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私も「これからの観光トレンド」を、予測してみた。

 少しずつ、各国の動き、日本国内における需要予測や意識調査、調査研究やコラム、業界別のビジネス変容予測などが出始めていますね。
 こんなふうに色々な人が、それぞれの立場で「これからの観光ってこうなるんじゃないか?」「こういう需要も生まれそう」「こんなサービスあったら嬉しいよね」と、自由に語ることで、たくさんの視点や視座が見えてくる、視野が広がるって、すごくいい。今後の観光を考える上で、とても大事なことだなぁと思います。
 だって、正解がないし、誰にもこの後のことは分からないのですもんね。だから、今はいろんな示唆があっていい。
 ということで、私も自分なりに「観光トレンド」なるものを、予測してみちゃいました。
エビデンスがないものは、完全なる肌感覚です。

 なお、前置きとして、あくまでも、私個人の見解であり「政府見解」ではないことを申し添えたいと思います。



1.国内旅行は「マイクロツーリズム」から復活。

 各所で皆さんが、すでにおっしゃられているように、私も国内の旅行需要は、近場・県内(マイクロツーリズム)→近隣県の越境→国内→海外 のように動いていくと思います。客層としては、ビジネスが先行しつつ、一般観光も徐々にという流れでしょうか。これは、じつは日本だけでなく諸外国も同じような見立てがされています。
 例えば、アメリカの場合。USトラベル(全米旅行産業協会)が毎週実施している「米消費者の旅行に関する意識調査(4月28日付け)」によると、回答者の半分弱(47%)は「ロングホールは避け、地域内の旅行を増やすつもり」、73%は「大規模な会合は避ける」、78%は「コロナ危機が落ち着くまで、海外旅行はしないだろう」と答えています。
 時期については、完全なる私の希望的観測になってしまいますが、8〜9月くらいから国内旅行の萌しが出てくれば、残り下半期にかけて、政府や各自治体で準備をすすめている各需要喚起キャンペーンの効果も持続できて良いな、と思っています。

また、気になる数については、ソーシャルディスタンスを考慮すると、いきなり100%フル稼働は、できないし、するべきではないということ。今まさに現場では、とくに衛生面に配慮した受入体制を整えている段階かと思いますが、まずは40〜60%くらいの稼働でオペレーションしていくこのになると思います。夏休み、お盆、シルバーウィークを迎えますが、数は緩やかに推移していくのが、望ましい気がします。
ここで、これまでの分を取り戻そうという焦りから、一気にお客様を受入れしてしまうと、感染リスクが高まるのと、観光業界や自治体は儲けのために、町に早々と人を招き入れるのか?という地域住民との軋轢も生まれかねない。そこは慎重に受け入れていく必要があると思います。

 さらに旅行の目的も、初めは、家族や友達など「会いたい人を訪ねる」というものから、徐々に、「長引いた自粛生活からの心と身体の解放」…、というふうに変化していきそう。具体的な旅の形態は、このあとの5で解説します。




2.インバウンドは、1〜2年は辛抱。

 上記のアメリカの消費者調査にもあるように、そもそも海外旅行をするというマインドが、全世界的にしばらくは戻りませんし、当然ながら各国間の航空関連の規制緩和の状況が大きく影響しますので、インバウンドがもとの水準に戻るのは、残念ながら、やはりそれなりの時間がかかると思います。一方で、完全回復は難しいものの、全く動きが無いということではなく、国際線が動き出せば、政府関係者をはじめビジネス客の動きなどは、細々と出てくると思います。
 



3.アウトバウンドは、不安払拭が鍵。

 トリップアドバイザーが発表した「新型コロナウイルスに関する旅行市場動向調査」によると、日本人旅行者の海外旅行再開時期は、「1年以上先」が87%と大部分を占めたそうです。一方、他国では、シンガポール人は、「7〜12カ月以内」が40%、「6カ月以内」の再開が30%の回答。英国人は「6カ月以内」が32%、「7~12カ月以内」が27%という結果に。お国柄やその国の主な海外旅行先にもよりますが、比較的他国は、日本人より需要の戻りが早まるとみられています。ということは、近隣アジアの国に、旅行再開意向の早い国があれば、訪日インバウンド回復の萌しがそこにあるということかと思います。まだ、調査結果が公表になっていないのですが、先日あったトラベルボイス主催のオンラインセミナーによると、海外旅行ガイドブックで知られる「地球の歩き方」が、同様に日本人の海外旅行意向調査を実施。その調査結果では、日本人が感じている海外旅行への不安要素として「感染証明の要否」「旅行先での感染リスク」そして「アジア人に対する偏見」といった回答があげられたそうです。アウトバウンドの回復には、政府や旅行会社などが、各国におけるルールや旅行時の留意事項といった最新情報を、旅行者へきちんと伝え、不安要素を取り除いていく必要があると思います。



4.   MICEは、かなり厳しい。「I」が唯一の希望か。

MICEとは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称です。MICEは、いつもそれら全体で語られることが多いのですが、考える前提として、それぞれ規模も性質も異なるので、分けて考える必要があると思います。

