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世界の平和を守るため。

「ちょっと、パトロール。」

うちの主人は、よくこう言って、夜の近所をドライブする。

昔は、「ふーん。」くらいにしか思っていなかった。

運転が好きな人だから、コーヒーと助手席のわたしをお供に、パトロールっていうか、ただのドライブじゃんと思っていた。

このパトロールという名の夜のドライブが、わたしも好きだ。

だけど、4年前から猫と暮らし始めて、ちょっと考えが変わった。

猫は、なわばり意識が強くて、毎日の見回りを欠かさない。

3年前、400キロくらい離れた場所に引っ越した。

猫は移動が苦手なので、引っ越してからしばらくは、元気がなくぐったりしていた。

雨が続いたのも重なって、ほとんどを自分の家の中(うちには手作りの猫の家がある)で過ごしていた。

だけど、数時間に1回、重たそうに体をゆっくり起こした。

そう、見回りのためだ。

なんだか毛もボサボサしているし、ダルそうに歩く猫の後ろ姿に、

「無理してパトロールしなくていいんだよ!」

と声をかけたのだけど、彼には余程大事なものらしく(うちの猫はオス)、スタスタとゆっくり廊下に歩いていき、異常がないことを確認してから、自分の家に戻ってまた寝ていた。

しばらくして猫の調子もすっかり戻り、わたしたちも引越し先に慣れてきた頃、わたしは洗濯物をたたみながら、テレビをボーッと見つめていた。

すると、ある大御所男性タレントが、近所のパトロールをする話をしていたのだ。

それでやっと、主人は本当にパトロールしているのだと思った!

近所で何か異常が発生しいていないか、何か変化はないか、おもしろいことが起きていないか、確認するためパトロールしているのだった。

わたしは男兄弟ばかりなのだけど、パトロールするタイプの兄弟はいなかったので、おもしろい男女の違いを発見して嬉しかった。

なんだかそう思うと、夜のドライブがいっそう面白く思えた。

これはパトロールなのだ!という小さな使命感を、軽く持っちゃったりしている。




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