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『じねんとnature』水と油の双子たち(長文) 「自然栽培の世界観#003」


このシリーズは僕の13年間自然栽培の生産・流通に関わり経営してきた経験をもとに、これから自然栽培に取り組みたいみなさんのお役に立つコンテンツをアップしていきます。
テーマは自然栽培というプロセスの共有です。
単体記事購入のほか、メンバーシップで全ての記事が読めるようになります。またこちらのコンテンツから書籍の出版につなげていきます。
メンバーシップの掲示板ではより実践的な学びや観点の共有を目的に、自然栽培をよりブラッシュアップしていくコミュニティを目指します。
プロセス自体に多くのアイディアがありますので、田畑がなくても生き方や仕事の姿勢に活かせる共通点にぜひ注目してください。


自然を語る上で注意したいこと

みなさんこんにちは!

前回は自然栽培を始める前に、そもそも自然とはこれまでどのように考えられてきたのかを世界の歴史を追って見てきました。

誤解がないように言っておかなければならないのは

自然がなにかなんて今持って解明できていない

ということです。

それはそうですよね。大自然=無限の大宇宙なんですから。

おまけに目の前の田畑や自分の体でさえ毎日変わっていく。

僕たち人間はそういった不安定で完璧なとてつもない力の上で生かされているのは紛れもない事実です。

古代ギリシャや古代中国の思想家たちも人生の全身全霊をかけてもごく一部のことしかわからないし、もしかしたら分かってないのかもしれません。

ここでいう解釈も今現在のものであり、今後もっと変わっていく可能性もあります。

そういった余地が多分に残されているのが自然です。

きっと人間は半永久的に宇宙に漂うこの地球という惑星にいてそれが何なのかをずっと考えて寄り添っていくんだろうと思います。

その上で、今現在まで、僕が体験し解釈してきた自然栽培の世界観を、皆さんのアイディアの一つとして共有するのが目的です。

農業は毎年一年生という業界です。でなければ過去の経験や実績が先入観となり目の前に起こっている現象を見誤ることになる。これが田畑と向き合う人の姿勢がいつもニュートラルであろうとする理由の一つでもあります。

ですから、あくまで全ては仮説である、という観点を忘れずに、かといって萎縮することなく、伝えたいことはしっかりと書き進めていきたいと思います。


『じねんとnature』水と油の双子たち


さて、今回は日本における「自然」という言葉の取り扱いからスタートです。

「自然」という二文字からは、人の手が入らない山川や海を、あるいは意図を感じさせない仕草や動作が思い浮かびます。「自然」という漢字のままを直訳すると「自ずからある」となるようです。日本で最初に「自然」という字が確認される書物は、12世紀頃の漢字の辞書「類聚妙義抄」です。それには「自然ヲノヅカラ」と記されています。

一般的には12世紀の漢字辞書に「自然」と読む最初の言葉が確認される、というのが一般の認識だそうです。

それがだんだんと変わっていくのが明治時代です。

明治以前は自然なるものの概念には人間や人工的なものも含まれていたと言います。

それは自然と書いて「じねん」と呼ばれていました。そういった解釈が当たり前の中で生活していれば、当然、日常的に「じねん」を意識したりすることも少なかったでしょう。

こういった普段意識しないような名もなき叡智は、それと相反するような理智的な文明との衝突があったがゆえに初めて意識され姿を現したのかもしれません。

また、定義が曖昧なこともあり、権威的、理論的な圧力にさらされると忽ち存在が霞んでしまいます。

それは、特にヨーロッパから始まった全世界の植民地化計画である大航海時代を発端に、同様のことが世界中で起こりました。

ご存じのとおり、日本の江戸時代末期にはヨーロッパ・アメリカなどの植民地拡大の波が押し寄せ、日本も本格的な開国の時代に突入します。

明治期は西洋文明を取り入れる中で、英語の「nature」に相応しい当て字として「自然」という漢字を「しぜん」と呼んで使用しはじめたようです。

ここから西洋的概念での「nature」という考え方が、日本社会においても少しずつ使われはじめ、「自然」という言葉が二重の解釈を持つようになっていったと考えられます。

こういった経緯から、現代の日本人は2つの自然という解釈を

ダブルスタンダードとして持っているのが無意識にしていることなのです。

それが日本人が世界でも特殊で、非常にユニークな存在とされているものの一つだと考えています。


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