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新潟の地場の食からサスティナブルな未来が見えるSUZU GROUPの挑戦が刺激的!

気になるnoteクリエイターに、國學院大學メディアnote担当がお話を聞いてみた企画第3弾は、新潟の食材にこだわったレストランや宿、商品開発などを行っているSUZU GROUPさんです。社長の鈴木将さんと、SUZU GROUPのnote「The SUZUTIMES」を担当する是枝香織さんにお話を伺いました。

いやー、お話を聞けばいくほど、今すぐに上越新幹線に飛び乗ってレストランでごはんを食べたくなりました!

——國學院大學メディアnoteにスキをしていただいていますが、どんな記事をご覧になったのでしょうか。

是枝 note担当の私からお話しいたします。私はまちづくりに興味があり、あれこれ見ているときに國學院大學noteの観光まちづくり学部の記事を知り、拝読しました。そのつながりで、いくつも記事を拝読させていただいています!

——noteをお書きになっているSUZU GROUPさんについて教えてください。

鈴木 SUZU GROUPは新潟の食を軸に、地域の伝統的な食や文化の豊かさを知っていただくために活動しています。具体的には地場食材を使った料理をお出しするレストランやDELI、お弁当やケータリング、発酵を軸としたおむすびと汁物の店、発酵料理が食べられて、フードツーリズムの拠点となる宿、図書館の中にあるカフェなどを展開しています。それから、地場のものを使ったソースやシロップなどの商品開発と販売もしています。


2020年10月にオープンした観光拠点「摂田屋発酵ミュージアム」に併設された
「おむすびと汁と茶6SUBI(むすび)」(左)
ツナマヨと味噌漬け刻みのおむすびや味噌と発酵食品を使ったミネストローネなど、
摂田屋エリアでつくられた食材や発酵食品を活かしたオリジナルメニューを提供(右)

新潟駅にはお店が2つありますが、うち1つは新幹線で新潟にいらっしゃったお客様に、新潟の日本酒やクラフトビールを飲んでいただきながら、旅情報をお話しするようなお店なんですよ。現在、全部で10店舗とオンラインショップがあります。

是枝 もともと当社が発行する「The SUZUTIMES」という、県内の方むけのフリーペーパーがあります。SUZU GROUPが展開するお店の情報や、地域の魅力を紹介しています。当社も少しずつ成長を重ねて、いままたひとまわり大きくなろうとしているところなので、同名のnoteを始めました。県外の方にも見ていただくことを意識して、あまり知られていない新潟の情報を細かく解説したり、キャッチーな文言を入れるようにしています。

——料理に使われている食材や、生産者さんにも興味が湧いてきます。

鈴木 お店で出す料理には、地場産の野菜を使っています。生産者さんとお話する中で、僕らと思いを共有できる方々から仕入れさせていただいています。
 
日本どこでもそうですけど、とくに郷土料理に欠かせない伝統野菜は、作っている農家さんの高齢化による後継者問題などで岐路に立たされています。僕たちにできることは、その野菜を使って料理を作ること。それがこの地の食文化を守ることにもつながると思っています。

——なるほど。noteの「The SUZUTIMES」からは、そんな思いも強く伝わってきますね。

鈴木 新潟でも妙高や越後湯沢のように海外からのお客さんで賑わう場所もありますが、私の出身地である長岡を含め、新潟は内需で回ってきた経済圏なんです。だから、他の地域の人には知られていない野菜、料理がたくさんあるんです。
それは、雪国であることも関係していて、冬の間は雪で閉ざされて、野菜も採れませんよね。だから保存食の文化がある。それはまた、飢えをしのぐための知恵でもあったんです。だからこのあたりの郷土食は、華やかなおもてなしの食というより、生きていくための食だったんですよ。

長岡市山古志地区の特産品「神楽南蛮」(左)と「長岡巾着なす」(右)

——SUZU GROUPさんのお店のお料理は色も美しいし、盛り付けも素敵で、郷土料理というイメージを超えていますよね。

鈴木 そこは私たちが大切にしていることの1つです。昔ながらの郷土料理そのままでは、なかなか今の時代に受け入れられない面もあります。なんていうか、「郷土料理」と聞くとおばあちゃんたちが作っていた、おいしいけれど見た目は地味で、どーん! と大量に出てくるようなイメージがあると思うんです。だけど、その料理の背景には、その土地にしかない知恵と味があり、食文化があるんですね。
だから私たちはその背景をしっかり残し、料理はアップデートする。地元にいるけど郷土料理を知らない人にも「へぇー」と、背景ごと味わってもらえるようにしているんです。

——写真でしか拝見できなくて残念ですが、この料理は、アップデートされた郷土料理なんですね!

「スルメイカと神楽南蛮のさっぱりペペロンチーノ」

鈴木 そうなんです。古くから伝わる郷土料理そのままではなく、現代のテイストを加えてアップデートしたものです。

——最近ではどんなメニューが開発されたんですか?

鈴木 私はもともと料理人で、大阪や横浜などの創作料理のレストランで修業していました。美しく見せる盛り付けや、色や形も含めデザインされた料理を学び、提供していました。その視点で郷土料理を見直し、オリジナルメニューを開発したんです。
 
今はスタッフもメニューづくりに参加しているので、私が習得してきた料理の構成や見せ方、ロジカルな部分も伝えています。社内でのメニュー提案会では柔軟な発想から生まれた料理が登場しますよ。
今年の夏にメニュー化されたものは、たとえば「越後の中心でエゴを叫ぶ」とか……。

——えっ、越後のエゴ??

