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最高密度の春だった。

春がこんなにも美しい季節なんて知らなかったし、愛おしさを抱くなんて思ってもいなかった。どの日々も幸せだったが、特に記憶に残った夜の話をしたい。

その夜は帰省の最終日で、数日前に「最後に会おう」と友人が連絡をくれたので最終日の前夜、数人で集まることになった。まさかの早くに帰省を終えた友人がまた地元に帰ってきていて予想以上に盛り上がった。「明日暇だ」という話から次の日(今日)も会う約束をして夜中の3時に解散した。

家に戻って、昼ごろから集まるだろうと思っていたのでゆっくり寝るつもりで眠りについたのに、思った以上に朝早くに目が覚めた。スマホに来ていた友人からの連絡を確認すると8時40分ごろに家に迎えに行く、と。早い。早すぎる。そんな朝早くから何をするのか。2時間ほどしか寝れてないのに。迎えが来て訳を聞いてみると、友人の1人の美容室に着いて行くらしい。そこから友人の髪型がツーブロになるまで駐車場で待った。ほんの30分で美容室を終えた友人はセットもされていてとても似合っていた。彼はバリカンで刈られた横側を「これが癖になる」と一日中触っていた。その後、一緒に地元で有名ないつも賑わっているうどん屋さんで昼ご飯を食べ、帰り道にガードレールに突っ込んでいる軽トラックを助け、地元をドライブして夕方6時前ごろにそれぞれ次の予定があったので解散した。

だったはずなのに、また23時に同じメンバーで集まった。

私は解散後に親友と会い、1人はバイト、もう1人はボクシングした後だった。残りの1人はその間爆睡していたらしい。朝から会って夕方まで一緒に過ごしたのにまた夜も4人でドライブに出かけたのだ。山道も海沿いも走った。いつの間にか港町にもいたし、県を跨いでいた。結局、朝方4時まで一緒にいた。

約半日、私たちは同じ時間を過ごしたのだ。
驚くのが、半日も一緒にいたのにその間、一回も話が途切れなかったし、熱が冷めなかった。
初めての4人だったのに永遠に話していた。同じ話を何回したかも分からない、同じボケで何回笑ったかも覚えていない。ただただすごく楽しかった。2時間しか寝れていないはずなのに全く眠くなかった。

みんなが同じ温度でその時を過ごし、思い出を共有し、お互いを大切にしていた1日だったと思う。思い返してみたら、この春はそんな日がたくさんあったと思う。私が誰かの中にいること、大切にされていることをすごく感じられた春だった。出会う人たちに自分は何を残せているのだろうか、と自信を無くしてしまう時があるけれど、こうやって「会おう」と言ってくれて、「またね」と振り返ってくれる人が私にはいることに気づいた時にこれまでの自分の振る舞いが合っていたのだと思える。だから私も会いたい人には会いに行くし、別れ際は必ず次に会う約束をしようと決めた。

大好きな人たちと夏に会う約束をした。海も花火もグランピングもやろうと話した。いつまでこうやって笑っていられるかは分からないけれど、時間も記憶も縁もずっとずっと大切にしようと思う。

最終日にこんなに濃い時間を大好きな人たちと過ごすことになる思っていなかったから、せっかく切り替えて東京に戻る準備をしていたのに寂しくなってしまったじゃないか。でも、ありがとね。3人と一緒に見た桜は、今までで1番綺麗な桜でした。

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