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【SF】山奥の景色(4)

その店は"Zoroian Facts"という名だ。いかにも国粋っぽい。我々は、食べるものは何でもよかった。適当に、私は「ラカマカ」、ラッフェルは「ケロック」を頼み、食べた。ゾロイ料理だな、と感じた。やはりこの国の料理はうまい。
店を出てまた北に向かって歩き始める。ここは車通りの多い道である。歩道はあるが、車がものすごいスピードで横を通り過ぎていく。最近の車は音がしないため、前後左右をちゃんと確認しながら歩かないと危ない。ここで事故に巻き込まれるわけにはいかない。いつも以上に慎重に歩く。歩きながら、こんな会話を繰り広げる。
「ラッフェルは赤い空についてどう思う?」
「俺は自然現象だと思うな。でも、何がどうなってとか全然わからない。気象とかそこらへん詳しくないからな。お前はどう思うんだ?」
「ぼくも自然現象だと思いたい。でも、政府や世界がこれだけ隠していると、それ以上に悪いことなんじゃないかなって思い始めてる」
「何だ、それ以上に悪いことって」
「うーん、ちゃんと考えられてるわけじゃないけど、宇宙人襲来とか、太陽の膨張とか、まあそんな感じかな」
「やべーじゃんそれ!どうすんだよほんとにそうだったら」
「どうにもできない。だからまず、その真偽を確かめるために官邸に乗り込むんだろ?」
「そうだな、そのとおりだ」
何もないのが一番いい。一連の気候変動によるものでした、が一番いいに決まってる。でも、何かはあってほしいという思いもある。せっかく官邸に行って何もなかったらそれはそれで悲しい。そんな思いを胸に、歩き続ける。
いろいろな話をしながら歩いていると、徐々にあたりが薄暗くなってきたのにも気づかず、時計の針が18時23分を指しているのを見て驚いた。もうこんな時間なのか。そろそろまたごはんを食べたい。しかし、我々はもう林に到達していた。ここには何もない。林を抜けるか、光のある場所へ戻るか。ラッフェルにその話を持ちかけると、「俺はどっちでもいい」という答え。相変わらず困る。決定権は私に譲られた。さあどうしようか。戻るとしても30分以上かかる。進めばどれくらいかかるかわからないが、確実に前進はする。決めた。林を抜けよう。
「このまま進もう。林を抜けてごはん屋さんがあったらそこで夜ご飯を食べよう」
「オッケー」
この先どうなっているかわからない恐怖。なにしろ初めて立ち入った場所である。用心深く行きたいところだ。

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