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マスクとK子

夕方、街で用事を済ませてから本屋に寄ると、視界の端に入った人物が気になって二度見した。K子? マスク越しでもあの天然パーマの髪型は見覚えがある。K子も私を見てすぐ気づき、笑顔で再会を喜んだ。

高校時代、漫画やアニメの趣味が合って、よく知識比べのクイズを出し合ったり、クラスが別になっても廊下でじゃれ合ったりしていた。高校3年になると私は受験勉強を始めていたが、K子は一向に勉強するそぶりもなく遊びほうけていて、今後どうするつもりなんだろうと思っていた。

積もる話もあって飲みに行きたかったが、近頃はお店でお酒を出してくれない。コンビニ買ったビールを片手に、土手の階段で近況を話し合った。

私は大学を卒業して社会人1年目だが、K子は大学1年生だった。高校卒業後、3年間マンガやゲームで遊び続け、改心して1年勉強して大学に入ったらしい。
「そろそろ現実を見ろ、って親がうるさくてさ」

呆れた表情を見せたら、「なんだよ」と小突いてきたため、なんだかおかしくなって笑いあった。

日が暮れて東の空が青暗くなってきた。河原に街灯が少ないので帰ることにした。「じゃあ私はこっちの路線だから」

私鉄の改札を抜けてエスカレーターを下る。まさか3年もプラプラしてたなんて、と思いつつお互い元気で再会できたことが嬉しかった。マスクの下でにやけが止まらない自分がいた。

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