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冬の訪れを告げる 『ヤッコソウ』

皆さんは、葉を持たない小さくて不思議な植物「ヤッコソウ」を見たことがありますか? 今回はそんな魅力的でかわいい植物をご紹介します。

ヤッコソウは葉緑素を持たない寄生植物で、冬の始まりである立冬の頃(11月中旬〜12月上旬)、ツブラジイやスダジイなど、シイの木の根元で見られます。高知県で観察出来るところがいくつかありますが、室戸の金剛頂寺が境内から歩いてすぐの場所に自生しているので観察しやすいです。(それでは金剛頂寺へ!)


金剛頂寺(四国お遍路/26番札所)

境内に入ってすぐ右に教育委員会のヤッコソウ案内板があります。そこから少し森に入ったところのシイの木の根もとにヤッコソウが自生しています。大きさは5センチに満たない小さな植物。踏み潰さないように気をつけて観察してくださいね。

とにかく小さい。そして沢山!

ヤッコソウは、始めは小さな白いドングリのような形ですが、成長して鱗片葉(りんぺんよう/退化した葉)を広げた姿が大名行列の奴(ヤッコ)に似ているのでヤッコソウと命名されたそうです。奴凧(ヤッコダコ)をイメージすると解りやすいかもしれませんね。(素敵なネーミング!誰が命名したのかな?)

お目でたいイメージもあって素敵な名前

ヤッコソウの真ん中には帽子をかぶったような花があり、これは雄しべで「雄花期」の状態になります。その帽子がやがて抜け落ち、雌しべが顔を出す「雌花期」の状態になります。(下の写真参照)

雄花には葯帯(やくたい)という花粉の詰まった帯(おび)があり、鱗片葉(りんぺんよう/退化した葉)の付け根の甘い蜜が昆虫を誘い、蜜を舐めようとした昆虫の体に雄花の花粉が付き、今度は帽子の取れた別の花の雌花に昆虫が触れることで受粉を成立させることになります。

ヤッコソウのユニークな形は、シイの木から栄養をもらうことで、自分で栄養を作るための葉を必要としない分、子孫を残すための花にエネルギーを集中でき、より昆虫たちに花粉を運んでもらいやすい形に進化してきたということですね。

「おしべ帽子」を付けたヤッコソウ/雄花期
「おしべ帽子」が取れて「めしべ」だけになったヤッコソウ/雌花期

ヤッコソウは、沖縄、九州、高知、徳島で見られ、徳島県海部町奥浦が自生の北限と言われている希少な植物。(国や県の文化財・天然記念物に指定)
幡多(高知県幡多群)の森で地元の方が発見し、明治44年に牧野富太郎博士が命名。(このネーミングセンスは、やはり牧野さんでした。)発見地・発見者・命名者すべてが高知という、高知にとてもゆかりのある植物なんですね。

皆さんも是非、この冬の訪れを告げる、不思議な妖精に会いに出かけてみてはいかがですか。森の中で、しゃがんで、静かに、地面のできるだけ近くで…

境内も綺麗です。お参りしてから観察させてもらいましょう。

最後に余談です…自然界に全くの寄生関係ってあるのでしょうか?と少し思いました。寄生植物(*1)で調べると下記の感じだということは分かりますが…

*1:寄生植物とは、他の植物に寄生し栄養分を吸収して生育する植物の総称。葉緑素を持ち光合成もする半寄生植物と、葉緑素を持たず全く光合成をしない、全寄生植物に分けられる。(ヤッコソウは栄養を完全に寄主に頼る全寄生植物。)

ウィキペディア(Wikipedia)

全く勝手な私のイメージですが、まだよく分かっていないだけで、共生関係的な側面もあるかもしれませんよね。(遺伝子的な交換がなされているという研究もあるそうです)同じ寄生植物でギンリョウソウとかも神秘的で面白いので、次の機会にご紹介させていただきます。それではまた…


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