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小説「恋愛ヘッドハンター」②

テストの総合得点は以前より上がっていた、両親を安心させられる内容だった。諒の心は少し軽くなっていた。
 前にメールが送られてきた時間、午後十一時頃にスマホの着信音が鳴った。その時も諒はベッドに寝転がっていた。メールが届いて以来、内容を何度も見返していたので画面に映った電話番号が「恋愛ヘッドハンター 朝井れいか」のものであるということはわかっていた。
 息を飲んで電話に出てみる。
「もしもし」
「もしもし」
 落ち着きのある女性の声がした。
「中島諒様のお電話でよろしかったでしょうか」
「はい」
 諒はおそるおそる返事をした。
「わたくし、以前にメールを送らせていただきました恋愛ヘッドハンターの朝井れいかと申します」
「はい」
「今、お電話大丈夫ですか」
「はい、大丈夫です」
「あのー、突然あのようなメールを送られてきてたいへん驚かれたと思うんですけど」
「あ、はい」
「わたくし、ある女性から中島諒様とぜひ、お付き合いしたいとお願いされておりまして」
「え、はあ?誰ですか?」
 首から頭まで一気に血が上った。額にじわりと汗が滲む。
「それは会ってから申し上げます」
「え、同じ学校の人ですか?それとも中学時代の同級生?」
 思わず畳みかけるように質問をしてしまった。れいかは、ふふっと笑った。
「その方は、中島様の優しいお人柄や優れた水泳能力を高く評価されています」
「僕が水泳をやっていることを知っている人なんだ。でも、僕はそんな優しい人ではないですよ」
 優輝と紗矢がつきあい始めてから、二人をあたたかく見守るふりをして心の中で何度ディスったかわからない。諒は自分の胸に手を当てた。
「いえ、そんなことはありません。中島様はとても心の優しい人です。自信を持ってください」
 諒は軽く首を振った。

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