とはいえ、やはりMICEは、どのカテゴリーも苦戦が予想されます。
米MICE専門誌Northstar Meetings G roupが2週間に一度実施している調査で、850人のミーティングプランナーが回答。そのアンケート結果からも、かなり厳しい見通しが示されています。

件数の減少、小規模化、ローカルライズされたミーティングへの移行。また多くのイベントが今年から来年へと移され、来年のイベント予約は大型イベントほど減少とのこと。先日とあるセミナーで、観光分野の有識者である米セントラルフロリダ大学の原教授がおっしゃられていたのですが、アメリカもMICEはゼロ。国際会議場などの大型施設は、コロナの検査場として使われているという衝撃的な話がありました。
このようなことからも、世界的にもMICE業界は、しばらく厳しい状況が続きそうですが、私は、唯一「I」(企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel))には、糸口があるのではないかなと思っています。



5.   これからはこんな旅がくる!?ウェルネスツーリズム、ネイチャーツーリズム、ワーケーションの可能性

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 マイクロツーリズムから、国内需要が動きだすとの予測をしました。
 さて、みなさんは最初に旅をするなら誰と、どんな旅行がしたいですか?

 まずは、家族や友達に会いに行く、ご近所日帰りや帰省といった「会いたい人を訪ねる旅」。
そして、やはり自粛生活が長引いているので、心も身体も解放できるような旅、かつ、3密を回避した安心で安全な旅。そんな心理がはたらくのではないでしょうか。私ならそうです。もう、頭に浮かぶ宿やホテルがたくさんあります。
そのあたりを考えると、こんな旅が増えそうな気がします。


✔︎温泉・スパ、ヨガ、瞑想、ウォーキングなどを絡めたヘルシーな旅「ウェルネスツーリズム」
✔︎自然の中に身を委ねる「ネイチャーツーリズム」

 加えて、子供を思いっきり外で遊ばせたい!という気持ちもファミリー層には確実にあると思うので、ハイキングやキャンプ(グランピング含む)といったアクティブな旅も好まれそうです。

 そして、どの旅も移動は、3密を避けるため自家用車やレンタカーの利用が多くなるでしょう。
また、滞在先の形態としても、やはり3密を避けたいので、プライベート感と開放感のある、一棟貸し、旅館・ホテルなら離れや別邸、コテージ、ヴィラなどの需要が高まりそうな予感がします。

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「ワーケーション」については、一般観光よりも先にビジネス客が動くこと、また、この半強制的なテレワークの導入で、「オフィスじゃなくてもどこでも働ける」というマインドに、世の中が切り替わりつつあるので、旅時々仕事というスタイルが今後確立していくのでは?という期待も込めて。一方で、テレワークこれだけ普及すると「そもそも出張する必要ある?」という話しも…。ただ、ワーケーション需要は、休暇改革やその後の需要平準化にもつながっていく、とても重要なポイントだと思っています。


最後に。

 このような変化を意識しながら、まさに走りながら、行政や観光産業をはじめとする関係者が、考え、やらなければいけないのは、以下のようなことが考えられます。これもあくまでも個人の見解です。


1. 量から質への転換(薄利多売→高利少売)
2. 休暇改革と需要の平準化
3.「適切な」需要喚起 
4. ニューノーマルへの対応状況の可視化
(水際対策、危機管理、認証制度)
5. ビジネスモデルの変革(脱・観光)
6. 観光政策のアップデート


 今回の危機は、観光産業にとって大きな試練でもあり、転換期であるとも考えています。色々と今後のことを考えていくうえで、ひとつ問いたいのは、国内旅行需要もインバウンドも、これまでと同じ水準に戻すこと、そして、これからも更に人数を追い続けることが、果たして正しいのか、ということ。これは、インバウンドが好調続きで、市場がイケイケな時から、もうずっと私の中にある問いでもありました。
これまでの前提を疑ってみる。その上で、まさにいま考えるべきひとつは、量から質への転換ではないでしょうか。そして、それに伴い、数ではない新しい指標も必要であり、日本の観光にとってそれが何なのかを考える時なのだと思っています。

 いまは、需要がほぼゼロなので、まずは経済を回すことが先決です。そのために「適切な」需要喚起策を講じることでマーケットを刺激、徐々に回復させながら需要の偏り(時間、時季、地域)も、なだらかにしていく。そのなかで、地域や企業が、適切な人数と質との着地点をそれぞれ追究していく。当然、地域や企業によって、異なるものになるだろうし、それでいいのだとおもいます。誰かと比較しない、自分の物差しを持つということ。需要がまっさらになった今が、考え実行するチャンスだと思っています。
 また私は、量から質への転換を考えることによって、観光産業の地位向上、人材確保、働き方改革、生産性向上、オーバーツーリズムの解消、といった、もともとあった産業課題解決の糸口にもつながると思っています。

この辺りと、それぞれの項目の説明は、また次回のnoteで書きたいとおもいます。