「20歳のソウル」 


中井由梨子さんの、「20歳のソウル」という作品を読んで。


・ベートーベン
私がピアノ教室に通っていた頃、先生の家で音楽家の伝記漫画を借りるのが毎週の楽しみだった。その中でもベートーベンは愛読書だった、ある場面が好きだったから。


最後の舞台。段々聞こえなくなる自分のピアノの音。そしてついに何も聞こえなくなる。けれど弾き続ける。そして最後の音を鳴らし終える。
彼には自分の演奏の出来などまるでわからない。もうなにも聞こえない。
恐る恐る観客に目を向ける。
するとそこにはスタンディングオーベーションで笑みを浮かべながら拍手を贈る大勢の客。
彼はそっと涙を流していた。
その後彼は亡くなる。


ルートヴィヒヴァンベートーベンと浅野大義という2人の音楽家、彼らの情熱は寸分違わない。

浅野大義さんはそういう方だと、私は思う。


・中井由梨子さん
この「二十歳のソウル」という`伝記‘を書くこと、その日々は私の想像を絶する。

高橋先生が仰っていたように、命を懸ける、その言葉が一番適していると。

彼女のジャーナリズムに感嘆した。

本人に話を聞くことができないその歯痒さ故に、己の創造に偏ることは避けられないのではと思った。

しかし、この伝記の中で大義さんは生きていた。

彼の見た風景が、抱いた思いが、まるで自分の事のように繊細に。
そして、彼の木漏れ日のような暖かさ、優しさは彼の周りの人々からひしひしと感じた。


・もし
もし、彼と同じ場所で時を過ごせていたら。
いや、私には彼はきっと眩しすぎた。
私が彼の人生に登場できたとしても、彼と接点を持つことはできなかっただろう。けれど、彼のことを知ろうとしなかった自分を恥じたであろう。


・最後に
一つ、どうしても書き記したいことがある。

この伝記が映画化する。

その宣伝文句は
'感動の実話'より、'浅野大義という音楽家の一生'を提議したい。

そして改めて、音楽というもの、私は慕い、愛おしむ。

本を読み終えたあと、ふとピアノソナタ第8番「悲愴」を聴いた。

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