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狛犬歌留多 Vol.4

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狛犬をめぐる冒険。う〜て編。
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#狛犬

万葉の美女 手児奈(てこな)霊神堂

水面に浮かぶこの世ならざる美女。ジョン・エヴァレット・ミレーをはじめ多くの画家が題材としたオフィーリア。ハムレットの恋人であるが悲劇に見舞われ入水してしまう。 美人薄命というけれど、ヴィーナスや人魚姫をはじめ水と乙女のイメージは人々の心をとらえ続けてきた。ここ日本には「真間の手児奈」の物語。万葉集に謳われ、雨月物語や江戸名所図会にも伝えられている。 その昔、真間(現在の千葉県の市川市)にとても美しい乙女がいた。貧しいため青い襟の麻の衣をまとい、髪もとかず素足であった。けれ

チルな旅 禅の里永平寺

夜更しが止まらない。ポテトチップスをお供にワールドカップの熱狂、SPY &FAMILYの一気見、いかんいかんと思いながら目を上げればカーテンの外が白んでいる。奇妙な高揚感と気怠さと後悔。 冬が来る前に遠出した。かねてから行きたかった場所。曹洞宗の大本山、永平寺。英語のガイドブックではずばり「Eternal Peace」。韓流グループや化粧品の名前みたいで落ち着かない。 それはさておき、北の果ての東尋坊の切り立った岩と、深い青色の海と、ひっそりと山奥深く千年の時を刻む古刹。

聖地巡礼 「天気の子」  高円寺氷川神社

アニメ映画「天気の子」のヒロイン陽菜は祈りで天気を晴れに変える天気の巫女。梅雨の季節に訪れたいのは日本唯一の気象神社。高円寺氷川神社。高円寺駅から徒歩1分の場所にある。素戔嗚尊と八つの天候(『晴』『曇』『雨』『雪』『雷』『風』『霜』『霧』)を司どる八意思兼命(やごころおもいかねのかみ)を祀っている。 戦時中は陸軍気象部の基地内で軍事目的で祀られていたが、今は商店街のほど近くに遷り、運動会やお祭りの晴れを願う人で賑わう。 神社を守るのは、少しはなれ目の狛犬。日向ぼっこを楽しん

昭和の記憶 フナバシストーリー/船橋大神宮

ヨーロッパのニュースを見る。200年前のワーテルローの戦いを祭りとして今なお再現する土地柄だが、今日はWWIIでHirohitoが降伏を認め正式に書簡にサインが行われた日。他国から見た日本の横顔。角度を変えれば、よく知っているはずの場所やものごとが全く知らないものになる。 失礼な話だか、船橋は最初何もないところだと思っていた。ショッピングモールと競馬場、高圧線鉄塔。まったく興味が持てなかったが、千の葉芸術祭という催しで北井一夫という写真家を知った。過激派や東北の農村などその

途中下車のすゝめ 検見川神社

雨上がりの秋の日。千葉市の美術館を訪れた帰りだった。総武線の車窓からこんもりした森を見かけた。神社には古く大きな木があることが多い。これを逆手にマンションやビルがひしめく中に林があれば、高確率で神社だ。新検見川駅で下車して歩くこと6分。果たして検見川神社があった。 平安時代に疫病を鎮めるために建てられたそう。門前の狛犬。鳥のフンもついておらず、毛並みが良い。土地の人に可愛がられているのだろう。 茶店ににんまり。午前10時から午後3時なら玉こんにゃくをいただける。 途中下

森林浴の真鶴さんぽ 貴船神社と山神社

まなづる。おはぎのような半円の相模湾。その左端にある小さな半島の名だ。歌人与謝野晶子や佐佐木信綱が訪れ、志賀直哉や川上弘美の作品の舞台でもある気になる場所。 この真鶴半島は、江戸城の石垣や天皇の御陵に用いられている高級安山岩、小松石の産地。また豊かな森は知る人ぞ知る景勝地だ。「おはやし」といって江戸幕府による植林と皇室の手厚い保護により、クスノキやスダジイの巨木、南国のようにシダや蘇鉄が生い茂る。雨上がりのためか緑が濃く、馥郁とした土と潮の香りがたちこめている。 林を抜け

尾山神社

繁華街近くの大通りから、一見神社か分からない風の尾山神社の洋風な門が見える。金沢の街のお洒落な雰囲気が出ていて、好きな風景だ。 休日も朝は早い時間に起きてしまうが、頭脳の起動が追い付かない。スタバの注文も覚束ない。早番のしっかりした店員さんに助けられながら暖かい朝食を注文し、美味しく頂く。 尾山神社の狛犬はスラリとしたモダンなたたずまいである。朝の散歩に出かけたら、通りに人はまだ少なかったけれど、境内にはすでに参拝客が集まりだしている。 早起きしてお花見(立ち見)を静か

狛犬ハーレム 上野東照宮

薪能を見送った。気温が20度を切り寒いからだ。とはいえ、じっとしてられない。 東京国立博物館 東洋館。北京出身のモヒカン狛犬がお出迎え。18世紀の清朝のものだが、1960年代感。エルヴィス・プレスリーやハーレーが似合う。ちょっとワニっぽい。うろこ模様はきっとタトゥー。 カンボジアの狛犬。不完全な造作で、細部は失われ、朽ちかけた砂岩の狛犬。今までみてきた中で一番不気味だ。いくら犬好きでもこれはいただけない。ぶさかわの範疇を超えている。こだわりだと言われる歯の透かし彫りに、虚