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第8話「やわらかな芝生」

やわらかな芝生

文:Ricona ナレーター: 佐々木健



ふと気がつくと
そこはとても広くなっていた

今までキツくてキツくて仕方なかったはずなのに
求めていた以上に広く広くなっていた

立っていた足の感覚が戻ると
眼からは大粒の涙が溢れていた

そして私は
きっと知っているであろう
カーテン越しの向こうに見える影に
ただひたすらに頭を下げていた

何か…
置き忘れてきているような感覚とともに外へ出ると
そこは眩しいほどに晴れていた
世界が一瞬で変わったのかと思うほど
何もかもが不思議に見えた

空を見上げた
雲が浮かんでいた

再び見上げるとそこにはもう
その雲の形はなくなっていた

もしかしたら
必死に求めることなんて
しなくてよかったのかもしれない
ただ深呼吸をして
時に身を任せればいいんだ

それに気がついたあの日の朝は
いまでもずっとわすれない

だから私は今日もこうして生きている
広くなった空き地が
やわらかな芝生でいっぱいになるのを待ちながら

※YouTube版は、写真と音楽付きです。Podcastは音声のみになります


解説

「実は、その時、その瞬間を書き溜めていたものがあるんです」とRiconaさんからメッセージをいただいた。「優しい声で語っていただけるならとても救われます」と。

そうして送ってくれたのが、この詩のようなお話でした。

Riconaさんは数年前にご主人を亡くされていて、この文は、その時のことを書いたものだそうです。

ありがとう。僕のようなもので役に立てるのならと取り組みはじめましたが、情景が浮かばないと読めないので、色々とお聞きして。こう言う解釈で間違ってないですか?と確認しながら進めました。

その答えはここでは書きませんが、Riconaさんの想いを受け止めて、僕の身体を通して、語らせていただきました。

そうこうしているうちに写真をつけたスライドショーにしたくなり、自分のiPhoneの中から写真を引っ張り出してきて、使用しました。
言葉や情景と完全に一致した写真ではないことをお断りさせていただきます。

音楽は作ろうかと思いましたが、Macの写真アプリのスライドショーのテーマ曲がぴったりだったので、そのまま使わせていただきました。

Riconaさん、素敵なお話をありがとうございます。

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STORYTELLER BOOK -優しい時間-は、
ナレーター佐々木健が、2-3分ぐらいで聞ける「優しい時間」をお届けしたくて作り始めました。作家さんや一緒に作ってくださる方募集中です。あなたの作った文章を読ませてください。写真や音楽、SE、映像編集、イラスト作成などなど協力してくださる方も募集しています。よろしくお願いします。

佐々木健プロフィール
http://aksent.co.jp/blog/200/post_55.html

ON AIR中のTVCM(2020)
https://youtu.be/e7g6vhAijlM

Spotifyでも配信中
https://open.spotify.com/show/58yuYUiHOgWI7NbClh9KJ4

Apple Podcastでも配信中
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/storyteller-book-%E5%84%AA%E3%81%97%E3%81%84%E6%99%82%E9%96%93/id1528932021

ホームページ
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