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リモート雑談 ~リモートなぼくたちは自粛生活の果てに精神と時の部屋の夢を見る~


御手洗 自己紹介

ソッタ 自己紹介

これは平成に心を置き去りにした平成神経症罹患者の雑談の記録である。


御手洗
:じゃあまあ、お久しぶりということで。
酒井:いやぁ、ほんとそうなんですよ。ほんとならゴールデンウィークあったじゃないですか。僕6月5日からちょっとイギリスとフランスに行くっていうことになってたんです。7日にフランスのリヨンでポールマッカートニーのライブ(の予定)やったんですけど、結局もう(飛行機の)便、飛ばないんで、まぁ払い戻しって形で行けなくなっちゃったんですよ。

ソッタ 飛行機飛びやしねぇえ

御手洗:ぼくね、4月の頭に展示があったんだけど、
酒井:あぁ、どこでですか?
御手洗:大阪で。
酒井:あ(笑)
御手洗:ということは(時勢的に大阪での展示は)できないから、web展示って形になってしまって。
酒井:初めてじゃないですか?そんなの。
御手洗:そう。初めての試みなんだけど・・・はっきり言って絵画ってwebで出しても、っていう。実物を見てなんぼのもんだから。
酒井:あぁー
御手洗:で、しかも作品を送ってるわけじゃなくって、自分家で撮影してそれをギャラリーのサイトで展示って形だから。他にやりようないから仕方ないけど。よくTVでスポーツの無観客試合とかやってるけど、こっちは無観客の上に試合も無いみたいな(作品を搬送してないから)。
酒井
:え?(笑)
御手洗:試合は無いけど試合はあったことになるみたいな。そういう状態。
酒井:それって、参加するのにもお金とかとかも要るんすよね?
御手洗:今回は人生初の”企画”作家ってことでオーナーが企画してくれたんで(お金はかからなかった)。
酒井:あー、はーはー。
御手洗:それを妖怪「出鼻くじき」の手によってやられちゃったんですよね。
酒井:こればっかしはみんな何かしらの形でやられてますよね。
御手洗:ねー・・ぼくなんかはまだ先があるからいいけど、高校生とかなんて春の甲子園どころか夏の甲子園も中止が決定なんかな?インターハイとか高校総体関係がもうほぼ中止かな?たぶん。これはもう次が絶対ないから。
酒井:一生に一度っすからね。


ぼく 幽霊ソッタ



御手洗:「家の中にいてやることない」って言う人いるけど正直どうですか?
酒井:全然飽きないですね。やることがありますからね、絵を描くこととか。
御手洗:でしょ?やることしかないでしょ?
酒井:ホントそうですよね。
御手洗:ぼくなんかこういうコロナで自粛生活になったからってなにも変わらないんですけど、ずっともともと家の中にいる人間だから。
酒井:まぁ、はい。
御手洗:最近自分の旧友みたいな人と10年ぶりに偶然出くわしちゃうことがちょいちょいあるんですけど、ホント交通事故みたいな感じで。
酒井:え(笑)いやまぁはい。
御手洗:その人たちは社会人経験とかキャリアだったりとか家庭を築いてる人とか、半数以上がそんな感じだから、(ぼくと)会ってなかったその10年ぐらいの間にその人たちは10年時を経てるんですよ。
酒井:あぁ~~、はい。
御手洗:でもぼくはその10年間時が止まってる。だってずっと家の中で一人で作業してるわけだから。
酒井:でも止まってるってことはないんじゃないですか?
御手洗:いやぁ~~…止まってはいないかもしれないけど限りなく時の流れは違うと思いますよ。もうスピード感が全然違ってるのを感じてて。
酒井:それは向こう(旧友)の方が早いってことですか?
御手洗:早いね。周りの方がホント早いと思う。
酒井:あぁ~。
御手洗:で、今回のコロナの件でみんな身動き取れなくなったじゃないですか。そうすると世間的には時が止まってるわけですよ。
酒井:まあまあそうですよね。
御手洗:ただぼくにとっては世間との時間の差が縮まってるってことだから、ちょっとずつだけど。相対的にはぼくにとっては時間が進んでることになるんですよ、周りの時間は止まってるわけだから。だからもともとぼくみたいなタイプの人間からしたら今回のこの自粛の期間中にむしろ人生の時間が進んだ人いるんじゃないかなと思って。
酒井:(笑)なんか、その、難しいですけどね、感覚っていうか。
御手洗:たぶんねこういう感覚の人いると思うんですよ。ちょっと大げさな話すると、一番の平等状態ってどういう状態かって問題提起があって、一つの答えとして「戦争とか大規模災害が起きて社会のインフラが機能しなくなった状態」っていうのはみんな平等になるっていう理論があるんですよ。
酒井:あー。
御手洗:もちろんこれはその(戦争や災害による)平等状態を目指せ、ってことになっちゃうとまずいんだけど、一つの問題提起として結局格差っていうのはインフラが生み出すっていう条件があるんですね。例えばお金持ちっていうのが何で強いかっていうとそれはお金が意味を持つインフラがあるからなんですよ。っていう風に社会のインフラが機能してるっていう大前提があって。
酒井:あー。
御手洗:もちろんこの(コロナ禍による)状態が続けばいいってことには絶対ならないんだけど、社会全体の時間が止まってるってことはもともと時間が止まってたぼくらにとってはそれがメリットになるってことはもちろん絶対ないんですけど、特に体さえ鈍らなせなければそんなに影響がないの一言に尽きるんですね、ぼくなんかは。
酒井:まぁ、ぼくも同じくっすね。


