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頭痛の種は放置しない

頭が痛いというのは、本当に辛いものです。「頭が割れるほど」、「目が開けられないほど」といったら、間違いなくインキャパ状態です。頭痛の原因は実に沢山ありますが、一般的に最も重要なのは高血圧性頭痛でしょう。
高血圧状態に長らく晒された血管は、破裂するだけでなく、詰まったり、攣縮したりすることがあり、それが脳血管や心臓を栄養する冠動脈に発生すると、命取りになります。頭痛がなくても高血圧であることは多々あるそうで、普段から医療機関や公共施設に設置されている自動血圧計で、体調に応じた自分の血圧を知っておくべきです。1回目の血圧は安静時になっていないものなので、息を整えてから両腕の血圧を測りましょう。普段血圧が低いエアマンでも、長時間のフライトを終えた後にビックリするほど高いことがあります。疲れや寝不足は、交感神経を刺激して血圧を上げるのです。
高血圧の治療薬は、抑うつ傾向をもたらすレゼルピンなど一部を除いて、多くが航空業務で承認されています。我慢せず、面倒がらず、しっかり治療すべきです。

頻繁な片頭痛も、航空身体検査では不適合状態となります。血管運動性の頭痛ですから命に関わることは稀でしょうが、「眼前がユラユラする」とか「ピカピカ閃光が見える」となると見張り業務もまともに出来ない筈です。当然、治療すべき頭痛です。治療薬も内服、点鼻、注射といろいろあり、病態や頻度によって治療薬を選択できるまでラインナップが充実してきているそうです。問題は、その頻度、程度、治療効果が安定しているかで、どうしても片頭痛を抑えられない場合には、三環系抗うつ剤もしばしば使われます。臨床的には薬価も低くて、効果があるならうってつけの薬だそうですが、抗うつ剤を飲んで乗務して良いという承認を得るのは容易でありません。

女性のエアマンが増えてきて、月経関連の頭痛も問題となってきました。女性労働者には生理休暇という休息が法律で認められており、前世紀には生理で休む女性が見られました。近年は鎮痛剤や低用量ピルの発達で、生理休暇を取る女性は少なくなりました。しかし航空従事者では痛みだけでなく、倦怠感や眠気など操縦業務を阻害する症状が抜けない方も多々おられます。男女の身体的特性を踏まえた上で、生理休暇は航空業界には残すべきです。

他にも群発性頭痛、筋緊張性頭痛などいろんなタイプの頭痛がありますが、痛みという症状は本人が自覚的に感じるもので、他覚的には動作や表情から想像されるだけです。こっそり鎮痛剤を頓服して、黙って飛んでいるエアマンは少なくない筈です。事業用操縦士が、そういう体調で旅客や貨物を輸送して構わないのか?最早それは、健康管理というより職業倫理の問題と云えるでしょう。

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