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『イノチのシゴト 生命に寄り添うまなざし』第4回 自然栽培生産者橋本成正さん撮影回顧録

こんにちは!

いつもご覧いただきありがとうございます!

今回は先日公開しました自然栽培生産者橋本成正さんの『イノチのシゴト 生命に寄り添うまなざし』第4回についてのお話です。

僕が橋本さんに初めて出会ったのはもう10年前くらいでしょうか。

とある食材店で出会ったのがきっかけでした。

自然栽培ブロッコリーの衝撃


でも実際出会ったのは橋本さん本人ではなく

橋本さんが育てたブロッコリーでした。


橋本農園のブロッコリー

そもそもですが

自然栽培のようなプロセスを続けていく中でだんだん培われるクオリティは

虫がつきにくく病気になりにくいなどの特徴があります。

しかし、アブラナ科のキャベツやカリフラワーは

とにかく環境のバランスが整っていないと、栽培することは非常に難しい野菜でもあります。


その土地の土を知り、気候を読み、適切な判断を実行していく。

それらがしっかりフィットした時にだけ

自然栽培のキャベツのようなハードルの高い野菜が農薬にも肥料にも頼らず

プリップリの状態で食材店に並べることが出来ます。


群馬県前橋の自然栽培食材店サンデールーム


目の前に自然栽培のブロッコリーがある。。

本当にびっくりしました。

さらに虫が見当たらない上サイズ感もボリューム満点!

通常の市場出荷したとしても特上クラスです。

自然栽培をうたっているちっちゃなブロッコリーは何度も見たことがあります。

その当時、自然栽培野菜の決まり文句は

「肥料をやってないからこのサイズは仕方がない」

でした。

しかし、橋本さんのブロッコリーはそれを覆しました。


橋本さんのブロッコリーは迫力が違いました。

しかも、味わいがダントツに美味しい!

