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高速バスの夜、エモいに浸る

高速バスがすきだ。
とりわけ、夜間の、いわゆる"ヤコバ"がすきだ。

交通費が格段に抑えられるヤコバには、旅行や趣味のための遠征などで学生の頃から大変お世話になっている。しかし、わたしがヤコバを好むのは、何も低料金という理由だけではない。

夜行バスというものは、実に"エモい"。

流行言葉に疎い青村だが、夜行バスを表現するのに"エモい"がしっくりくる。それ以上にハマる形容が、わたしには見つけられない。

バスタ新宿、ヨドバシ梅田タワー前。
眠らぬ街の明るさ、行き交う人の波を進む。
わくわくを抱えながら、ひとり、いくつものバスや人を見送る。

閑散とした、見慣れぬ土地の暗がり。
バス停の標識だけが立った道路端の集合場所。
夜の心地よい風を浴びながら、その地で過ごした短い時に思いを馳せる。

空席ばかりの車内、窮屈な座席。
車のエンジンに揺られながら、去る街を眺めては愛おしむ。

消灯、カーテンから垣間見える眩しい外の光。
あっという間に流れていく景色を見つめているうちに、ふわふわと浅いねむりにつくのがお気に入り。

目的地は決まっているけれど、寝返りのたびにうっすら目を開けて、どこに辿り着くのだろうと寝ぼけまなこがぼんやり思う。

穏やかなねむりを邪魔するような、到着を知らせる運転手のアナウンスがわたしを目覚めさせる。

いつのまにか外が淡い朝になっていて、もう少しねむっていたかったとあくびをして、凝り固まった身体を労わりながら帰路につく。

そういう、ひとつひとつを詩にしたくなるような、絵に描きたくなるような、とっておきの夜の雰囲気がとてもすきだ。

昼の高速バスにはないセンチメンタルが、夜の高速バスにはいっぱい詰まっている。

これが、こまめのセンチメンタルジャーニー!

( 気兼ねなく出掛けられる日を願って )

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