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小説「恋愛ヘッドハンター」⑥

智也とれいかはしばし途方にくれた。二人とも親戚は地方にいて、身近に頼れる大人はいなかった。智也は何かがあった時のためにと父から教えられていた金庫のナンバーを思い出し、とりあえず使えるお金の確保をした。ただ、両親たちがいつ目覚めるかもわからないので、このお金をできるだけ減らしたくないと考えた。
まだ中学生なのでアルバイトはできない。したところで収入の額は知れている。
「ねえ、私たちもヘッドハンターやろうよ」
 頭を抱えていた時にれいかが言ったのだった。
「そんなの無理」
「パパたちがやっていたことをそのままするんじゃないの。マッチングアプリじゃないけど、あの人と付き合いたい、って思った人の願いをかなえてあげるの」
「恋愛のヘッドハンティングをするってこと?」
「そう!恋愛ヘッドハンターになるの。だって、好きな人と一緒にいるってすごく安心できることじゃない」
 れいかの無垢な瞳に智也は涙が出そうになった。両親が事故に遭って以来、心の頼りはれいかだけだった。智也はれいかを抱きしめた。
「わかった。がんばろう」
 智也とれいかは唇を何度も重ね、心を溶け合わせた。その後、両親の着替えなどをそろえるため、クローゼットを探っていた際、二人は避妊具を見つけた。それを機に二人は少しずつ手探りでセックスを覚えていった。肌を重ね互いの体温を預け合わないと、解決できない孤独がそれぞれにあった。
 二人は恋愛ヘッドハンターのツイッターを開設した。営業の仕方などは、父親がクライアントと電話で話している時の内容を智也が思い出してマニュアルを作った。
「男はとにかく褒める」
「女はとにかく認めてあげる」
 智也は父が話していた内容の特徴をれいかにわかりやすく説明した。個人情報は根気よくネットを駆使すればわりと簡単に手に入る。二人はスーツを購入し、大人に変装した。
 ツイッターの反応は薄かったが、最初の客が気にいってくれたことにより口コミが広がっていった。二人は、両親の快復を待ちながら仕事、家事、勉強を続けた。

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