アジア紀行~ミャンマー・ヤンゴン⑦~
「ヤンゴン」という名前
「ヤンゴン」と書いた瞬間、「ラングーン」という名前を思い出した。まだ学校に通っていた頃は、確か「ビルマの首都はラングーン」と習ったはずだ。「ラングーン」は大空に羽ばたくようなイメージで、いい名前だと思っていた。
この地は、かつては「ダゴン」(シュエダゴン・パゴダの「ダゴン」も同じ)と呼ばれた小さな漁村だったが、18世紀に「ヤンゴン」と改名された。19世紀になってイギリスが進出し、植民地化した時に「ラングーン」と改称された。この呼称は100年以上続き、第2次大戦後に独立したのちも用いられていたが、1989年に当時の軍事政権によって、「ヤンゴン」に戻された。これは「ビルマ」が「ミャンマー」と改称されたのと同じ時期である。
ヤンゴン・インド人街
ミャンマーは多民族国家である。ミャンマー国内に住む民族の数は、なんと135に及ぶという。このうち人口が多い主要民族が8つあり、 特にビルマ族が全人口の約 70% を占 めると言われている。
第2次大戦前までは、ビルマ族の人口はまだ全体の3分の1ほどで、ヤンゴンの人口の約55%は、インド人あるいは南アジア人だったそうだ。そのせいか、現在でも多くのインド人がヤンゴン市内で暮らしていて、スーレー・パゴダ周辺からその東の街区にかけてインド人街を形成している。
この附近はほとんど素通りしただけなので、ディープな場所には行けなかったが、道端にターメリックなどのスパイスを使った黄色いチキンが並べられていたりする。
ヤンゴン・中国人街
いわゆる中華街、チャイナタウンである。こちらはスーレー・パゴダの西側のかなり広い区域をさしている。
中華街の中心近くに中国寺院があった。「観音古廟」と書かれている。
ここは広東省出身の華僑たちによって建てられたヤンゴン最古の中国寺院で、創建は1823年だが、創建当初の建物は火事により焼失してしまっている。現在の建物は1868年に完成したものだという。
寺院の前に置かれていた金色の獅子。目が左右に飛び出していて剽軽だ。
中国人街は食べ物が豊富である。果物・野菜から肉・魚その他、とてもカラフルだ。
店先にいた2人の少年がカメラに入ってくれた。1枚目はとても真面目顔だったが、この後すぐに笑いだした。後ろに並べられているのは果物の王様ドリアンだ。そして果物の女王マンゴスティン。黄色いバナナも、赤くて大きなスイカも美味しそう。
野菜も日本の店に並ぶものよりずっと新鮮に見える。一つ一つのサイズも大きい。
海が近いから海鮮類も豊富だ。魚はその場で焼いてくれる。
魚、カニ、エビ、そして鶏・・・
きれいに毛をむしった裸のニワトリが並ぶ。旧式の秤がおもしろい。
続いて昆虫食。これはコオロギだ。アジアの国は、古くから昆虫を食用にしている。
「食べてみない?」と差し出されたけれど、遠慮した。
おかず屋さんもある。買った人は、ビニール袋に入れてもらって持ち帰る。
ここでは子どもが店番?
これは何? 日本では見かけない食べ物。小さな目玉焼きみたいだけど・・・。
真ん中に入っているのは鶉卵。
作り方は日本のたこ焼き風だけど、けっこう油を使っている。お菓子感覚で食べられそうだ。
上半身裸のおじさん。日本でも昔は見かけたけど・・・。
車が増えて、狭い通りがさらに狭くなる。古いアパートメントがまだまだ残っている。
「チェイオー」って、どんな麺?
結局、ヤンゴン中央駅からホテルまでずっと歩いて帰ってきた。雨が止んでよかったが、ちょっとくたびれた。
中国人街で食べ物をいっぱい見たせいか、またお腹がすいてきた。
昨夜行った店「feel」もいいけれど、せっかくだから別の店にしよう。「feel」のすぐ近くに「YKKO」というきれいな店があったので入ってみた。メニューも写真入りで美しい。
この店いちばんのメニューは「kyay-oh」(チェイオー)という麺らしいので、それを注文する。どんな麺が出てくるか、楽しみだ。
しばらく待たされてやって来たのはこんな麺だった。
透明のスープにビーフン麺。たっぷりの具は、なんと豚の内臓だった!
緑色はホウレン草かな。ほかに肉団子とウズラ卵が入っている。
スープは塩味だが、味がうすすぎる。
それよりなにより、実は内臓(モツ)というのが苦手なのだ!
先入観があったせいかもしれないが、まったく美味しいとは思えなかった。アジアの麺は好きなので、たいていの麺は美味しいと思うのに・・・。
結局、半分以上残してしまう。
値段は、4,000チャットに、サービス料と税金まで追加された。
あ~、お昼に食べた800チャットのシャン麵が懐かしい。
スーパーマーケットに寄って、ミャンマービールとえびせんスナックを買ってホテルに戻る。
インターネットで「Kyay oh」を調べると、次のように書いてあった。
Kyay oh is a popular noodle soup made with pork and egg in Burmese cuisine. The pork version, the most popular, uses pork bones and intestine.
あの麺、ビルマの麺料理ではポピュラーだって。ポーク・バージョンは、骨と腸を使用する・・・。知らなかったなあ。
えびせんで飲むミャンマービールがほろ苦かった。
湿った空気に包まれたヤンゴンの夜が更けていく。