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ある朝の出来事

燃えるゴミの日の朝。
私の両手には燃えるゴミの袋。


エレベータに乗る。
180度振り返る。
ドア閉まる、下る。


途中の階で止まる。
ドア開く。
母と娘が搭乗する。
私は両手にゴミ袋
ドア閉まる、地上に着く。


ドア開く、母・娘が先行。
私はその後ろを追う。
母は娘に背を向け速歩。
娘はマイペースに独歩。


細長い廊下は少し暗く、
更に母と娘の距離は開く。


真夏日の札幌にしては
涼しい風の通り道。
鉄の扉を開く母。
光が廊下に入り込む。


扉を突き放し外に出る母。
徐々に閉じる隙間の景色を
くぐり抜ける娘。
閉じようとしている扉。


ゴミ袋を運ぶ私。
不意に静止する扉。
扉の向こうから小さな手。


開かれた外との交通路を抜ける。
夏の眩しい朝。


母は相変わらず歩を進める。
礼を伝えると、
小走りに母の方へ駆ける娘。
小学生にも満たない女の子の
そのさりげない心配りに
黒く荒んだ心が洗われた気がした、
ある朝の出来事。


ところで
母はいつもああなのだろうか。
それとも
たまたま機嫌が悪かったのか。


謎は解けないまま
燃えるゴミを所定の位置に。

2017年7月10日 facebook記