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アジア紀行~ベトナム・ホーチミン③~

怪しげなツアーの始まり

さて今回は、「アジア紀行~ベトナム・ホーチミン②~」の続きです。
「ぼったくらないバイクタクシーのニャンさん」が提案した「メコンデルタ・ツアー」の顛末です。

ニャンさんのバイクタクシーで、ホーチミン市内を巡った日の午後、当初の予定では、ツーリストの「シンカフェ」で、メコンデルタ・ツアーを申し込もうと考えていた私。
そんなとき、ニャンさんから、午後からミトーへのメコンデルタ・ツアーをしないかと提案してきた。今から思えば、それはニャンさんのおきまりのストーリーだったはずだが、私には不思議な偶然のように思えた。
中国人街のチョロン地区からシンカフェまで出かけていくのも面倒だし、団体ツアーではなく、個人でメコンデルタを船で行くのもおもしろそうだ。気になるのは、この個人ツアーの値段だが、ニャンさんは80ドルだと言った。
ウ~ン、これはベトナムでは高い。このときの円・ドルのレートは、1ドルが約120円。ほぼ1万円のツアーになる。シンカフェのメコンデルタ・ツアーの参加費は一人10ドルだから、やはりかなり高い。「ぼったくらないバイクタクシーのニャンさん」に、ぼったくられるのかもしれない。
ニャンさんからは、「どうする?」と決定を迫られる。迷うところだが、ふと「乗りかかった船」という言葉が思い浮かんだ。
メコンデルタを、文字通りニャンさんがチャーターした船に乗って探検する。そんなイメージが浮かんで、「オーケー」と答えた。


メコンデルタ

ここで少し「メコンデルタ」について述べておこう。
ベトナムは日本と同じように南北に細長い国で、その最南部がメコンデルタ地帯である。

この領域はメコン川とその支流、またそれを結ぶ水路が、網の目のように複雑に広がっている。メコン川はチベット高原に源流を発し、中国の雲南省を通り、ミャンマー・ラオス国境、タイ・ラオス国境を通り、カンボジア、ベトナムをおよそ4200 kmにわたって流れ、最後に南シナ海に注ぎ込む、長大な河川である。
今でこそ、メコンデルタ・ツアーやメコン川クルーズの情報は、インターネットでいくらでも手に入れることができるが、私が行った頃は、まだわずかな情報しかなかった。
〈ツーリストの「シンカフェ」で申し込む。日帰りと1泊2日のツアーがある。あとは行けば何とかなる。〉
正直なところ、そんな気楽な気持ちだった。
ホーチミンからのメコンデルタ・ツアーは、ミトーまたはカントーという町が拠点になる。今回はミトーから船に乗ることになった。


チャールズ・ブロンソンの車でぶっとばす

メコンデルタに行くと決まったので、ニャンさんがその手配を始める。
ニャンさんのバイクで行くのかと思ったが、ホーチミンからミトー(Mỹ Tho)までは80kmほどもあり、車でないと無理だそうだ。
昼の12時、ファングーラオ通りの近くにあるニャンさんのお姉さんの店で、ベトナム・コーヒーを飲む。「カフェ・スア・ダー」だ。スアはミルク(練乳)、ダーは氷。ミルクを入れた甘いコーヒーで、氷がいっぱい入っている。飲み終わると、ポットのお茶を上から注いで、もう一度飲む。
ところで、今朝ニャンさんは、お姉さんが日本人と結婚して奈良に住んでいると言っていたはずだが、これは別のお姉さんなんだろうか? めんどうだから聞かないことにする。

しばらく待っていると、チャールズ・ブロンソンに似たひげ面の男性がやって来た。ニャンさんの友人だという。彼の車でミトーまで行くことになった。国道1号線(AH1)をぶっ飛ばす。車は韓国製で、走行距離はすでに11万kmを超えていた。前を走る車をどんどん追い越し、反対車線も気にかけず、ひたすらぶっ飛ばす。後部座席でよかった。助手席にはニャンさんが乗っている。
命が縮まる思いの1時間半が過ぎた頃、ミトーに到着。
チャールズ・ブロンソン氏は、このミトーに彼女がいるという。彼は既婚者なんだが・・・。
ここでも喫茶店で「オレンジミルクジュース」という変なものを飲みながら、船の手配を待つ。

メコンデルタ・ミステリー・ツアー

時計を見ると、午後1時45分。手配された船に乗り込む。一人で行くのかと思ったら、ニャンさんとブロンソン氏も船に乗り込んだ。船は我々3人を乗せて、ミルクティーのような色をしたメコンデルタの川へと進み出た。
外海まではまだ80kmも離れているそうだが、この辺りには4つの島があるという。川沿いにある小さな工場では、この泥のような水から氷を作っているらしい。さっき飲んだジュースの氷もこの川の水?
船首に目玉模様が描かれた船を見かける。

やがて船は幅5mほどの狭い支流に入る。支流というより水路といったほうが適当かもしれない。川の両側には水椰子が茂り、ジャングルに入り込んだような感じがする。水椰子の葉は、家の屋根を葺く材料になるそうだ。

まず初めに、ベンチュア島という名の島に上陸する。歩いて、ヤシの実を原料にした飴を作っている所へ向かう。これは定番のコースのようだ。
小さな飴工場では、鉄の大鍋で緑色のドロドロした液体を煮ていた。これを冷やして、形を整えて小さく切り、紙に包んで製品にするのだ。

できあがったヤシ飴を一袋買った。値段は15,000ドン。日本円で120円くらいだ。
やって来た道を戻り、もう一度船に乗る。ツアーのパンフレットも何もないので、どこへ向かうのかわからない。すべておまかせのミステリー・ツアーである。

このあと、我々は怪しげな島に上陸することになる・・・。

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