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2024/3/2 駒ヶ根市単独セミナー「いま、地方で働くということ」開催ルポ

 2024年3月2日(土)東京有楽町のふるさと回帰支援センターにて駒ヶ根市の移住セミナーが開催されました。
 今回のセミナーのタイトルは「いま、地方で働くということ」。移住をするにあたって必要となる仕事(求人情報)を中心に説明会&座談会を行いました。
 当日は駒ヶ根市という自然環境を活かしたものづくりをされている養命酒製造株式会社から人事担当の多田さん、南信州ビール株式会社から常務の竹平さんをお招きし、現在取り組まれている事業や求人情報の説明を行っていただきました。
 また駒ヶ根市からは信州駒ヶ根暮らし推進協議会 副会長の宮脇さんが駒ヶ根の暮らしを、駒ヶ根市の移住担当の松崎さん、桑原さんからは現在の求人情報や住まい探しの情報を、そして、地域おこし協力隊の須田さんには実際に都心部から駒ヶ根へ移住したご自身の体験を踏まえた話を座談会を中心にお話していただきました。
 昨年のセミナー開催から引き続き今回もよりみち出版の前田と室根がこのセミナーの企画、運営にあたりました。
 当日の参加者は約15名、30代から50代と幅広い年代の方々にご参加いただき、座談会ではそれぞれの移住に対する心配事、率直な質問など頂き、交流が生まれました。

観光エリア、市街地、農村地域と大きく3つにわかれる駒ヶ根市

 田舎で働くにあたって避けて通れないのは収入の話。今回のセミナーのスタート地点でもあったように思います。
 田舎に移住してくる人にとって、それまでの都心部での収入と同等の収入を獲得しようと思うとなかなか難しいのが正直なところです。現在、地域おこし協力隊として活動し、移住者の方と接する機会の多い須田さんの体感的には地方は都会と比べて2、3割減のイメージがあるようです。
 自営業の僕は駒ヶ根市で店をやっていますが、その肌感覚でもやはり都会と同じような感覚で働いていてもなかなか同じだけの収入を得るのは難しい実感はあります。
 ただ、トータルとして収入は落ちるけれど、そのほかのメリットはどんなことがあるのだろう?実際、移住したらこんなこともあったという話が座談会の話題の中心にありました。その中からいくつか感想をお届けます。


田舎に移住したときの(収入以外の)メリット

①家賃は安い

 家賃は安い。これは都心部と比べたら端的に。賃貸アパートで言えば、2DKくらいのサイズ感で月3、4万円くらいのアパートからあります。5、6万円まで出すとアパートでもそこそこの広さがありますし、戸建ての賃貸も出てくる価格帯です。そういう広めの物件をDIYしたり、庭付きであれば家庭菜園や趣味のガーデニングを楽しむ方もいます。
 また都会では別途支払うことになりがちな車の駐車場代もほとんど家賃に含まれているので、無料で自動車1台〜2台分が付いてきたりします。2台分あると来客用の駐車場として使えるので助かりますね。

②野菜が新鮮で安い(もらえる)

 駒ヶ根市に住んでいるといっても買い物は市内だけということはなく、車で30分くらいはふだんの買い物で移動します。そうするとスーパーだけでなく、道の駅や出荷場に併設された販売所、マルシェなどのイベントなど、新鮮な野菜を都心部よりも安い価格で購入する場所はたくさんあります。
 それと意外とこれも大きいのですが、田舎に住んでそれなりにひとのつながりができてくると野菜はもらえるということがあります。「つくりすぎちゃったもんで…」「出荷できなかったやつが余ってるから」という理由で、そのときの旬の野菜をおすそわけしてもらえます。そんなときはちょっと県外へ出張することがあったらお土産を買ってきていつものお返しに農家さんへ配ると喜ばれます。そんな気を遣いすぎず、かといって離れすぎない、互いができる範囲で互いのことを気にかけている。そんなお互い様っすの精神が心地良くなってくると田舎暮らしも馴染んできたといえるのかもしれません。

③ちょっとした出費がなくなる

 個人差があることではありますが、僕個人の体験としては都会から田舎へ移って生活のスタイルが変わったことの1番がこれかもしれません。
 例えば、都心部で働いていたときは仕事の打ち合わせなどの後に「ちょっとそこでコーヒー飲んでいかない?」と言って、決まって商談の後にお茶をするルーチンがありました。
 あとは仕事が忙しくなってストレスが溜まってきたと思うと、気分転換に行ったことのないカフェや飲食店へ行き、ストレス発散をしているようなところがありました。僕だけでなく、まわりの働く友人知人たちも同様に自分のストレス発散スポットやルーチンを持っていて、その度にちょこちょこ出費がかさんでいました。
 一方で、田舎だと(まぁ、都会ほどカフェがないということもありますが)自宅でお茶を淹れた水筒を持って、車を5分、10分走らせれば豊かな自然があり、川に腰掛けて山からの風に吹かれながらぼーっとしたり、雪が積もった千畳敷や秋は紅葉を眺めたりしているだけで十分にリフレッシュできてしまいます。仕事からの帰り道、車を運転していると夕陽がさしてピンク色になった南アルプスがきれいだったり、星空が澄んでいるとそれだけでなにか得した気分になります。そういう無料の息抜きコンテンツが田舎にはたくさんあって、みなさん、自分だけの絶景ポイントをもっていたりします。

