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おばあちゃんとのおしゃべりは引き際がスマートだった。

ウォーキングの途中で自転車を見つけて、思わず笑みがこぼれる。

これは近所のおばあちゃんの自転車。ここに置いて階段を登り、その先にある畑の世話をしている。

つい先日、わたしが階段を降りようとしていたところに、ぜーはー息を切らしながら小柄なおばあちゃんが階段を上ってきた。そして登り終えたところで倒れ込むように花壇に腰掛けた。

「大丈夫ですか?」と声をかけると、「いやぁ~きついねぇ」と言いながらもニコニコするおばあちゃん。わたしも顔がほころぶ。

そして息を整えながら話し始めたおばあちゃんと、しばしのおしゃべりタイムを楽しんだ。


前は車で畑に来ていたからよかったけど、わたしも80歳すぎたから免許返納したのよ。事故でも起こしたら嫌でしょ?車検まで1年残ってたから迷ったけど、免許更新のタイミングで返納しようって決めたの。


80歳を過ぎていると聞いて驚いた。確かに今は、80歳すぎても元気な人はたくさんいる。でもこの階段を登ってきた直後にしゃべり始めることができるとは。40代のわたしですら階段を登り終えると息があがるというのに。

案外キツイ階段

それでもさすがにもうきついから、今年で畑はやめるらしい。車がなくて不便なところ、1日1回しかこないバスまでついに廃止になり、買い物はお嫁さんに頼むけど気を遣うのだとか。

話を聞きながら「わたしが買い物にお連れしましょうか?」と言いたい気持ちが沸いてきた。いや、でもそれこそが余計なお世話かと口を慎んだ。


こういうとき、おばあちゃんは話を聞いてほしいだけなんだよね。きっと。階段登って疲れちゃって、ちょっと嫌になっちゃって、そしたらわたしがいて、ちょっと話をきいてほしくなっちゃっただけ。

その証拠に、ひと通りしゃべったおばあちゃんは「じゃ、引きとめてごめんね」と言ってすくっと立ち上がり畑へと歩き出した。

引き際がスマートである。

わたしは会話の引き際がわからないことがある。それでつまらない会話をダラダラ続けてしまったりする。これは見習いたいところだ。


今日もおばあちゃんは畑仕事。階段のそばに置かれた自転車が、それを教えてくれている。

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