鈴木 これは、昔から食べられていた、エゴノリという海藻を煮て、煮汁を固めてゼリー状になったものを切って酢味噌や酢醤油で食べるという料理のアップデート版です。ところてんを押し出す「天付き」を使って押し出して、ちょっとショーっぽい要素も入れて、いくつかご用意した薬味や酢醤油で食べていただくというものです。

「越後の中心エゴを叫ぶ」

——ほかにはどんなものがありますか?

鈴木 ほかには「巾着なすの甘いコンポート薄焼きパイ包」があります。伝統野菜の巾着なすを使いました。このなすは、冬場の保存食である味噌漬け用に作られたなすで、普通の長茄子と違って硬いんですよ。だから水分が少なくて、長期保存ができる。でも長岡では、保存する以外にも蒸したり、煮たりして食べてきました。
そこで「煮て食べる」という要素と「硬い=煮崩れしにくい=味も染み込む」という要素をアップデートして、甘いシロップで煮たらおもしろい食感になるのでは? という発想で作られた料理です。
それから「ファームテーブルスズワイルドバーガー」。これは、新潟ポーク、巾着なす、トマトなどをはさんで、伝統野菜である神楽南蛮を使ったシャリアピンソースで食べていただくハンバーガーです。

「巾着なすの甘いコンポート薄焼きパイ包」

——こんな風に地域の魅力を掘り起こす活動をしていると、今の日本の食生活の問題点も見えてしまうのでは?

鈴木 そうですね。いつ、どこでも、ある程度のおいしさのものがすぐに食べられるという点では、日本はすぐれていると思います。しかし、そういう中で置き去りにされたものもあるんじゃないかなと。地元のものを地元で食べるという、昔は当たり前だったやり方、食べ方にじつは本当の豊かさがあるのではと思っています。私たちは、地場のものをその風土にあった食べ方で食べるということに価値を見出して、もう一度食の豊かさを考え直したいと思ってやっています。そういう意味では、既存の外食産業とガチンコ勝負していかなければと思っていますよ!

——おおー、ガチンコ勝負! 

鈴木 それは、コストや商品の魅力で勝負しているのではないんですよ。私は飲食店には、地域の食材を使い、地域そのものが循環する仕組みを作り出す可能性があると思っています。もちろん、そのためには「そういうものが食べたい!」と思うユーザーを増やさなければならない。
飲食業は大きくなるとチェーン化していきますが、チェーン店であっても「地域の食材で地域を豊かにする」視点を持った上で広がっていけば、外食産業全体も変わってくるはずです。全国各地の魅力的な食が、循環を作り出す。そんな世界ができるのではないか? そこを目指したい!というのがガチンコの意味です。

——サスティナブルな外食を選択するということは、SDGs的な世界観をも選ぶということですよね。

鈴木 そうですね。どうせ食べるなら、そういうストーリーのある食を選ぶ。そしてSUZU GROUPがその選択肢の1つになれればと思いますね。これだけ毎年異常気象が起き、災害が起きる中、いつも同じ食材でいつも同じ味っていうのは、なかなか難しくなってくる。だけど、新潟の郷土食はさっきもお話ししたように、地場のものを使っているから、そういう変化にも強いです。さらに内需で回りつつもこれだけの人口規模を支える力、物量があるし、今さかんに言われているSDGsやサスティナブルなスタイルが、じつはもともと新潟にはあったわけなんですね。その豊かさを知ってほしいし、広めていかなければと言う思いはずっとありますね。

——他の地域にSUZU GROUPさんの理念を広めるために、どんなことをしてらっしゃいますか?

鈴木 2023年はいろいろなアワードに挑戦したんですね。先日は環境省の「グッドライフアワード」2023で実行委員会特別賞を受賞いたしました。そして、発酵食を中心に、新潟の食文化を体験してもらうために作った一棟貸し切りの宿「HAKKO HOUSE」が、「ジャパントラベルアワード」の2024ファイナリストになっています(受賞者発表は2024年1月)。

——ますます知名度がアップしそうですね。そうすると他の地域でも刺激を受けて、地場の力を見直すところが出てきそうですね。SUZU GROUPの思想が日本全体に広がっていくような予感がします。SUZU GROUPが次にどんなことをしていくのか、今後も楽しみにしています!


鈴木将(すずき・しょう)
SUZU GROUP(有限会社寿々龍)代表取締役社長・地域デザイナー。
大阪、東京、横浜での修業を経て、2007年に有限会社寿々瀧へ入社。
長岡市内で「俺っちの炙屋 ちぃぼう」(2017年「越後炉ばたと雪国地酒 ちぃぼう」にリニューアル)をオープン。
趣味:犬の散歩。好きな言葉:継続は力なり。
いつかやってみたいこと:学校をつくる。

是枝香織(これえだ・かおり)
SUZU GROUP(有限会社寿々龍)広報・PRデザイン(「The SUZUTIMES」編集長)。
2014年、夫の転勤で新潟へ。「おいしい賄い有り」の文字につられ、有限会社寿々瀧へ入社。アルバイトで入社し、どんどん首を突っ込む形で店長業務を経験した後、現在では正社員として広報を担当。
趣味:推し活。
好きな言葉:好きこそものの上手なれ。
いつかやってみたいこと:The SUZUTIMES座談会(noteを飛び出た、リアルイベントの実施)。

note「The SUZUTIMES」 https://note.com/suzugroup_inc
Instagram「SUZU365スズサンロクゴ」 https://www.instagram.com/suzu365days/
X「SUZUGROUP Official」https://twitter.com/suzugroup1
SUZUGROUP公式サイト https://suzugroup.com/

取材・文:有川美紀子 編集:篠宮奈々子(DECO)
企画制作:國學院大學

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