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「ナースの卯月に視えるもの」を読んで【読書感想文】

私はお仕事小説が好きです。
でも、大きな病気や怪我の物語はちょっと苦手。

とくに人が亡くなるシーンがあると、しばらく気持ちを引きずってしまうから。

今回、拝読した秋谷りんこさんの「ナースの卯月に視えるもの」は、好きと苦手がどちらも詰まった作品……だと思っていた。

おそるおそる手にとってみて、拝読後に感じたのはじんわりとした温かさ。
切なさや悲しさを感じるシーンもあるけれど、優しい気持ちに包まれます。




以下、念のため、ネタバレ注意です。





この作品の魅力は、謎がらみの先が気になる展開や、看護師のリアルが伝わる描写、全6つの心温まるストーリーなどたくさんあります。

登場する人物たちの性格やセリフも好き。
とくに、透子さん。
登場シーンが多いわけではないけれど、興味深い人物だと思いました。(スピンオフでたら読みたいくらい!)

物語のなかで、一番印象に残ったのは、主人公である卯月の心境の変化です。
冒頭と終盤での大きな違いにぐっと心を惹かれました。
そして、この変化とそれまでの過程にこそ、物語のメインテーマが詰まっているのではないかと感じずにはいられません。
(注:勝手な妄想です)

あらすじにもあるように、卯月に視えるのは患者さんの「思い残し」です。

ですが、この物語は「患者さんの思い残しをなんとかしよう→解決→めでたし」というだけの作品ではありません。
(そのような場面も見どころの一つではあります!!!)

拝読後、数日経ってからふと思ったのは、卯月は「思い残し」の向こう側にある、その人の人生のワンシーンに触れていたのだろうなということ。

だから、あんなにも惹き込まれて、優しい読後感に包まれるのだとひとり納得。

私は看護師でもなければ、思い残しが視えるわけでもありません。
それでも、大切な人にそっと寄り添える人間になりたい。

そう思わせてくれた、素晴らしい作品でした。


秋谷りんこさんのnoteはこちら



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