果物を長く保存する方法など。古文書『廣益秘事大全』解読㉔
嘉永四年(1851)の古文書『廣益秘事大全』から、奇巧妙術類「生活の豆知識編」解読の第24回目です。
今回は果物を長く保存する方法など、果物大特集です。
そもそも、果物の定義が今とはかなり違っていて、瓜系はすべて果物、さらにナスも果物という扱いになっています。
フルーツと訳したい気持ちはやまやまですが、なんとなくポップな印象にはしたくない私たまむしのこだわりで、頑なに果物とさせていただきました。
昔の日本人の、シンプルで人間にも地球にもやさしい生き方の中に、現代でも取り入れることのできるものがあればと思い、そのヒントを提供できるよう、古文書を読み解いてご紹介します。
1.果物を長く保存する方法
梨・柚子・みかんなどは、
いずれも傷のない上々のものを選びます。
湿気のない床の下を掘ってもみがらを厚く敷き、
その上に梨・柚子類を重ならないように置いて、
上から藁の葉を厚く一度で敷きましょう。
どれほどの量であっても、こうして段々に
並べて、風が当たらないように木の蓋をして
おけば、長く保存しても色が変わらず、
風味もよく保ちます。
ビワ・りんご・ヤマモモなどは、
寒の水に薄荷(ハッカ)一握りと
ミョウバン少しを加えて壺の中に漬け置きます。
そうすれば長く保存でき、味も変わりません。
スイカ・かぼちゃなどは、高いところに
吊り下げておきましょう。長く保ちます。
かぼちゃは竃の上などに吊り下げておけば
不思議なことに翌年の2・3月頃まで
少しも損じません。
みかんなどの柑橘類は、えんどう豆の中に
重ならないようにして入れておきましょう。
瓜・ナスは、一度干してから染物屋の
アクのかすに埋めておきます。
食べるときは米のとぎ汁に浸せば、
生のようになって味は変わりません。
2.スイカ・マクワウリ※を水なしで冷やす方法
※マクワウリ=ウリ科キュウリ属の
つる性一年草。メロンの一種。
スイカとマクワウリは、どちらも指の爪で
ところどころかき破り、昼間日に当てて
熱くなったとき日陰に取り込み、
よく冷まして食べましょう。
よく冷えて氷のようになっています。
3.瓜・ナスを青いまま粕漬けにして保存する方法
瓜・ナス一貫目(3.75kg)と
塩五百匁(1.88kg)を粕に入れてかき混ぜ、
銭五十文を並べた上にこの粕を入れて、
瓜・ナスを入れます。
さらにその上に銭五十文を並べて
この状態で十日置き、銭を取り出し
粕を替えて別の器に入れて保存します。
長くおいても浅漬けのように青いまま
保つことができるでしょう。
また、ナスは浅漬けにおいても
塩が強ければ赤くなりやすいため、
そうなったときは水と塩を合わせて入れ、
銭を入れておくと良いでしょう。
奇妙なことに青くなります。
ただし、銭は銑鉄※の銭を入れてはいけません。
※銑鉄=鉄鉱石を溶鉱炉で還元して
取り出した鉄。3~4%の炭素と少量の
珪素・硫黄・リンなどの不純物を含む。
【たまむしのあとがき】
マクワウリは、メロンが日本で普及する以前には、人気の果物だったようです。
一旦熱くしてから冷却すると氷のように冷えるというのは驚きですね!
スイカも同様ということは、メロンもそうだということでしょうか。
ぜひ実験してみたいところですが、一玉を消費することが難しいので、来シーズンがきても検証できそうもありません。無念です。
柑橘類の保存では、えんどう豆を敷き詰めた中に入れる、とありましたが、ミカンのために豆を犠牲にするというのがよく考えると面白いです。
えんどう豆は腐っても、ミカンは腐らせないぞ!ってことですね。
ところで前回、お茶の代わりに喉の渇きを止める方法で、薄荷(ハッカ)が登場しましたが、基本的にハッカの効用には以下のようなものがあります。
北海道出身の私たまむし、道産子ならばこれを知らない人はいない、それほど有名な「北見ハッカ」。堂々と宣伝します。
ぜひよろしくお願いします。
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