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白鳥の湖を観てきました

小学校の頃同じクラスだった読書家の男の子。

読んだ本の作者名、本のタイトル、ページ数を記録する読書カードは彼がクラスでいちばん埋めていた。「ハカセ!」なんておどけて呼ぶひともいたけれど、わたしは彼の別の側面も知っていた。

同じ塾に通っていたわたしの友達の女の子(その子は別の小学校)と同じバレエ教室に通っていたのだ。
ふたりが出るからと教室の発表会に見に行った。題目は、くるみ割り人形。この日わたしは初めて男の子がバレエを踊るのを見た。また見たいなあと思って、早数十年。


そんな彼は今も尚、バレエを続けている。

昨年プチ同窓会で久しぶりに会って「またバレエ観に行きたいから誘ってね」と話したことを覚えていてくれて先月本当に誘ってくれた。

発表会ではなく、東京文化会館での本格的なバレエ。
公益社団法人日本バレエ協会公演『白鳥の湖』全幕。


普段の生活では味わえない高揚感と感動。
バレエど素人のわたしが、ど素人なりの感想を。

そもそも『白鳥の湖』ってどんなお話でしたっけ?
今回はわたしが観たストーリーで話を進めていきます。


第一幕 王子、成人のお祝い

ジークフリード王子の成人のお祝いが行われている。
王妃は王子に弓を与え、明日の舞踏会で花嫁を選ぶよう伝える。
帰り道、空に白鳥が飛んでいくのを見た王子は白鳥の後を追う。

華やかな衣装、そして生のオーケストラ。
なんて豪華!目の前の光景はなんて豪華!

次々とくるくる入れ替わり立ち替わりで踊っていくのが見ていて楽しい。王子が登場した瞬間にわああって拍手が広がって、ああこういうものなのか、と初めての体験にドキドキしながら一緒に拍手。主役の登場シーンと、難しい演技をしたとき?に拍手するものなんですね。そっか、確かにフィギュアスケートとかもそうかも。

初めて観る本格的なバレエだった訳だけれど道化役のひとの踊りに目が奪われる。このひと、すごい。ジャンプ力が高くて綺麗。アクロバティックなようでしっかり美しい。思わず背もたれから背中を離して前のめりになってしまった。池本祥真さんという東京バレエ団に所属の方らしい。完全に目が釘付け。このひと、次はいつ踊るんだろうかってワクワクしてしまった。一気に惹きつけられた。


第二幕 王子とオデットの出会い

森の中の湖に一羽の美しい白鳥が舞い降りる。
夜の間だけ湖畔でのみ人間の姿に戻れる王女・オデットだった。
王女に魔法をかけたのはフクロウに化けている悪魔・ロットバルト男爵。
オデットの魔法を解く方法は「今まで誰にも愛を誓ったことのない青年からの愛の誓い」だった。
王子の心にはオデットへの愛が芽生えふたりは愛を誓うが、ロットバルトの魔法で引き離され、夜明けとともに別れがやってくる。

ここで有名なチャイコフスキーの曲。
ハープの音色が美しい。

たくさんの白鳥たちに囲まれて踊るオデットと王子の優雅なワルツが素敵だ。ゆっくり動いて止まる、というのは人間の身体には難しいらしい。あ、ここもそうなのね、というタイミングで起きる拍手。
静と動。どちらもあるからどちらも映える。指の先から足の先まで美しい。しなやかで力強くて、同じ人間なんだよね、って思わず感嘆のため息。ほうっ。

白鳥たちが隊列(という言い方で合っているのか…?)を変えながら綺麗に円になったり揃ってステップを踏んだりするのを観ていると芸術だなあとうっとりしちゃう。ちゃんと着地音が聞こえるのが良い。

ロットバルト男爵の羽の動かし方もまるで本物の鳥のようだった。人間の腕の動きでこんな風に表現できる?って思って目をまあるくしながら凝視。


第三幕 王子、王子、王子!!!

