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小説 「恋愛ヘッドハンター」①

中島 諒様
突然のご連絡をお許しください。
私は恋愛ヘッドハンターの朝井れいかと申します。
ぜひ、中島様にご紹介したい女性がいますのでご連絡を差し上げました。
後日、お電話を差し上げますので一度お話を聞いていただけないでしょうか。
電話番号は、〇〇〇―△△△△―××××です。
こちらの電話番号から着信がございましたら、お電話に出ていただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
恋愛ヘッドハンター 朝井れいか

 諒のスマホにこのようなSMSが届いたのは、高校一年生の二学期、中間テストが終わったその夜だった。そろそろ寝ようかとベッドに寝転がり、スマホをいじっていると着信したのだ。
「何だよ、これ」
 いたずらメールだと思いすぐに消そうとしたが、指が動かない。
その日の夕方に友人である伊丹優輝から彼女が出来たと報告を受けた影響から、指がためらってしまうのだ。しかも、その彼女は自分が密かに想いを寄せていた篠田紗矢だった。
 諒は中学にはいってすぐ紗矢に一目ぼれをしていた。肩まで伸びたまっすぐな黒髪、長いまつげに縁どられた大きな目。隙あらば、盗み見て胸を高鳴らせていた。
紗矢とは当時それほど会話を交わしたことはなかった。高校に入学して一緒のクラスになってから同じ出身中学のよしみでよく話しかけられるようになった。それをきっかけに、以前より親しくなっていたのだった。
今思えば、それは自分が高校に入ってすぐ同じ水泳部である伊丹優輝とつるむようになったからかもしれない。帰り道で信号待ちをしていた時、ふいにそんなことが思い浮かんだ。諒は、夕日に照らされて長く伸びた自分の影を見つめ、人知れず涙を浮かべたのだった。
 紗矢のしたたかさに触れたことをきっかけに、約三年半という長い間勝手に作り上げていた理想の少女像が崩壊していった。また、告白したのが紗矢からだったという優輝からの報告が、諒の心を一層ズタズタにしていた。
 諒は、このメールを消さずに保存した。その夜は涙を滴らせて眠りについた。
 れいかから電話がかかってきたのは、中間テストの結果が戻ってきた日の夜だった。

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