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専門家は信用できない

 コロナやワクチンの話をしていると,自分は素人で何も分からないから,専門家の意見を聞くしかないとか,心配だから接種してよいかどうか専門家(多分医師)に聞いているという話を本当によく聞きます。また,政治家もコロナ対策をの在り方を聞かれると,オウム返しに「専門家の意見をうかがって」と言って,自分の考えを述べようとしません。

 しかし,専門家とはそれほど信用できる人々なのでしょうか?特に,人類にとって未知のウイルスや未知のワクチンに対して、「専門家」が有効な回答ができるのでしょうか。私は,自分自身が専門家と呼ばれる職業についている関係もあって,専門家について少しは知っているつもりですが,専門家の言うことを参考にすることはありますが,基本的に信用はできないと思っています。

 なぜなら,専門家の知識の程度がそれほど深くないことが,自分の経験から十分にわかるからです。私も自分の専門分野なら,専門家として発言することはもちろん可能です。でも,そのために必要な知識は,専門家でない方の知識と比較して、誤差程度でしかないことも十分わかっているからです。ところが,一般の方々は専門家は想像できないほどの知識を持っていると錯覚して、本当に信用しているようで,そのような姿を見ると非常に心配になります。

 しかし,専門家の本当の問題は,知識の少なさにあるのではありません。自分の専門領域でも限られた知識しかないのに,専門でもなんでもない領域についても,まるで専門家のようにふるまう傾向が一番問題です。一般の人は,どこからどこまでが専門家の知見が分からないので,そのすべてを素直に受け入れてしまう傾向があり、これはとても危険です。

 現代社会が,皆と同じであることに苦痛を感じず,むしろそれを喜びとする「大衆」に支配されていると,厳しく批判した哲学者のオルテガは、『大衆の反逆』の中で,専門家の中でも最も優れたグループである科学者こそ「大衆人の典型」であると指摘しています。そして,その弊害を彼らの野蛮さに見るのです。

 なぜ,専門家が野蛮であるかというと,オルテガによると、彼らは自分の専門以外には全くの無知であるのに,その無知である領域についても,自分の専門分野と同じように傲慢にふるまうからです。しかも、彼らは、質問に答える人であって、素人の意見に耳を貸しません。

 そのうえ、専門家の専門分野はどんどん狭くなっていき、自分の隣の分野さえよく分からなくなっているのが現在の科学の現状です。つまり、専門家の無知は時間が経てば経つほど大きくなってしまうのです。しかし、外部から見たらそれが分からないので、素人としての自分の意見を専門家のふりをして発言する専門家が後をたちません。そんな意見を信じるのは本当に危険です。

 ですから,専門家に意見を聞くときは,彼や彼女の専門が何なのか,専門分野を超えた質問をしていないか,あるいは,自分の専門分野超えて,あたかもその分野も専門家であるかのように回答していないかを,慎重に見極めないといけません。

 特に注意すべきは,専門家に判断を求めてはならないことです。どのような場合でも,「判断」は主観的で,専門知識そのものではありません。彼らから,専門知識の提供を受けることは、眉唾で聞けば役に立つでしょうが,判断まで任せてはいけません。

 本当の専門家なら,判断を聞かれたときに逡巡するはずです。それを,堂々と「こうすべき」とか,「ああすべき」という人たちは,「専門家」というレッテルを貼られただけの野蛮人です。

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