宮廷の大広間で煌びやかな舞踏会が開催される。
花嫁候補の娘たちが踊るが、王子は愛せる女性はいないと王妃に告げる。
すると突然のファンファーレ。
招待されていない客人の登場に、オデットかと期待をする王子。
騎士に姿を変えたロットバルトが「娘のオディールです」と紹介する。
ロットバルトの魔法にかけられた王子はオディールに愛を誓ってしまう。
窓辺で涙するオデットの姿を見た王子は我に返るが…

やっちまったな王子。やってくれたな王子。

第一幕同様たくさんの踊りが見られるので楽しい第三幕。様々なテンポ、様々な衣装でのバレエを見て「こういうのもバレエなんだ」と新しい発見があって面白い。
白いふわふわの羽毛の扇で6名ほどの女性が踊るシーンがあって、序盤で一枚ふわっと羽が落ちたのが気になってたんだけど、道化のひとがおどけながらサラッと拾っていて、役のまま拾えるところが素敵だなあとまた見惚れてしまった。

先ほどまでオデットとして白の衣装で踊っていたひとが一人二役でオディールとして黒の衣装を身に纏って情熱的に踊る。対照的な存在を一人二役で演じるところがこの白鳥の湖のいちばん面白い部分なんじゃないかな。しっとり優雅に踊るオデットと、情熱的に激しく踊るオディール。どちらも素晴らしいんだけどね。

やっぱり出演者は圧倒的に女性が多い訳だけれど、だからこそ少数の男性たちはとても魅力的。
友達がこの広いステージでこの何人もの観客の前で踊っているのかと思うと急に胸が熱くなった。それってすごいことだ。この道を選んだからこそ見られる景色なんだろうなあとか、続けるってどれだけ大変だったんだろうとか、いろいろ考えてしまった。
良い友達を持ったものだ、ととっても嬉しい。

そしてね、王子だよ、王子。魔法にかけられたとはいえ、なんてことを。オデットにかけられた魔法の「今まで誰にも愛を誓ったことのない青年」という限定の仕方がまた面白い。こう限定されているから王子の行動が取り返しのつかないものになってしまう。女性側にこういうのを求めるものはよく見るけれどあまり男性側で「初めて」を強調する名作って少なくないですか?


第四幕 それぞれの運命

湖畔に来た王子は白鳥たちの中にオデットを見つけ出す。
オデットは王子の詫びを聞き、優しく許す。
しかしもう二度と人間の姿には戻れない。
王子はロットバルトに立ち向かうが、オデットは夜明けがくる前に人間の姿の内に湖に身を投げて死んでしまう。
オデットの死に直面した王子は悲しみのあまり自分もその後を追う。
ふたりの愛の力により魔力をなくしたロットバルトは空中で飛び散り、オデットと王子を亡くした悲しみに沈んだ白鳥たちも命を落としてしまう。

全員死んでしまうという究極のバッドエンド。
これ、公演によってはハッピーエンドもあるみたいですね。オデットの魔法が解けて王子と幸せに暮らしますよ、っていう。

白鳥の湖の、あの有名な音楽が何度も何度も公演内でアレンジを変えて使用されるんですけど、毎度違った印象を受けるので音楽って本当に偉大。あと生のオーケストラで生のバレエを見るのってとっても良い。最高。贅沢体験。


今まで体感したことのない感動だったなあ。

厳かな赤い幕の開き方も好きだった。幕が開いて煌びやかな世界が目の前に現れてオーケストラが響いて踊り出して、ぶるると鳥肌が立っちゃった。

終わって早々にステージで踊っていた友人からLINEが届いて笑っちゃったけど、落ち着いたらぜひ一緒にご飯にでも行きたいなあと思います。すごかった、ただただすごかったよ。誘ってくれて本当にありがとう。


帰宅後、一緒に見に行ったお母さんから「夢のような一日だった」ってLINEが届いてうっかり涙腺が緩んでしまいましたとさ。



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