④通勤時の満員電車がない

 朝の通勤ラッシュのストレスから解放かれたという移住者の方の話もたびたび聞きます。朝のあの憂鬱な時間帯がないだけで1日のはじまりがなんと清々しいことかと。根っからの田舎暮らしの人たちからするとあまりピンとこないことですが、一度都心部へ出てからUターンしてきた人たちは「もうあの生活はできない」と苦笑される方も少なくないです。
 あと駒ヶ根市在住で職場も駒ヶ根市という方は職場から自宅までが近いために、お昼に家に戻って食べるひとたちも多く、その分食費が安くなったという方もいます。
 でも、それは裏を返すと外食文化が都会ほどないので飲食店経営は厳しい…という側面もあるのだと思います。
 それでもカフェとゲストハウスを運営したり、カフェ+副業で何かをしていたりと、この土地の特性に合わせてユニークな働き方が生まれているのも地方ならではの興味深いところです。そこに可能性や面白さを見出す人たちが増えたら、街のひとの流れや活気も変わってくるのかなと思います。

実際、田舎に移住してわかったこと

①意外と水光熱費(ガソリン代含む)が高い

 やはりここ1年くらいはガソリン代の高騰の影響は受けています。もともと内陸部なので輸送コストがかかるためガソリン代は近隣の県に比べると高いです。かといって車は田舎での生活の必需品でもあるのでなかなか節約も難しいところです。
 みなさん、特売日やポイントキャンペーンなどうまく利用しながら少しでも安いガソリンスタンドを見つけては利用しています。

②雪かきがある、紫外線が強い

 豊かな自然環境という言葉の表裏一体で厳しい自然環境もあります。近年こそがっつりと雪が降って雪かきをしなければならない回数は減りましたが(住む場所にもよりますが年、2、3回くらいでしょうか)それでも雪が降れば雪かきは必要で、出勤する前に雪かき、出勤しても午前中は職場の雪かき、ということもあります。
 移住1年目あたりは雪かきも楽しくても、2年目あたりからもう雪かきはお腹いっぱい…と思う人も少なくないです。(でも、雪が積もった朝に目覚めた子どもの目の輝きぶりを見ると、雪もいいなと思うんですけど)
 あと標高が高いせいもあり紫外線は強いので肌のケアが必要という話も聞きます。乾燥もしやすい地域なので、コンビニで売られている無印良品の化粧水も「さっぱり」タイプよりも「しっとり」タイプが売り切れている率が高いのはそのせいかもしれません。(個人調べ)
 このあたりは移住体験住宅を利用していただき、しばらく駒ヶ根の生活を体験してみることで実感が得られることがあると思います。

③従業員が少人数の企業ではオールマイティに働くことになる。

 南信州ビールの竹平さんのお話にもありましたが、少人数で経営している南信州ビールさんでは、ブルワー(醸造士)の仕事と言っても、製造だけをしていればいいわけではなく、あくまで製造に軸足を置きつつも、営業や経理的な仕事もこなすことになります。限られた人数で現場を回してゆくために求められることではありますが、ビールをつくることのまわりにある業務や、そこに携わるひとたちと一緒に仕事をすることで、そこから新たなビール造りのヒントを見つけたり、より一層ビール造りに打ち込めるようになるきっかけもあるようです。
 かつてはスペシャリストと言えば、その道だけを突き詰めた人を指した言葉であったような気もしますが、ピッチャーと野手を兼務してしまう大谷翔平選手のような人材も出てくると、好奇心をもって何事にも前向きに取り組んで努力し続けることができる姿勢があることをスペシャリストというのかもしれません。
 田舎には家族経営的な小さな会社も数多くあります。新人や1年目といってもすぐ近くに社長がいて、経営を身近に感じながら業務に携われるのは、貴重な経験だと思います。
 最初はアルバイトやパートで働くことからはじめて、雇う側と雇われる側の双方が互いのことを理解してきたときに、正社員への登用する流れもあります。最初から正社員での雇用と限定するのではなく、まずは働きはじめてから徐々にステップアップしてゆくのもありかもしれません。

最後に…

 セミナー終盤の個別相談会では会場の至る所で小さな輪ができて会話が生まれていました。 
 田舎で暮らすことに限ったことではないですが、どんな暮らしをしたいかをイメージしたときに、これだけは実現したいというものの優先順位が必要なのだと思います。
 絶対にゆずれない実現したいこと、他の要因との兼ね合いで総合的にジャッジできること、今すぐには難しくても移住して3年後くらいには実現できそうなこと、まずはやってみて軌道修正を繰り返してゆけばいいことなどなど、移住を検討することをきっかけに、これまでの自分自身を振り返り、未来に思いを馳せること。そういう時間がとれることは案外幸せなことなのかもしれないなと、セミナー参加者の方々と話をしながら、僕自身がIターンしたときのことを思い出していました。
 今回、セミナーへご参加くださったみなさまにとってもこの移住を検討している期間が充実したものになることを願っています。そして駒ヶ根への移住をより具体的に検討されている方々にとっては、どんなかたちかはわかりませんが、引き続きなにか力になれることがあれば幸いです。
 ご参加くださいましたみなさま、ありがとうございました。

 今回のセミナーのご感想やその後のご相談など、なにかありましたらお気軽にご連絡ください。

【 お問い合わせ窓口 】
〒399-4192 長野県駒ヶ根市赤須町20-1
駒ヶ根市役所内 商工観光課 移住・交流促進室
TEL 0265-83-2111(内線436) / FAX 0265-83-1278MAIL iju@city.komagane.nagano.jp(担当 松崎・桑原)​


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