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日報 2023-12-18 『へんしん不要』/餅井アンナ

『へんしん不要』を読んだ

失礼ながら、餅井アンナさんは私に似ているな。と思って読み進めていた。

情緒が不安定、1年通して調子のいい季節がない、頑張るぞと意気込むとスタートから飛ばしすぎてすぐオーバーヒートする……。身に覚えがあるなあ。まあ、餅井さんは私より数倍上手く立ち回って人生を乗り切っている……な。
2018年時点で25歳とのことだから、やはり先輩だ。生きていると、「この人はただ歳を食っただけだな」と感じる人生の先輩に遭遇することは多いが、餅井さんは文字の通り「人生の先輩」って感じだ。
あと、埋立地が好き、と書かれていたのだが、私も有明の空気が大好きで、東京ガーデンシアターでライブがある日はかなり早くに行って街を探索していたのを思い出した。有明、出来て月日が浅いです!という顔をしているのが面白い。迷子になっても困るので、基本会場からそんな遠くまでは散策しなかったのだけど、有明という街、もしくは埋立地という土地はやはり「人によって作られた街」が溢れていて、少し無機質。体感ではシリコンみたいな質感。あ、いや、コンクリートなんだけどさ。
お台場に行く話でゆりかもめの話が出てきた。自分は埼玉よりの東京に住んでいたから、新橋でゆりかもめに乗り換えてたのだけど、首都高とレインボーブリッジが浮かぶ東京湾を、ぐいぐい進んでいくゆりかもめはなんだか逞しい気がして、好きだった。敷かれたレールに沿って進んでいくのは十も承知しているけど、東京っていうツギハギで灰色の小箱から、青を基調とした色がある街に飛び出して、自由になれる気がした。
終演後、だいたい夜9時くらいになるんだけど、新橋に戻るため通りすがる汐留のキラキラした夜景を眺めつつ、「箱庭に戻ってきたな」と実感するまでが私のライブだった。懐かしい。あの当時は東京ガーデンシアターも出来たばっかりだったし、何より世界がコロナで流れが緩やかだった時期だから、今また東京に行ってみたら違う感覚なのかもしれない。
北海道に住んでいる方が広々している、と現バイト先の店長に言われたことがある。(もうすぐ辞めるから元バイト先の店長になる)
両親が東京に住みたいって言ってるんですよね〜と話した時に、「東京に行くより北海道の方が広々してるでしょ?」って。その時は「そうですよね〜」って返したけど、この『へんしん不要』を読んだらそうは思わなくなったな。確かに北海道は日本で1番広いけど、ほかの街が遠いし、札幌以外の街って正直あんまり行きたいって感じでもないって言うか……。東京は電車に1時間半ぐらい乗れば端から端まで移動出来て、その分当たり前だけど街が変わるし、そうなると当然雰囲気も違うし、お手軽異国情緒を味わえるのがいい所だなと思う。『へんしん不要』みたいに、「ちょっと気分転換に1泊だけホテルに」なんてしても、札幌はせいぜい定山渓かな。正直心底羨ましいと思った。でも、東京暮らしを手放すことになったのは私のメンタルが弱くて体力もカスカスだったからであり、実家への強制帰還は不可抗力だから、餅井さんの東京暮らしを羨んだって仕方ないんだけども。情緒不安定なりに大学を卒業し、類まれなる文才で細々でもフリーのライターをしている、その才能は私にはなかったので。(専門学校すら卒業出来なかった……)ていうか、札幌に引っ越してなかったら『へんしん不要』を貸してくれた彼氏にも出会えず、この本を読むことなく、東京暮らしを思い返して羨ましくなることも無く一生を終えていた。今、マオが札幌に住んで『へんしん不要』を読んでいるということは何かしらの運命だと信じてる。

あっという間に読み終わってしまった。
かなり、かなり良かった。自分にも思うとこあり……といった感じ。これは私が、私も、情緒不安定だからか。自分用に買い直したいぐらい、良かった。メンタルが落ち込んでにっちもさっちも行かないよ〜、という人におすすめ。

栞にしていたタタッコ。
ちゃんとした栞が欲しい。毎回映画の半券とか、適当な紙を挟むことになっている……。

それでは。
2023-12-18

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