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<『2分で心が楽になる小説』世界には2種類の人間がいる。成功した人間と成功したい人間だ。>

成功者と成功中毒者

おはようございます。

みなさんの人生は成功していますか?というか、成功って何者でしょうか。成功することが幸せなのでしょうか。幸せは成功することだけなのでしょうか。今日は成功した人間と成功したかった人間のお話です。


居酒屋に入ってもう3時間になる。偶然隣に座ったサラリーマンの愚痴を聞かされ続けてもう本当に帰りたい。

グラスに入った氷をガリガリと噛み砕きながら、そのサラリーマンはこう続けた。
「俺だってさ、綺麗なスーツ着て、バリバリ働いてさ、上司とか部下にも尊敬されてさ、息子もいい学校通って、そういう人生歩みたかったんだよ。でも、それができなかった。あの時、結婚を急がなければ、1年、そうあと結婚が1年遅ければ俺はあの時確実に出世してたんだ。本当だぞ?俺は仕事だけはできたんだ。」

「は、はあ。」
ああ、いい加減、開放してほしい。

「ん?お前、よく見たら若いな。スーツも綺麗だし、体格もいい。お前、仕事は何やってるんだ?」

「まあ、会社を経営してます。」

「はあ?会社経営だ?お兄ちゃん、嘘はよくないよ、嘘は。どこぞの若造が社長なんかできるわけないだろ。」

「申し遅れました。株式会社〇〇の花輪と申します。ですので、これをきっかけに帰らせて…」「
けっ、なんだ。成功者か。」「えっ?」
「はいはい、悪かった悪かった成功者の時間はダイアモンドより価値がある。そうでしょ?ばかと付き合わせてごめんよー、ほら早く帰った帰った。」
「え、どういう意味ですか、それ。」

「あ?早く帰れって言ってんの。あなたは成功者。私はバカ。あーでも昔は成功したかったし、今もずるずる成功したいって引きずってるから成功中毒者かな。」

「あの、そんなこと言って、あなたは辛くないんですか…」
「帰れって言ってるだろ!聞こえねえのか、カス!」

サラリーマンの声が店内に響いた。周りのお客さんはちらちら見たり、知らないふりをして話し続けたりしていた。なんかそれも癪に触った。

「分かってるよ。これだけ長く生きてると、言い訳してる自分に嫌でも気づく。成功してるお前らが羨ましいんだ。悔しいんだ。でも無理なんだ。だから、帰れ。」

僕は悲しくなった。どうしてそこまで自分を蔑むのか分からなかった。この人は何を目的に生きているのか分からなかった。

「あなたの生きる目的って、何ですか」
「さあな。でも、今でもたまに立ち上げた会社がうまくいって、いい生活が送れて、みたいな夢のような話を期待してるからだろうな。叶いもしないのに、期待して、勝手に落ち込むんだ。バカだよな、おれ。」

叶えたければ叶えればいい。今は無理でも後になってできるようにすればいい。それだけなのに、それだけのことなのに、この人は見えない何かに自分から縛られるように夢を拒み、期待を裏切っている。

成功者でも成功中毒者でも何だっていい。何なら中毒者の方がむしろいい。
中毒者にもなりきれない未熟な青年のような彼を見て、また胸が締め付けられた。

今日は以上でーす。明日もお楽しみに!

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