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大学で勉強する時のワザ その4

注:この文章の経緯についてはその0をごらんください。その3の続きです。

読む力,読み続ける力

突然ですが,文章を読むのは好きですか? noteに参加されている皆さんは読むことも,ひょっとしたら書くことも好きで,活字が苦にならないタイプの方々だと思います。でも,大学にくる学生には時に文章をあまり読まない人,読みたがらない人がいます。昔からそんなものかもしれませんが,私が大学で教えるようになってとても気になったことがこの点です。「書いてあるから,読んでください」と渡したものを読んでない人がとても多い……書いてあることをもう一度口頭で説明しないと伝わらない……日本語が通じないというわけではなく,ただ読む作業をめんどくさがっているという感じですね。こちらとしては親切のつもりで説明の内容を全部文書化しているのに,一切読んでもらえてなかったと知った時はちょっと凹みましたが,「全部読むのはたるい」と言われてそんなものかもな,とも思いました。この傾向は,家電の取扱説明書がどんどん薄くなって「動画」に置き換わっていたりとか,地方自治体のHPに出てくる案内が文書だけじゃなくてチャットボットになっていたりすることと同じものだと思います。全体としては,読むの嫌いな人,増えているのではないでしょうか。

文章を読んで,特に知らないことについての文章を読んで新たな知識を得るという作業は技術と体力が要求される,疲れる作業です。ですが大学で学ぶ上で,読んで情報を得ることは非常に多いので必須の作業と言えます。読む体力は読むことでしかつかない(のではないかと思う)ので,ここでは私が思う「読む技術」,特に説明文,論説文などの情報を得るために何かを読むときの技術についてお伝えしたいと思います。

読む前の下準備

ここでは,何か情報を得るための文章を読むことを想定していますから,「情報を効率よく得る」方法を考えたいと思います。効率というのは
 得た情報量/時間 ですから,少ない時間で多くの情報を得られれば効率が上がったということになります。時間を少なくするには,読む分量を減らす,つまり,余計なところを読まないようにするのが効果的です。多くの情報を得るには,読む側が準備する,身構えておくのが大事です。物語でなければネタバレ上等,先にどんな話が来るのか分かっている状態で読んだほうが多くを得られます。具体的には,いきなり文章を読む前に次のようなことを確認します。

  • 何が知りたくて読むのか(読む目的)

  • 全部読む必要があるか,それとも必要な部分だけ読めば良いのか

  • 誰が,いつ書いた文章か

  • タイトルがあればタイトル,目次があれば目次,前書きがあれば前書き

これらの情報をもとに,次にどんな話が来るのかを予測して,得た情報を整理しながら自分の知っていることの間に挟み込むイメージで読んでいきます。

実際に読むときには

情報量が多い文書の場合は全部読もうとせず,なるべく必要な部分をつまみ出して読みます。辞書を頭から全部読む人はいないですよね。同じです。知らないこと,知らない単語がたくさん出てくる文書で,かつ今それを読まないとダメ,と分かっている場合は「2度読み」をします。1回目は,どこに何が書いてあるかを知るためにざっと通して読みます。マップを探索するだけなので戦ってはダメです。辞書を引いたりググったりもしません。何もわからなくても最後まで読み通し,どのくらい難しそうなのかがわかれば良いです。2回目に内容について深掘りしていきます。この段階では知っている言葉と知らない言葉を選別していきます。知らない言葉は文中の説明で理解できれば良いですが,最後まで読んでもわからなかった言葉は後でまとめて定義を調べます。特に「事実」と「筆者が主張していること」の区別に気をつけながら読むと良いです。

あと,講義を聴く時とおなじで,必ずしも内容を100%理解しながら読み進める必要はありません。わからないとなかなか先に進めない人もいますが,「わからないことが見つかった」で十分成果なので,先に進んでみましょう。筆者も完璧ではないので説明の順番が常に最善とは限りません。先の内容を見たら疑問が解決した,ということもよくあります。

読むものを選ぶ

情報を取るための文書を読む時に,「自分の知っていること」と,「筆者の想定する読者が知っていること」のレベルがあっていないと,効率よく情報を得るのは難しいです。大学の教科書を読む時は,前書きに大体想定する読者が書いてあるのでそれを参考に読み時を判断すると良いと思います。もし,辞書を引かないとわからない言葉がたくさんあるのなら,それは今読むにはちょっと難しすぎる文書なのかもしれません。もう一段易しい本に戻って予備知識をつけてから読む方が理解が早いこともあります。

筆者との相性は大事です。同じ難易度の本でも,説明がすんなり入るものと入らないものがあります。誰が書いたかをチェックして,「この人の説明はわかりやすい」「わかりにくい」というのを意識していると,効率よく情報が集められるようになります。

読みたい気持ち

読みたい,知りたいという気持ちはすごく大事なエネルギーです。難しい本でも読みたい気持ちが強いなら,いっぱい調べながら,時には人に質問したりしながら読めばいいです。そうすることで知識と読む力,読み続ける体力,根性がついてきます。この「読み続ける体力」というのが,結構大事でそしてなかなかつきにくいものと感じます。難しいけど読みたい,知りたいと思う本に出会ったら,その出会いはとても貴重なので活かして欲しいですね。

次回は情報を集める方法について考えたいと思います。

#大学
#初年次教育
#読む技術

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