悪い笑いのぼく



御手洗:びっくりするくらい時間が経つのが早いんですよ。
酒井:早いっすね!それはわかります。
御手洗:びっくりするのホントに。
酒井:無茶苦茶早いですよね。なんか時間が経つのが早いと充実してるっていうけどそれともなんか違うくないすか?
御手洗:全く違いますね。なんかむしろ空っぽだから”早い”みたいに感じる時があって。
酒井:でも、聞いてると御手洗さんは作品をいろいろ出されてるからいいんじゃないですか?それで。
御手洗:う~ん・・・結局いつか死ぬじゃないですか、人って。
酒井:なんすか(笑)人間がすか?(笑)
御手洗:そう、いつか死ぬんですよ、人間て。死ぬときにこの人生で良かったと思うかどうかわかんないじゃないですか。それはみんなそうなんだけどぼくなんかは作品をいろんなところに出してはいるけど全く仕事やお金につながってるわけじゃないし、そこに納得や達成感があるかって言うと・・・。時間が進んでる人の方がたぶん納得はいくんだろうなって思うんですよ。
酒井:あ~、死ぬときに?
御手洗:死ぬときに。
酒井:まあまあまあ。それはある意味充実してるからってことですかね?
御手洗:充実っていうのは楽しいことばかりがあるって意味じゃもちろんないけど。これ心理学の話なんですけど、結婚とか出産とか育児とか環境の変化を経験している人の方が肉体の死を恐れなくなるっていうのがあるんですよ。どういうことかっていうとね、環境が変わるってことは精神的には死の疑似体験なんですよ。大人になったら子供のころには戻れない、子供が生まれたらそれ以前の自分には戻れない、もう過去の自分には戻れない、つまりそれは過去の自分がどんどん死んでいくってことだから。だからそういう経験を多くしてる人の方が現実の死が怖くなくなっていくらしいんですよ。
酒井:へぇ~~、逆と思ってましたね。
御手洗:逆の気がしますよね、守るものができるわけだから。
酒井:そういう人の方が今の幸せがずっと続いてほしいみたいのがあるんじゃないんですか?
御手洗:たぶん自分のための幸せである必要がなくなるんだろうな、って。作家ってある意味子供のままで自分の(精神世界の)中で作業していくからメンタル的な死の経験値って多分低いんですよ。変化がないから。
酒井:あー社会的な。


10年前から現在のぼく

何の変化もなく時間だけが過ぎる



御手洗:最近ふと気づいちゃったんだけど、自分の子供のころの記憶の中で一番古い(若い)両親の年齢って覚えてます?
酒井:えー?ちょっとわかんないっすね。
御手洗:あやふやだけど確実に今の自分の年齢より若いんですよ。自分が幼稚園入る前の両親の年齢を今の自分は超えちゃってるんですよ完全に。つまり古い友人に会うってことはあの頃の両親に会うってことなんですよ(?)
酒井:え、う、えーーー?どういうことですか???
御手洗:夫とか妻とかいて子どものいる30代の同級生っていうのを引きの目線で見てみてください。あの頃(自分の幼少期)の親と一緒でしょ?
酒井:あー
御手洗:その今目の前にいる同級生の子供っていうのは、要はあのころのぼくなんですよ。理屈としてはわかってはいたけどリアルにそれを見ちゃうと「つまり自分は時が止まっていたんだ」ってなっちゃう。
酒井:それは御手洗さんの中で迷いっていうか、家庭への憧れっていうのが出てきたってのはないですか?
御手洗:家庭への憧れってのはまだ正直わかんないけど、まだそんなに無いんですよ。それよりも人生の時間は止まってるけど体の時間は経過してる、つまり肉体的な死に近づいてるっていうことをどう受け止めるか、っていうところがまだぼくは受け入れきれてない。




ぼくと幼いぼく



御手洗:まあだから、引きこもって絵を描いて、人生の時間が止まってる間も体の時間も止まってればいいのになって思ってるんですよ。最強じゃない、それ。
酒井精神と時の部屋じゃないですか(笑)。
御手洗:そうそうそれよ。精神と時の部屋に入りたいんですけど、っていう結論です。

※精神と時の部屋→ドラゴンボールに出てくる修行部屋の名前。室内環境が過酷なかわりにここで1年修行しても外界では1日しか経っていないとのこと。ちなみに筆者はドラゴンボールを見たことがない。



酒井:ところで今日(収録日)、5月18日じゃないですか。
御手洗:はい。
酒井今日、うちの姉が男の子を出産したみたいなんですよ。
御手洗:はぁ!?今日!?
酒井:はい。最近まで家でずっと療養してて、ぼくゴールデンウィークに(実家に)帰るよって言ったときに「もういつ生まれるかわかんないよ」みたいなこと言ってて。ぼく仕事で東京とか行ってますし、もしそっち(兵庫の酒井実家)に(ウィルスを)持ってってうつしちゃったら大変だと思って今回(帰省は)やめとくよ、ってことになっちゃったんですけど。
御手洗:それは、とりあえずおめでとうございますということで。
酒井:リアルタイムで報告できるとは何か不思議な気持ちっす。

甥が生まれた


生きることで精いっぱいです。