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プロセスを共有してみよう

映画作りのメタファー


映画のアイデアを思い付いたとして、それをなんのスキルやコネや経験もなく撮れるだろうか?

なにか少しでも進められることはないだろうか?

簡単なカットごとのラフ画を描いたり、セリフやト書を書き込んだりという作業はひとまずできそうだ。
台本を手作業で作ってみるのだ。

これは、ノートと鉛筆があればできる。コストは無視できるほど小さいし、出来栄えを気にしなければ特別なスキルは要らない。

独りで取り組むなら、コネなんて面倒なものは不必要だ。

強烈なアイデアが源泉となって頭や手をドライブしてくれるなら、経験も不要だ。
(もしかしたら、固定的な経験や観念はこの際むしろ邪魔かもしれない。)


***

OK。台本ができあがったとしよう。
見栄えはさて置き、素晴らしいアイデアと明確なビジョンとお手製の台本までは揃った。

さぁどうする。
次はなにをする? なにから攻める?

映像として再現するための手段がなにもない。
機材も人材も技術もない。
お金もない。
誰に協力してもらえばいいかもわからない。

さぁ困った。



目的はなんだった?


この状況ではじめに考えてほしいのは「目的」だ。
日本語の「目的」という表現は自分的にはあんまりしっくりこなくて、英語の「WHY」のほうが分かりやすいと思っている。
「なぜ」映画を作ろうと思ったのか、それを思い出せということだ。

映画のアイデアを思い付き、何かに突き動かされるように台本を書き上げた。

その行為の目的はなんだった?

ただ ー Just、ほんとうにただ単に ー アイデアを吐き出したかっただけ?
(それならそれで善い。ノートを閉じ、鉛筆を置いて、いつもの仕事に向かおう。)

でもアイデアを映画にして公開したいという展望を思い描いたのなら、普通、目的は別にあるはずだ。
最も一般的な目的は、「人を感動させたい」というものだ。
(他にも「社会を変えたい」とか「元恋人に復讐したい」とかあるかもしれないが、話がややこしくなるので今は忘れる。)



形に囚われなければ人を感動させることはできる


映画館で放映されている自分の作品...
メディアに紹介されている自分の作品...
インターネットで配信されている自分の作品...

こういった既成品と同じレベルに仕立てられた完成形を求めるのはまだ早い。

まずは誰か身近な人をひとりでもいいからつかまえて、話を聞いてもらうことから始めてみてはいかがだろうか?
映画関係の人物である必要はない。
親しい友人や家族の誰かで良いのだ。

自分がこの映画に傾けている情熱を語っても良いが、一番効果的だと思うのは、自分が映画そのものになり切り、身振り手振りを交えて映画を再現することだ。
平たく言えば「読み聞かせ」である。

台本を見せながら映画を演じることによって、聞き手の脳内で映画を「再生」してもらうのである。

時間や手間は多少かかるかもしれないがやってみる価値はある。
こんなにも低コストで初上映が実現できるのだから!

それでまずその相手が感動してくれたら小さなゴールを達成したと言えないだろうか?
あなたにも具体的な手応えが残るだろう。



夢を叶えるのに必要な要素


本当に心の底から感動してくれた人というのはこっちが思っている以上に協力してくれるものだ。
(自分が誰かの行為や作品に感動したときのことを思い出してみると良い。)

最初はたったひとりだった観客が別の観客を呼んできてくれたり、少額でも資金を提供してくれたり、制作の援助をしてくれるかもしれない。
そうこうしている内に、だたの読み聞かせだったものに演出や効果が加えられるようになり、一部分ずつでも映像化され...というステップを踏んでいけば、いつか完成品になる日も夢ではなくなってくる。

そのプロセスの間、あなた自身に求められることは、経済力でも人脈でもない。まして知名度などでは決してない。
必要なのは
・アイデア
・熱意
・努力
の3つだけだ。どれも元手はタダである。

あなたの作品やあなた自身を助けたいと思っている人たちは、あなたの言動(言葉と行動)に魅力を感じているのである。
だから安心してハードワークするがよい。


*****


プロセスを共有する


映画のメタファーを使って書いてみたが、このプロセスを抽象的に表現すれば「ものごとを完成させるプロセスに他人を巻き込んでいくやり方」と言える。

完成形(最終ゴール)を機械的に目指すのでもなく、報酬や懲罰で他人に動いてもらうのでもなく、プロジェクトを進めるプロセスに参加してもらい、プロセスを共有する、というやり方だ。

こういったプロセス重視のやり方が他よりも優れていると言うことではない。
プロセス重視のやり方の場合はカチっと決まった完成形を目指すのが難しい面があるのだ。
だからどんなシチュエーションにも適したやり方だとは思わない。
だが、トップダウン的なやり方とか、力関係で強制するやり方よりは随分人間的な温もりを感じないだろうか?



改善にも


もしあなたが今抱えているプロジェクトで、
・トップダウン的な窮屈さ、自由度の少なさ
・力関係による重圧感、恐れ、やりにくさ
などに悩まされており、右にも左にも行き詰まっているなら、もしかすると仕事を進めるプロセスそのものの価値や楽しさが置き去りにされているのかもしれない。

そういうときは一時的にでもプロセス重視のやり方に切り替えてみてはどうだろうか?
具体的には、
1) 予算、納期、計画、上下関係、報酬...などのあらゆる制約を一旦横に置き
2) アイデア、熱意、努力(やり甲斐)の点に注目してみる
ということだ。

そうやってプロジェクトを別の側面から見直してみると、案外見落としているファクターが多いことに気付く。
それと同時に、ただただ辛かった仕事が解けるかもしれない。
見方が凝り固まっていただけかもしれないのだ。

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