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我が家にいた、小さいおじさん

10年くらい前の話。

当時私たち夫婦は結婚したばかりでまだまだいろいろなことがお互いに新鮮で弾んだ毎日を過ごしていた(…と思う。)

独身時代の私はワーキングプア(もう聞かなくなってきた言葉だけれど…)で、貧乏だったけれど、自由な時間を好きに過ごしていた。
のに、結婚して生活は激変、、、。
勤務も不規則で帰りが遅い夫と暮らす内に、私は毎日栄養ドリンクを職場の給湯室で飲む習慣を身につけてしまい、体重は増すばかりだった。

ただ今度は貧乏だった自分には考えられない高速道路を使うこととコンビニに気軽に立ち寄ることのハードルが下がった。

所得が二倍になったわけではなかったのだけれど、長年多忙で長時間勤務で生きてきた夫の影響か「時間をお金で買う」という考え方も時には必要なんだと思うようになっていった。

ラッキーだったのは、夫の帰りが遅くて夕飯を遅くに一緒に食べていたので(だから体重の増加は凄かったけれど…)慣れない料理を時間に追われずに作れていたことは、私の性格に合っていた。

仕事から帰って一休みしてから作り始めても余裕だったし、なんなら失敗してもリカバリーできる時間も持てた。料理の失敗談もたくさん書きたくなってきたけれど、、今日話したいのは「小さいおじさん」。

新婚生活も半年も過ぎた頃、私たちは古い一軒家に引越しをした。
そこで私たちは小さいおじさんと住むことになるのだけれど…
これから話のメインに入っていきたいけれど

〜ちょっと家事休憩〜

ちなみに大したことないオチです。

夫は子どもの時から家事をしてきていて、母親におんぶに抱っこで大きくなった私より、家事を自然にこなしていた。

なので、自分の方が家事スキルが高いと自負していた彼と小さい細々としたことで意見が割れると彼は自分のやり方に合わせてくれるよう求めることも多かった。

物の場所、置き方、家事の手順、、、
お互いにこだわり所と無頓着な所が一致しないから衝突。
でも指導されているかのように感じ始めた私はだんだんと夫が姑のように見えたりして、ボヤキたくなることが増えていた。(てかボヤいていた)

ついに私は夫にレッテルを貼ってしまい、
何を言われても「また始まった」と受けつけなくなっていった。

そんな生活が続いていたころ、小さいおじさんがひょいっと来てくれた。
どこから来てくれたかはわからないけど、おじさんは和室の天袋にいた。

正確に言うと小さいおじさんという存在を生み出したのが夫なのか私なのかが記憶にないのだ。

私たち夫婦は痴話喧嘩になってどちらかが都合が悪くなると

「それは小さいおじさんがやったから自分は知らない」
と言うようになった。

「またここに置いて」
「それは小さいおじさんがしたから知らない」

「ポテトチップス1人で食べたやろ!」
「小さいおじさんやわ」

小さいおじさんは私の味方にも夫の味方にもなってくれ、罪ばかり被せられた。
とりあえず何でもかんでも小さいおじさんに出てきてもらえば、私たちはお互い気が済むようになっていった。

そして新しい習慣も増えていく。
金曜の夜は2人で飲みながら好きなテレビを見ていろんなことを語った。
仕事での出来事。
最近気になっていること。
社会問題。有名人の悪口(失礼)。

土日の朝は夫が紅茶を入れてくれる。

平日朝の緑茶。



これも夫。

夫は私の作った料理を残したことは未だに一度もない。
料理が好きな夫は料理を作る大変さもよくわかっていて、献立を一緒に考えてくれたり、買い物も完璧だ。
私は冗談でCOOPヒロシと呼んだ。
(すみませんヒロシは本名ではありません)

ラブラブなはずの新婚生活。だったと思うが
あの頃、私が仕事帰りに車を運転しながら号泣していたことがあったことを、夫には今も話していない。

でも小さいおじさんが私たちの元に来てくれてから、車で号泣することはなくなっていった。

覚えてることも忘れてることもあるけれど、いろいろがあり、車にはチャイルドシートが付いて、車で泣くこともある愛する存在が我が家にやってきた。

金曜夜に語り合う時間はできない時が増え、寂しさを感じる時もあったけど、夫は変わらずずっと紅茶と緑茶をいれてくれている。

家の中はより賑やかになり、気づいたら小さいおじさんは出てこなくなって、、

私たちはまた引っ越した。

そして、引っ越しを重ね、、

今朝、夫との会話で、ふいに私から出てきた「小さいおじさん」という言葉に夫は
「えっ?」となり、

おじさんのことを忘れてしまっていたようだ。

しょうがないよなという自分の寂しい思いを彼の忘れっぽさが今まで自分を何度も救ってくれたという感謝で相殺することにした。

でもやっぱりできればまた小さいおじさんに会いたい。
その時は
「今なんて言ったん?」
とか
「あれよあれ」
と2人で話せていたりしているだろうか…





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