見出し画像

ぼくの妹 #短編小説

 みうちゃんは、ぼくの妹。すごくいじわるなんだ。
 さっきだって、ぼくがテレビを見ていたら、ピってチャンネル変えた。
「もおおお、みうちゃん!
 いいとこだったのにい!」
「だってみうちゃんも
 テレビみたいんだもん!」
「みうちゃんは、後でみたらいいやろ!」
「もお、こうちゃんなんかキライ!
 キイイイイイイーーー!」
「こら、こうし!
 妹を泣かせたらいかんやろ!」
なんで、ぼくだけが怒られるんだ。
 おもちゃを散らかしても、ジュースこぼしても、全部ぼくのせい。こうちゃんがやったーってパパに言いつける。
 お菓子やイチゴだって1パック全部一人占め。ずるいってぼくが怒ったら、みうちゃんはやさしいから1個だけあげる、だって。
 そして、いつも、ママみたいに命令してくる。昨日の夜だって
「こら、こうちっ 
 はやくパジャマきて!」
「こら、うるさいよ!はやくねなさい!」
ってママじゃなくて、みうちゃんが怒って、
「ちゃんと寝たか、
 みうちゃんが、しらべたる!」
ぼくが布団の中に隠れているところにやってくる。
「いちばんうるさいのは、
 みうちゃんだよっっ」
「キイイイイイイーーー!」

「こうし、おまえもたいへんやなあ。」
パパが言う。
「そやけどなあ、パパもたいへんやったんや。
 パパはなあ、妹と1人と、
 アネキが2人おったんやぞ!」
「えええーーー!」
「妹もキツいけどなー、
 アネキ2人もキッツいぞー。」
「ぼくは、妹だけでこんなにたいへんなのに。」
パパってすごい。パパが大きく、まぶしく見えた。

 日曜日、パパ、ママ、みうちゃんと買い物に出かけた。みうちゃんは、またおもちゃが欲しいと駄々こねて、泣きながら、ショッピングカートで寝てしまった。
「しょうがないなあ、みうちゃんは。」
「そういや、保育園で描いた絵が飾ってあるんだよね。どこかな?」
ぼくはこの前、保育園で家族の似顔絵をかいた。みんながかいた絵を、このショッピングセンターに飾るんだって先生が言ってた。
「あ、あそこだ!」
「こうちゃんがかいた絵はどこかな?」
「えーと、ここだよ!
 ママの顔をかいたよ!」
「ふふふ、ありがとう。」
「ちゃんと、ホクロもついてる。」
「こんどは、みうちゃんの絵は·····」
「あった!」
「おにいちゃんだいすき、だって。」
「こうちゃんの絵だ。
 やさしい顔だね。」
「ええなあ、おまえ。
 俺の顔じゃなかったなー。」
パパはちょっとくやしそうに言う。
「だって、こうちゃんは、みうちゃんに優しいもんねー。」
なんだか、心がくすぐったい。だったら、みうちゃんも普段からぼくにもっと優しくしてくれたらいいのに。
 しょうがないなあ、みうちゃんは。




(終)