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【IQ84 桐壷、歌会やめるってよ】カラダに悪いものは美味しい!

ジャンクフード本ってやつ

激しく既視感のある表紙。しかし不穏なサブタイトル、「桐壺、歌会やめるってよ」。よくよく見ればタイトルも「あいきゅー・はちじゅうよん」です。
そして著者名は「文豪・瀬戸竜哉」。著者名に「文豪」が入ってる。

それで目次に行けば、サブタイトルがこんなん。

掻きたい背中
佐賀のえろいねえちゃん
博士の愛した百式
限りなく透明に近いブルーレット置くだけ

ひどくない?(褒めてる)

こんなのが29篇も続くんです。

内容は、なんとなくサブタイトルの元ネタを感じさせるショートショートなのですが、決して元ネタ完全無視にはなっていません。著者名に「文豪」が入ってるだけに文章力も侮れなず、そのくせ内容はほぼ「無い」んです。

「掻きたい背中」は読んでるだけで背中がムズムズと痒くなるし、「佐賀のえろいねえちゃん」はびっくりするほど内容がなくて紹介のしようがありません。でも、油断してると「吾輩は猫ですか?」でザムザが虫じゃなくて猫に変身していればもしかしてハートフルファミリーコメディになってたんじゃないか…?ザムザ可哀想だったよね…なんてしんみりさせられます。

ジャンクフード好きなんです

高級食材を贅沢に使ったディナーも、意識の高い食材を意識高く調理したモノも良いし、最近流行りの「割烹着姿の女性がつくる贅沢じゃないけど手間と愛情がこもった素朴なお膳(いっちばん大変なヤツだよバーカバーカ!)」みたいなのも好きです。でもね私は

今日のお昼はプリングルス!(サワークリーム&オニオン)

みたいなのが本当に本当に大好きなんですよね。食い散らかしながら炭酸水片手にTwitterなんか見ていられれば、もう最高です。

キレイは内側から?食卓が人をつくる?食育?人づくり?育児は育自??

うるせ~~~~!!!しらね~~~~!!!
✞FINAL FANTASY✞

これは食べ物に限りません。アーティストが命を削るようにして作ったものとか、神の域を感じるほどに熟達した芸術家の作品とか、そういうものって本当に凄く良いのだけれど、正直に言えば疲れるときがあります。

道端でどっかの政治団体が怒鳴っている無責任なシュプレヒコールにもゲンナリするのだから、芸術家が上げる魂の叫びに消耗しないわけがない。本もそうです。生活や日常に疲れて、追い込まれているときに、わざわざ感性や価値観の根幹を揺るがしかねない「重い」コンテンツは触れたくないんです。

もう読書なんかやめちゃって、フェスとかバーベキューとかでウェイウェイってしたほうが健康的に生きられるんじゃないかなあ!?そんな友だちいねーけどな!

みたいな気分のときに読んで、「これだから読書はやめらんないな」とホっとしました。

ブンガク界の多様性…なのかな?

ジャンクフード本、どうしてもブンガク界隈ではキワモノ扱いされるジャンルですっていうか、これがキワモノ扱いされなくなったら、それはそれでだいぶイヤです。

でも、こういうのがあるから「本っていいよなあ」と思える、そんな作家さんだと思います。

百人一首の歌人だったら、文屋康秀。存命のクリエイターなら、井上涼。そんな位置づけ。

ブンガク界が多様であるためにも、こういう作品もちゃんと残っててほしいです。
文豪・京極夏彦センセーもこういうの出してるし。

ハズレ本というものの存在を知らなかった18年前、ハードカバーで買って(10代なのに頑張ってた)「なにこれ!?」って戸惑ったのをよく覚えています。内容はさっぱり覚えていませんが、ただただ「パラサイト・デブ」のインパクトが凄かった。

普段よく本を読んでいる人で、ちょっと疲れちゃったときとか、箸休めが欲しいなあ、なんてときに思い出してください。

特に得るものはないけど、楽しいよ。


投稿日 2018.10.17
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です

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