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地方公務員の育児休業取得は進むのか

総務省では、地方公務員の働き方改革、少子化対策として、地方自治体宛に育児休業の取組促進についての通知が出されています。
令和5年12月に閣議決定された「こども未来戦略」の目標としては、2025年までに1週間以上の取得率を85%、2030年までに2週間以上の取得率を85%とされています。

通知を受けて地方自治体では、人事担当部署から各部署に育児休業を取得していきましょう!と周知されることになると思いますが、果たして育児休業の取得がどこまで進むのか、自治体内部から見る所見について書き綴ります。

休暇取得に対する理解はある

総務省が2022年に行った調査によると、男性地方公務員の育児休業取得率は31.8%で、取得期間は1か月以下が約半数だったようです。
公務員の休暇制度に関しては、休暇制度の重要性を訴えていくためにも規範を示す立場にあるからか、一般の会社と比べて整っている方と感じます。
育児に関するものは、育児休業のほか、仕事復帰してからの就業時間を短くできる育児短時間勤務を利用する方も多いと感じます。

私が努めている自治体では、休暇制度を取得しても、時短勤務なのに仕事が終わらなく定時まで働く日もザラにあるなど、制度と実態が乖離している人もいるという話も聞きます。
他には、4月に出産予定だった男性職員が、4月1日付の定期的の人事異動の対象になり、新しい部署での仕事を覚えたいと、育児休業の取得予定を取り消したという話もありました。

育児休業によって、その部署の人員は一時的に不足することにはなるので、同僚が気持ちよく送り出しているかといえば、そうではないというのも実情と思います。
休もうと思っても、同僚にどう思われているかを考えると、取得を躊躇するかもしれません。
ただ、少なくとも管理職の方は、自治体が育児休業取得促進に取り組んでいることを知っており、取得に対しては一定の理解があると考えます。
このため、取得率の伸び悩みは、取得促進に対する意識だけが課題というわけではないと感じます。

人が抜ける意識が薄い

公務員は、これまでは離職率が低くかったため、人が離職する意識が低いと感じます。
公務員は定期的な人事異動があり、多くは4年前後で部署異動しますが、次の担当者に引き継ぐ意識が希薄なのか、去り際に「内部にはいるからいつでも聞いてね」という会話が少なくないと感じます。
自治体の業務は多岐にわたるものではありますが、毎年同じようなものをこなす、形が決まっている業務も多いです。
このような業務の場合は、簡易的なマニュアルのようなものをつくり、毎年ブラッシュアップされていけば、個別の引き継ぎもなしに誰でも対応できると感じます。

育児休業取得の壁の一つは業務量と属人的な履行と考えます。
人が流動的になっても業務が滞らないよう、理想は「明日自分がいなくなっても次の人が困らない」という環境をつくることだと考えます。
しかし、実情は、担当者じゃないとその業務のことかわからないということが少なくない状況だと思います。

業務によっては繁忙期があるなど、全ての業務がそうとは思いませんが、形が決まっているような業務から属人性の排除できれば、人を流動的に動かせ、育児休暇等による人員不足を補え、より理解が得られやすいのかもしれません。
例えば、私の職場では俗に言う「調査もの」は、従前は担当者が個人ごとに管理していたものを、エクセルで一覧表を整理・記録するだけで、担当者が不在でも問合せに対応できるようになりました。

これらのように、業務量過多の状態のほかに、従前の離職率が低い公務員の体質も取得率増加を目指す上での課題だと考えます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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