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【SF】山奥の景色(3)

 ここサジャーンでは太陽の動きを惑星の自転をもとにした、地球と同じ時間とカレンダーを採用している。一言でいうと、便利だからである。大昔、サジャーン人の先祖が地球に探索に行ったとき、この時間と暦がいかに素晴らしいかというのを地球人から学んだらしい。それまでサジャーンでは独自の時間と暦を使っていた。1日を60等分し、そのひとまとまりを「1ジャック」と呼んでいた。また、1ジャックは45ロールで1ロールは45ハイルだった。現代この時間を使っている人はおそらく一人もいない。便利な地球時間を採用してからはこんな面倒なサジャーン時間を使う人は急激に減っていった。
 カレンダーもこれまた面倒で、1年を32に区分けしていた。1年が32か月。ということは1か月はだいたい11日や12日になる。短。そんな短期間で月が変わるなど、今では考えられない。
 我々はとにかく1時くらいまでは歩こう、ということになり、歩いている。道中、いろいろな飲食店に出会い吸い込まれそうになりながらも、歩みを進めている。
「官邸に乗り込むのが成功して赤い空のことがわかったらどうする?」
「そりゃみんなに言いふらすさ」
「そっか。でも、それって罪に問われない?捕まりそうな予感がするんだけど」
「は?逃げるに決まってんだろ、頑張って」
「どこに?」
「そんなのはどうでもいい。とにかく逃げる」
どうでもよくない。人生が、命が懸かっているのだ。国外逃亡か?でもパスポートなんか持ってないしな…
「まさかお前パスポート使って逃げるとか考えてねえだろうな。そんなの国から出る前に逮捕確定だろ」
たしかに。そもそも外に出してくれない。
「陸続きの国に亡命するんだよ。隣のロンガロンとかに」
「亡命か…。したことないな」
「俺もしたことない」
当たり前である。していたらこんなに悠々と生きているはずがない。
「どうやって亡命するの?」
「どうやっても」
会話が成り立たない。こんなテキトーな感じで官邸乗り込んで逃走してって、成功するわけがない。
 ふと時計を見る。12時12分。まあまあ昼か。
「なあ、もう昼食べない?」
ラッフェルが言う。
「もうそろ食べるか。一応昼だし」
ということでオンラインマップで近くの食べ物屋を探すと、ここから2分の場所にゾロイ料理屋を発見し、ここに入ることになった。


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