかと感じずにはいられません。
(注:勝手な妄想です)
あらすじにもあるように、卯月に視えるのは患者さんの「思い残し」です。
ですが、この物語は「患者さんの思い残しをなんとかしよう→解決→めでたし」というだけの作品ではありません。
(そのような場面も見どころの一つではあります!!!)
拝読後、数日経ってからふと思ったのは、卯月は「思い残し」の向こう側にある、その人の人生のワンシーンに触れていたのだろうなということ。
だから、あんなにも惹き込まれて、優しい読後感に包まれるのだとひとり納得。
私は看護師でもなければ、思い残しが視えるわけでもありません。
それでも、大切な人にそっと寄り添える人間になりたい。
そう思わせてくれた、素晴らしい作品でした。
秋谷りんこさんのnoteはこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?