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出産するときの心得など。古文書『廣益秘事大全』解読㉘

嘉永四年(1851)の古文書『廣益秘事大全』から、「即効妙薬類」解読の第28回目です。

そして出産シリーズ第2弾。

今回は「出産するときの心得」「難産でなかなか産まれないときの薬」「逆子で手足が出てきたときのまじない」の3本をお届けします。

1.出産するときの心得

出産するときに備えて、お腹が強く痛んでも
決して驚いてはいけません。
また、騒ぎ立てて驚かせてもいけません。

産まれるときは産まれるものだと、
心を平穏にしていましょう。

そのときが来なければ、どんなに急いでも
産まれるものではありませんから、
それまでの間にあえていきんだりすると、
横子や逆子などの難産になることが
多くなりますので慎みましょう。

産まれるときが来ればおのずとわかり、
自然といきむようになります。
そのときは痛みを感じ、
力が入るようになります。

介抱する人も日頃からよく心得ておき、
手順を誤らないようにしましょう。

たとえ横子や逆子などの難産になっても、
対処法を知っていれば、平常心で臨むことが
でき、事なきを得ることが出来ます。

ところが、困って驚き騒いで、妊婦を驚かせて
しまうと、これは大事になることが多いのです。

ですから、楽しい世間話などして妊婦の
気持ちを盛り上げ、勇気づけていれば、
死んでしまう命でも無事に助かるでしょう。

出産は病気ではありませんから、
生きるのは当然で、死ぬのが異常なのです。
この理屈をしっかり覚えておくべきでしょう。

けれど、出産のときにまず破水し
子がひっくり返ったとき、元に戻るのに
時間がかかるのは、気血が弱いのが原因なので、
そうしたときは薬を使って気血を整えましょう。

日頃から気力の少ない人は、出産前後も
独参湯どくじんとう(疲労回復・血流増加・虚弱状態の
改善に効く漢方)などを少し服用して
補うのもよいでしょう。

しかし、生まれつき気力の多い人は
薬を飲んではいけません。

もし医者を呼ぶのであれば、事前に良い医者を
選んで、お願いしておきましょう。
良くない医者は、軽率に無益の薬を出して、
かえって悪化することもあるのです。

2.難産でなかなか産まれないときの薬

難産でなかなか産まれないときは、
雲母うんも(花崗岩ペグマタイトに産する
ケイ酸塩鉱物)の粉を温めて酒に溶いて混ぜ、
飲みましょう。不思議とすぐに産まれます。

また、当帰とうき三匁、川芎せんきゅう一匁を煎じて
飲むのもよいでしょう。

胎盤が下りないときは冬葵子とうきしを、
後陣痛の痛みには延胡索えんごさくを加えます。
また、気が昇って血が下りてこなくなり、
気を失った場合は、益母草やくもそうを加えます。

さらに、胎盤が下りないときは蓖麻子ひましの皮を
取り除いて摺り砕き、足の裏につけます。
胎盤が下がれば洗い流しましょう。

3.横子や逆子で手足が出てきたときのまじない

横子・逆子で手足が出たときは、
子どもの父の名をその手足に書きます。
そうすればすぐに頭から産まれます。


【たまむしのあとがき】

現代語訳は簡単ではないのですが、今回はいつも以上に知らないことが重く感じました。

自然な訳は実際に使われる言葉であること、という当然のことが、出産を経験したことのない身としては、使われる言葉自体をそもそも知らないということに直面したのです。

原文では「あと腹痛む」という記述を訳すのに、そのままでは幼稚な感じがするので調べてみて、出産を経験した方なら、おそらく知ってて当たり前だろう「後陣痛」という言葉なども、初めて知りました。

知らないことがこんなところにあったんだ、という大きな気づきを得られた回でした。

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