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Y|ヤマモモ(楊梅)【限りなく無味に近い甘味】 |野草の世界で学ぶ、持続可能な食と生活のAtoZ

Yamamomo
ブナ目ヤマモモ科ヤマモモ属

 ヤマモモは二年に一度、夏が始まる頃にガーネットのような実をボロボロと落とします。
 このような植物を隔年結果といい、豊作と凶作を繰り返すという特徴があるそうで。

 ヤマモモのハイシーズン、地面はさしずめ王族の宝物庫です。ビューティフル、マーヴェラス。
 昔話によく出てくる海賊船の金銀財宝や、王族の宝物殿にも、ヤマモモみたいな宝石がゴロゴロあるに違いありません。

 しかしながらヤマモモ、これがなかなかに物理的な危険を伴う自然界の罠なのです。
 豊作年は「実を踏んづけて転倒した」という被害報告が取り沙汰されます。ヤマモモ・トラップは大量の実が広範囲にばらまかれることに加えて、軟質な果肉と硬質な種のコンビネーションという特性により、靴底の滑りがハンパないのです。

 サラリーマン時代、会社に立派なヤマモモの木があり、豊作の年に実を拾っていました。
 他にもむかごやヤマボウシなどが採取でき、自然豊かな環境……というか、僻地。
 年々コンプライアンス管理が厳しくなっても、野草についてはついぞ業務上横領で咎められることはなかったため、従業員のハンター活動を容認していたのだと推察します。
 強いて苦い思い出をあげるなら、いつの間にか「あいつはキノコを採って食べている」という根も葉もない噂が立っていたことでしょうか。
 キノコは素人には難しいから、絶対にそんなことしないのに。

 さてこのヤマモモ、果実酒とすべくホワイトリカーに漬け込み、フレーバーを楽しむのが王道。
 蠱惑的な赤い色は、アルコールの中でたゆたう姿がよく似合います。

 生食ができないわけではないが、おすすめはしません。
 見た目の美しさで期待を煽り、肝心なところで裏切るタイプなのです。外見の印象ほど、おいしさに実力がない。
 150km/h・ストレート、野生の薄味です。

 家族は皆、口にした途端に吐き出しました。
 ベッチョリとして無味よりな果肉は、ヘビイチゴに通じるものがあります。
 強いて言うなら、ヤマモモのほうがマシですが。ヘビイチゴよりも、ヤマモモのほうが若干の甘さがあります。

 ヘビイチゴの味は、ハンター界隈でも悪評がすこぶる高いですね。
 どうしても食べたいという人がいるならば、止めませんが……。毒性はないとだけ、述べさせていただきます。

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