【実際に機能する魔術の教程本『モダンマジック』】其之二 所収「序文」の紹介
ドナルド・マイケル・クレイグ『モダンマジック』第3版には、1組と3名の魔術師から序文が贈られております。その中からここで一部を抜粋してご紹介するのは、ひとつ目がジョン・マイケル・グリアのもの、ふたつ目がデヴィッド・F・ゴドウィンのもの。
ジョン・マイケル・グリアは「黄金の夜明け」系列の良書を多数出版しております。「アメリカ古代ドルイド団」のドルイド大司教でもあり、2013年には「ドルイド的結社 黄金の夜明け」団も設立しております。
デヴィッド・ゴドウィンは本書で入手を推奨されている、重厚なゲマトリア・カバラ事典『ゴドウィンのカバラ百科事典』のほか、カバラやギリシャ魔術に関する興味深い著作があります。
さて、この両名が本書のどのようなところを推薦するのか、ご覧ください。
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序 文
ジョン・マイケル・グリア
わずか数十年前、オカルトの初心者にとって価値ある魔術の教えを見つけることが一体どれほど困難であったことか。(中略)
オカルト団体の外部で魔術の学習を追求する者は、ヒントや断片から自身のカリキュラムを組み立てねばならない。私たちの多くは学習するのとほぼ同じくらい、学ぶべき対象を見つけ出すことに時間を費やしていた、といっても過言ではなかった。
それは1980年代に入ると一変した。何冊かの書籍がオカルトコミュニティのさまざまな場面でその変化に重要な役割を果たした。そして、儀式魔術師にとってもっとも重要であったのは、あなたの手の中にある1988年初版発行のこの本である。
『モダンマジック』は儀式魔術の学習方法に改革をもたらした。漠然としたヒント、曖昧な言葉、そして以前の手引き書でとても大きな役割を果たしていたもったいぶった概略の代わりに、魔術の基本についての明瞭かつ分かりやすいハウ・ツーを提示したのだ。(中略)若く意欲的な魔法使いは、この本を1冊手入すべきである。この本の教えを学び、儀式や訓練を実践し、魔術の理論と実践の核心に関する十分な知識があれば、君は跳躍できるかもしれない。
この本が最初に世に出たとき、オカルトコミュニティの多くの人々が厳しい表現で『モダンマジック』を酷評したといえる。批判の多くは、魔術がどのように教えられるべきか、またはどのような訓練が初心者に適切であるか、についての誠実な意見の相違に基づいていた。(中略)しかしそれらの批判は、数万人の読者が『モダンマジック』の初版を購入し、その当時もっとも成功した魔術刊行物のひとつにすることを阻止するためには何の役にも立たなかった。
その影響は、直接影響を受けた人々に限ったことではなかった。『モダンマジック』は、登場以来数十年でスタンダードとなった魔術教育への取り組み方を明確に示し、魔術の教科書にあった制約をリセットした。近頃では、ほとんどの先達が行っていた、もったいぶったヒントや貧相な概要でお茶を濁されることはほとんどなくなった。詳細で読みやすく、実用的な指導を基本原理から段階的に提供するユーザー・フレンドリーなレッスンが必要不可欠となったのだ。その出版をとても激しく批判したオカルティストが、後に魔術の教育方法をこの本から拝借し、自分の本を出版したことが、『モダンマジック』の勝利のほどを物語っている。
実際、『モダンマジック』は、まさにそのタイトルが暗示している通りのことを行い、魔術を現代のものとした。曖昧さと不必要な秘密に充ち満ちたこの分野で、情報化時代の動きを最初に捉え、現代の言葉で儀式魔術の技術を提供したのだ。拡張され、アップデートされたこの第3版は、元の版の後継に値する。昔々、古書店の背後の埃っぽい書物にオカルト伝承の重要な断片を発見することが何を意味していたか、今日のオカルト新規参入者は知らないだろう。オカルトの情報は近年とても豊富にあり、それが当然のことのように思われがちだ。それでも、『モダンマジック』のこの新版を手に取る者はだれでも、当時お馴染みであった経験のひとつ、現代オカルト文献の古典である1冊のページを繰る喜びを知ることができるだろう。
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序 文
