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【精霊の守り人シリーズ】電子書籍で楽しんでほしい超名作

やっと!電子版も完結!

昨年、「子供向けかと思ったらとんでもなかった「守り人シリーズ」」で紹介した時は、まだ1巻~7巻までしか刊行されていなかった「守り人シリーズ電子版」。
ほぼ毎月、2~3冊ペースで電子化されていたのに7巻のチャグムの勇姿を最後にリリースが途切れ、9ヶ月待たされた。
「ここで寸止めとかひどい」
「もう電子版で出さないつもり?」
「いまさらラスト3巻だけ紙で買うとかイヤだよ」
「金なら出すから、ホントお願い」

と、どこにぶつけたらいいか分からないモヤモヤを抱えていたのだが、昨年末にようやく電子版が完結。待った甲斐を感じながら一気に読破した。(めちゃくちゃ幸せでした)

「大人の魅力」にグッとくる児童書

第一巻では女用心棒バルサに連れられて逃げる皇子チャグムの成長物語だった本作。巻が進み、複数の国(しかも、それぞれの国は一枚岩ではない)の思惑が絡み合う展開を迎えてからは児童向けと言えないほど複雑に、難しくなってくる。
にもかかわらず、個性的なキャラクターたちがそれぞれの立ち位置で必死に生きる姿は本当に魅力的で、展開に混乱することはない。
そして、ふとした時に漏れる「大人の理屈」がとても良いのだ。

シリーズのごく序盤、チャグムが宮廷の陰謀のため、橋をわたる牛車から振り落とされる。谷に落ちていく皇太子を追って数人の従者が橋から飛び降りるのを見たバルサは、その後彼らの消息が分からないことを知り、

あの状況では、つづいてとびこまねば、皇子をたすけようとしなかった罪に問われただろう-バルサは、そういう選ぶ道のない人の死がたまらなくいやだった。

と目を閉じる。

物語終盤で、チャグムは敵国に拉致される。実行犯ヒュウゴは、チャグムの人間的な魅力に惹きつけられながらも、自国での出世のためチャグムを政治の駒にする。
そのヒュウゴが怪我をして、バルサに介抱されるなかでそれを告白し、

恨みを晴らすなら、いまがその機会だぜ

と自嘲気味に話すのに対し、バルサは

殺してほしいなら、やってやろう。-そうでないなら、自分の負債を他人にあずけるようなまねは、やめな。

と返す。その後のヒュウゴのリアクションが、またとても良い。

本作を評するのによく使われるのは「J.J.トールキンの影響を受けていない貴重なハイファンタジー
という言葉だけれど、同じくらい貴重なのは
「子どもが主人公ではない児童文学」
であることだと思う。大人同士のこんなやりとりを、子どものうちに見ていたかった。

「本は紙じゃないと…」で逃す本であってほしくない

本離れが進んでいると言われても、スマホやSNSの普及で「文字の消費量」は確実に増えているはずだ。
SNSでのコミュニケーションに慣れた世代は、文字情報の読み取りに秀でている。
面白い本が、手軽に、安く読める仕組みがもっと普及すれば、「本離れ」なんて起きないと思うのだ。

もし、本を読まない、本を買わない理由の20%くらいにでも「置き場がない」が含まれるのであれば、ぜひ電子書籍を考えて欲しい。
私は、本棚の整理はできないし買った本は捨てられない。おまけに片付けが大嫌いな女だ。それで、興味ある本を
読んでみたいけど、積ん読本もあるし、もう置き場がなあ…
と考えて諦めてしまっていた。この「守り人シリーズ」も、そんななかの一作だった。

さらに、子どもができてからは読書できる時間が寝かしつけのタイミングに限られてしまった。暗い部屋で、片手で本を読める電子書籍がなければ、私は読書を続けることすらできなかった。

電子書籍には感謝しかない。

見てよ、このコンパクトさ。
誰が読んでも絶対に面白い、と自信をもって言える超優良コンテンツが、こんなに小さな端末に入ってしまうんだよ。


投稿日 2017.02.20
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です


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