スッキリとした甘みがあり、もういくらでも食べたくなる。

自然栽培全般の感覚ですが体にスッと溶け込んでいく雰囲気です。


これを栽培している生産者が橋本さんだと聞いていつか会いたいと思っていたところ

とある栽培勉強会でご一緒することになりました。


橋本さんはふだん物静かであまり目立って主張する方ではないですが

そのロジックと視点はいつも冷静に徹しているがゆえに捉えられる結果だと感じました。

田畑に向き合う好奇心の熱さとその奥にある学びの姿勢が非常に印象的で

日々感性を研ぎ澄まして仕事をされているのがわかりました。


何年かかけて結果が出る農業だけに決して派手には見えません。

しかし、確実に歩みを進めている。

そんな大地に根を張った大樹のような超特大のバイブレーションを放っていました。

橋本農園倉庫にて


イノチのシゴトでは夏から冬にかけて何度か橋本農園を訪れ撮影させていただきました。

映像でも夏と冬が入れ替わったりしているのがわかると思いますが

注目して欲しいのは橋本さんがインタビューや普段僕に語ってくれることが

いつ行っても常に一貫性のあるビジョンで答えてくださっている点です。

『自然と調和』という言葉の無数にある意味

ここで

「自然と調和」という言葉について考えてみたいと思います。

橋本農園の綿花


この言葉はとても抽象的で見る角度によってさまざまな解釈ができるようになっていると感じます。

仲良く和気あいあいとしている雰囲気を感じたり

自然を含めた文明を創造すること、のようにも捉えられたり

人の意図が加わっていない中で全てが整っているとも解釈できます。


ほんとうに玉虫色のような言葉です。


また、「自然と調和」という文言にはある種の確固たる正当性のようなものもあり

悪用されると恐ろしい権力に発展する可能性も感じられこういった点は注意が必要だと思います。

自然とつくと大体そうですね。

また、自然と不自然という二元論に分け、不自然を悪とし、全部自然が良いとするような

排他的な考え方もあるようですが、これは自然界の多様性や

すべてに役割があると言う観点が欠けてしまっておりどうしても偏りが生じる傾向を見てきました。

異なるものを認めず、どこか被害者的なスタンスに陥りやすくこれもまた注意したいところです。


橋本農園の大根の収穫


実際、映像の中で橋本さんは

「受け入れる」という言葉を何度もお話ししてくださいました。

それが本当に印象的だったので映像の冒頭にカットを並べて連呼しているような演出をしました。

その言葉のほとんどが

一般的にはネガティブな事柄に対峙しても

認めて受け入れていく強さを持つ

といったことを意味していたように思ったからです。


自然栽培の生産者がいう「受け入れる」という意味。

これは中国の古典である菜根譚の一説

「清濁併せ呑む」

に近しい意味合いがあるように思います。

読んで字の如しですが

自分が気に入らないもの、好きではないもの

ネガティブだと捉えられるもの

それら全てを良しとして丸ごと飲み込むこと

つまり許容する力についての人生訓です。


橋本さんはそんなような意味のある言葉として

受け入れる、とおっしゃっているように思いました。

また、敵をつくらないこと。

それを無敵とも。

それらは経験に裏打ちされた生きた言葉として僕に刺さりました。

橋本農園の小麦畑

また、これはとても痛みを伴う気力体力が試されるものでもあります。

自然界は特に人間の想定を超えて物事が起こってくる厳しい世界。

それと和するというのは

本当に大変な覚悟がないと成り立たないように思います。

口にするより遥かに難しいものでもありますね。

そういった、物事を受け入れていく力は田畑に向き合うことで

いろんな失敗や苦難の連続から養われていったことが撮影をとおして伝わってきました。


なにがあってもとりあえず受け入れ

なにが起こっているのかをいろんな角度から考察する。

自然界を相手にした仕事はこれを常に必要とされているように思います。

まずはすべての現象を起こるべくして起こったものとして

受け入れることの大切さを

橋本さんは一貫して伝えてくださいました。

橋本農園長ネギの収穫


それは田畑だけでなく、日常的に家庭や職場でも同じような判断が必要な局面というものがあるでしょう。

ただ、口で言うほど簡単ではないことですよね。

実践するのは本当に勇気と覚悟が必要だなと思います。


橋本さんが自然の世界で起こる様々な出来事を

受け入れ

整理し

ポジティブに進んでいこうとするその姿は

きっと同じような問題を抱えている人の心に

響くのではないかとの思いから映像に収めさせていただきました。

人間は清くあろうとするあまり差別的になり了見が狭くなってしまったり

力に溺れるあまり、濁りに濁って自分を見失うということがあります。

どちらも極端に精錬していくということは、それはそれで反作用が大きいということかと思います。

また、会社経営をしている人は、いろんな意見の社員がいる中で経営していかなければなりません。

よくわかっている経営者であれば

自分の意見に対して逆のことを伝えてくる従業員を、意図的に社内に置くことがあると言われています。


そのように自らの中に反対の要素を受け入れ持つということは

厳しい社会情勢の中でも適応力につながることもあります。

植物も種の保存のためにいろんな個性に可能性を持たせようとする。

その自然界のあり方から学ぶものは本当に多いと思います。

「受け入れる」強さが美味しさを生む


橋本農園の大蔵大根

橋本さんが田畑に向き合う中で見出した受け入れる力を養うということは

人の成長にとても大切なものを含んでいると思います。

そして

時々ブレてもいいんだ。

やってみないと、感じてみないとわからないこともある。

といった、不完全さまでも包み込むような捉え方

肩の力がゆるりと抜けるような無理のないスタンスに共感を覚えます。

人間のそういったブレや矛盾。人間は不安定だからこそドラマであり愛しいと僕は思います。

だからこそ立ち向かう姿が美しいと感じるのかもしれません。

土と植物に向き合いながら一歩づつ受け入れ進む橋本さんの姿や言葉に

見てくださる皆さんが何か共通点を感じていただけたら本当に嬉しいです。

もちろんですが橋本さんのお野菜のクオリティは本当に感動します。

彼の想いや覚悟やその全てが生み出したもはや芸術です。


不思議と優しく感じられるその奥ゆかしい食体験はきっと新しい感覚を目覚めされてくれるに違いありません。


ちなみにブロッコリーは自家採種です。

今から冬が待ち遠しいですね!

もちろん夏野菜も美味しいので要チェックです!


映像を通して、実際に農業に取り組んでいる橋本さんのリアリティを伝えることができたなら嬉しいです。


長文を読んでいただきありがとうございます!


本編はこちらからご覧いただけます。↓



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