太鼓犬
30年近く前、小五の頃に塾の先生から聞いた話。
先生が二十歳くらいの頃、普天間基地の近くの、何年も誰も住んでない外人住宅の庭に鎖に繋がれたままの犬がいて、誰かが世話をしてる様子もないのになかなか死なないとか、餌をあげるとしゃべるとかそんな噂があったそうです。
面白そうだからってある日の夜、バイト帰りに肝試しフィーリングで確かめに行ったそうです。
で、その外人住宅に車で到着した瞬間、犬の鳴き声が聞こえて、車を降りて家の前の柵に近づくと、確かに犬が鎖で繋がれてて、持ってきた魚肉ソーセージを犬の前に投げるとメチャクチャうまそうにガツガツ食って、こうやって誰かが餌をあげてるから死なないんだろーなーって思ってたら、その犬が急に「太鼓持ってこい」って言ったそうです。え？ってなってしばらく固まってたら、また「太鼓持ってこい、太鼓持ってこい」って。
ビビって慌てて車で逃げたんだけど、言うとおりにしないと呪われたりするかもしれないと思って、家に帰って地元の青年会でエイサーをやってる知り合いに電話で事情を説明して太鼓を持ってきてもらって、喋るところを録音するためにラジカセを持って友人と一緒に外人住宅まで戻りました。
柵の前に太鼓を置くと、犬が近づいてきて、でも当然鎖が短くて太鼓まで届かない、どーするのか見てたら犬が自分で首輪をパチンって外して太鼓の前まできて、柵から前足を伸ばして太鼓をポンポン叩き始めて、さっきまで嘘つき呼ばわりしてた友人もさすがにビビってて、2人でしばらく聞いてたら急に叩くのをやめて、また自分で首輪をはめて地面に伏せたそうです。
それから太鼓は置いたまま家に逃げ帰って、手持ちで録音してたラジカセを再生したらバッチリ録音出来てたらしく、それを僕ら塾生10人程に教室で聞かせてくれました。
聴いた感想は、普通に太鼓が鳴ってて、マジで犬が叩いてるんだったら怖いなって程度で、犬の声は入ってないんだなーって思ってたら、太鼓が鳴り終わった直後に急に大音量でお経のような、日本語では確実にない、今考えると中東系かなって感じの音声が流れ出して、全員パニックになりました。
先生が言うには、前聴いた時はこんな音声は入ってなかったって話でした。
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