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寝なかった夫、鬱生活14年。なンがー

たまたまX(旧Twitter)で、寝ないと本当にヤバいから寝て!というのが複数流れてきた日があった。
睡眠不足のせいで、ご家族が鬱になったとか、仕事仲間が早世されたとか。

自分の経験上感じる事なのだが・・・
昭和の教育を受けて令和を生きる4、50代は、モーレツに働くという高度成長期の残り香をふんだんに漂わせた時代に新人社会人を過ごしている。
そのせいか、人より抜きん出たいのなら、寝る間を惜しんで努力し、懸命に働くことこそ正義と思う部分がある。
実際、受験勉強でも四当五落なんて言葉があるように、寝る間を惜しむことが最大の努力であるという認識が、かつては日本中に充満していた空気だったように思うのだ。

しかし時代は変わり、認識は変化した。
睡眠負債という言葉を聞くようになって、徐々に世間での認識も変わり始めたんじゃないだろうか。
若い時は、寝ていなくとも翌日動けたりする。だから「私って寝なくても平気なタイプ」と勘違いすることもあるだろう。
しかしそれは、未来の自分の健康や命を削り取って前借りしている状態なのだ。

とにかく、ちゃんと寝ることは、トイレの後に水を流し手を洗うくらい当たり前に生きる上での決まり事であり、大人としてのマナーだと世間の前提条件にしてほしい。

寝ないで頑張るのは偉くない。トイレの後、手を洗わないのも偉くない。
ちゃんと寝て、適切に栄養を摂り、身の回りを清潔にして管理すること。歯を磨き風呂にも入ること。寝る事。
風呂に入らずベタベタの髪を額に貼り付けて、寝転がったシワのままのTシャツで仕事している、そこの制作系のお仕事のアナタ。家帰ってお風呂で身を整えて寝てくださいね。マナーですから。

そこまでいうのは、我が家に実体験からの苦しみがあるからだ。
私の夫は鬱を経ての双極性障害で、トータル14年(はっきりしないがおそらく初診の数年前からで、それ含むと16,7年)病と付き合ってアップダウンを繰り返している。

夫と私の人生の設計に、鬱で振り回される予定は入っていなかった。
というか誰しもそうだろう。
心の病はまじめな人がなりやすいと言うが、自分を実力以上に追い詰めてしまう厳しさには、真面目以外のなにか、そうでもしないと自分を許せないというような強迫観念もあるように思う。

私の夫は大らかで友達が多いように見える一方で、神経質な努力家で且つ、人生は厳しくて当然だというナゾの絶望感を抱えてもいる。
寝ないで仕事をし、寝ないで人の仕事のサポートもし、寝ないで部署のみんなの作業の下準備までし、食事も極端なビーガンのため偏っていた。
夫の仕事の評価は非常に高かった。それはそうだろう、三人分くらいは常に働いていたわけだから。だが、こうなると超人というより異常である。上司もそれを止めない時代だったのだ。

同じ会社で働いていた当時、私は夫のことを「とにかくいつも会社にいる人。すげーな」という目で見ていた。親切で働き者。
その後夫は転職したので仕事仲間ではなくなったが、やはり猛烈に働いていたようだった。
そしてなんやかや縁があって結婚に至り、子どもも授かり・・・
第二子がゼロ歳の時、ある日鬱でバタンと倒れ、起き上がれなくなった。
それから気が狂ったように同じことを呪文のように唱え、眠れず、カーテンを閉め切った部屋でぐるぐると歩き回ったり布団に倒れ込んだりする日を過ごすようになり、休職した。

鬱病というのが普通に聞く言葉になったのはその数年後だったので、夫は時代の先端を行ったわけだな。
言い換えると、全然世の認知も乏しく、理解もされていなかった。

この病は不眠とセットのため、起きている間はイライラするし、ひとたび眠れたら起きたくないものだから、カタとでも物音がして目が覚めてしまうと、文字通り狂ったように怒り散らす。
異常に繊細で過敏になっているので、何らかの理由でスイッチが入ると、突如家を飛び出したりもする。

こちらも育児と同時並行なので、いつまでも起きて見張っていられない。ついこちらが寝落ちした最中に、夫の脳内でグルグル思考が加速して何かしらの結論に達し、ヨシ、死んでやる!なんてスマホを置いて家を飛び出してしまい、子供を抱えて泣きながら夫の帰宅を待つという日を過ごしたこともある。

本人は見えない敵と戦っているような状態なので、周囲は理解できない。
急に落ち込んだり泣いたり死にたくなったりしている様子は、こちらからすると別の並行世界をひとりだけ生きているような状態である。何が起こっているのか全く見えないのだ。

病の当人が苦しいのは勿論だが、健康な家族はなんとも思っていないかと言えば、そんなわけはない。
こちらからすると脈絡なく突如槍や鉄砲が飛んでくるようなものである。怖くて仕方がない。
私はなぜ同じ病にならないんだろう、そうすれば薬を飲んで誰かに当たり散らして病気のせいだから、と許してもらえるのに。
そう考えたことも、一度や二度ではない。

本人と家族を長い期間苦しめる、そんな鬱は、睡眠不足と何らかの持続的ストレスで生成される。
どうよ。
気をつけないと、誰にでも起こりうるのよ。

大切な人、大事な家族をこんな目に合わせない為にも…
自分の人生無駄遣いしない為にも…
寝ろ。

寝ることはマナーだからな。
忘れんなよ!

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