デヴィッド・F・ゴドウィン
(前略)あるとき私は、今はもう存在しないミスティック・アーツ・ブック・ソサエティに参加した。そこで受け取った1冊の本が、アーサー・エドワード・ウェイトの『儀礼魔術』だった。復活したグリモワの中世の呪文について騒ぎ立てるウェイトのヴィクトリア朝の言い回しはおおむね問題なかった。しかし、式文そのものは全体がかなり複雑で、何から何まで非現実的なたくさんの風変わりな素材を必要としていた。
ルウェリン社がイスラエル・リガルディーによる『黄金の夜明け魔術全書』を出版したとき、私はとくに最高善、あるいは「高価な真珠」と称された彼の霊的啓発の描写にさらに魅了された。私はこの世紀末の秘密の魔術・オカルト団体の魔術体系の研究に歳月を費やした。いくつかの比較的簡素な儀式でさえ、私は恐る恐る実行した。残念なことに、リガルディーが編集したものは、部外者に秘密を明かすようには配慮されておらず、どちらかといえば参入者以外には理解できそうにない代物だった。それは専門用語に満ちた、複雑で半ば詩のような言い回しの少々大袈裟な19世紀末の文書の複製から構成されていた。言うまでもなく、それに魅了されようがされまいが、結果として私の収穫はほとんどなかった。
その後、ドナルド・マイケル・クレイグの『モダンマジック』初版が私のもとへやって来た。
すると「黄金の夜明け」団の魔術体系が初めて意味を成し始め、腑に落ち始めた。現実的な感覚の発動である。ドナルドはたんに仕組みを教えるだけでなく、これまでほとんどだれも強く説いたことがなかった部分を教えてくれる。彼は視覚化の重要性を説く。言葉を口に出すだけではだめなのだ。(中略)そこには意志が不可欠であり、とりわけ何が起こっているかを心の目で見る必要がある。カバラ十字はヘブライ語をぼそぼそと呟きながら行うたんなる打撃練習ではない。それは身体を通り抜け、押し寄せる光と力の十字架の体験なのだ。すべての訓練と実習、そして儀式もそうである。
2、3週間、「小」五芒星追儺儀式──ドナルドが便利にLBRPと呼ぶそれ──を毎日実習していたときだ。天使召喚の最中、隣の部屋で電球が破裂した。何かが起こっていたのだ。
そしてこの本は、たんにリガルディーと「黄金の夜明け」団の文書を分かりやすく焼き直しただけのものではない。ドナルドは彼自身の啓発経験から、多数の小話、情報、およびテクニックを追加した。夢、タロット、エクササイズ、他では見つからないであろうその他多くの題材に関する資料がある。これは真に、熱意ある魔術師のための段階的マニュアルである。(中略)
さて、クレイグ氏は私たちのために資料を追加してくれた。そして、より一層明瞭で、なおかつ正確を期するために改訂をもってことに挑んだ。そして、この影響力が大きく極めて重要な著作の新版を私たちにもたらしたのだ。本書は魔術や「黄金の夜明け」団に対して真剣に興味を持っている者にとっての必需品である。どのような魔術蔵書にあっても、この本は基本的教科書となるだろう。
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いかがでしたでしょうか。本書は「詳細で読みやすく、実用的な指導を基本原理から段階的に提供するユーザー・フレンドリーなレッスン」であり、「どのような魔術蔵書にあっても、この本は基本的教科書となる」ものなのです。いずれの序文も本書が「使える魔術書」であることを、自身の体験を交えて語っております。
2回にわたる本漫談を締めくくるにあたり、本書を十全に活用し使いこなすために必須の心構えを、本書から引用しましょう。この言葉は「訳者解説」でも肝に銘じるべきアドバイスとされております。それはすなわち、
だれも君に魔術の能力を与えることはできない。
君自身が獲得するほかない。
それを実現する方法はひとつだけ、
訓練! 訓練! 訓練!
文=編集部(今)
『モダンマジック』
ドナルド・マイケル・クレイグ 著
婀聞マリス/折刃覇道/白鳥至珠/バザラダン/HierosPhoenix/Raven 訳2023年05月末発売
菊判・上製・総785頁 ISBN978-4-336-07491-1
定価:本体8,800円+税
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