明け方の夢

学生時代に憧れていた職業がありました。
「(そのジャンルの)学校で、社会人入試やるみたいだよ。受けてごらんよ」
と知人が教えてくれました。私は、ひどく戸惑いました。
いまから受けても受からないんじゃないかな。実技の道具を修理しないといけないし。無理なんじゃないかな。どうせ。
そんなことを思いつつ、でもせっかく教えてもらったのだから、せめて募集要項を取りに行こうと思いなおしました。

電車に乗って最寄り駅で降りて、エスカレーターに乗ったら、後ろからサラリーマンらしき人が話しているのが聞こえてきました。
「あー、キャリコン。俺も受けようかと思ってるんだよ。でもさ、役に立つのかな」
振り返ってキャリコンについて語ろうかと思いましたが、エスカレーターが終わるところだったので振り返るのをやめました。
駅を出て雑踏の中をしばらく歩いたのですが、反対方向に歩いていることに気がついて。

そこで目が覚めました。

ぼんやりと天井を眺めながら、私は長いこと夢のなかの自分の心もちを反芻しました。
キャリア支援の場面で、私はいつも、応募しようかやめようか迷っているクライアントがいると、
「とりあえず受けてみましょうよ」
と提案してきました。たとえ結果が伴わなかったとしても、行動しないよりするほうが、チャンスを拾いやすいから、と。
でも。
たとえ夢の中であれ実際に自分がそういう立場になってみると、その願いが真剣であればあるほど、「ダメモト」という気持ちにはなれないことを知りました。
そして、過去に憧れた世界は、もう自分のアイデンティティから離れたところにあることにも気づきました。

うつろう時とともに、心も変化していく。
そうして自分は、ここでこうして生きることを決めたのだ、と。

あらためて思った朝でした。

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