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かっかどるどるどぅ

『かっかどるどるどぅ』は鶏の鳴き声を表すドイツ語だそうだ。


先日、NHK『こころの時代』で若竹千佐子さんのドキュメンタリーをやっていた。史上最年長で文芸賞を受賞した『おらおらでひとりいぐも』でデビューした作家さんで、同作は芥川賞とのW受賞で話題となった。

そこから6年ぶりの新作となったのが『かっかどるどるどぅ』だ。




わたしは若竹千佐子さんのことを知らなかったけど、一緒にテレビを見ていた母は「知ってる!」と声をあげた。

母は若竹さんと同じ岩手県出身。年も近い。
そんな女性が書いた「わたしはわたしでひとりでいく」という思いにも、とても興味をもったらしい。


「せっかくだから読んでみようか」と、図書館に行ってみたら貸し出し中。テレビの影響なのかもしれないと思いつつ、若竹千佐子さん著書の本がもう一冊あったから借りることにした。


それが『かっかどるどるどぅ』。


無知なわたしは「???」となったタイトルだったけど、本の表紙デザインはカラフルでかわいらしい。そのイメージ通り、物語は会話ベースでテンポよく進んでいく。


だけど、内容はなかなかにハードだ。


物語に登場する5人の面々は、それぞれに悲しい過去を抱えていたり、苦しい今を生きていたりする。

それがなかなかに、読んでいて「うぅ・・・」と心が痛む。それでいて、東北弁が入り混じった会話にクスッと笑えたりする。




物語は、にっちもさっちもいかない日常を過ごすそれぞれの人生が、徐々に交わり合っていき、ひとりで生きていた人たちが、人と関わり生きる力を取り戻していく内容だ。


独身であるわたしは、まさに「ひとりで生きる」人生になる、予定。

今は両親がいるし、姉もいるけど最後にひとり残るのはわたし、たぶん。

今はわずらわしい人間関係も、わかり合えない父との関係も、ひとり残ってみれば恋しくすら思うのかもしれない。

そんな想像をさせられたのだった。




老後ひとり。と考えると不安になるのは「老後資金」とか「老後破産」とかなのだけど、ほんとうは周りから人がいなくなっていくことがさみしいんだろうな。

『かっかどるどるどぅ』のように人が集う場所が見つかればいいけど、物語のように上手くことが運ぶはずもない。

こんなとき、長生き家系であることがちょっと恨めしい。


物語のキーマンは、「場所」の中心にいた吉野さんという女性だ。訪れる人に食事をふるまっている。そのような存在に、わたしがなれたらいいんだろうな。そんなことを思ったりした。


40歳半ば。100歳くらいまで生きてしまいそうなわたしにはまだまだ時間がたっぷりある。今からやれることもいっぱいある。やりたいことも。


63歳で小説家デビューした若竹さんが、わたしの人生の良き指針になってくれるかもしれない。


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